普通車料金は上限1950円へ! 首都高料金値上げの是非を問う!!

普通車料金は上限1950円へ! 首都高料金値上げの是非を問う!!

 2022年4月1日より首都高速道路の料金体系が変更され、上限料金の値上げが行われる。普通車の上限料金が1320円から1950円となり、大幅な値上げとなる。

 2021年夏に開催された東京2020(オリンピック・パラリンピック)期間中には、東京都心に乗り入れる車両を減少させるため、日中の首都高通行料金を1000円上乗せする施策を行っていた。

 今回の料金値上げは東京2020期間中とは異なり、あくまでも上限料金の値上げとなるほか、深夜割引の導入も行われる。日中に上限料金分を走行するユーザーにとっては痛手である一方、深夜に利用するユーザーは今までよりも割安になる。

 そんな首都高の料金体系はなぜ今のタイミングで見直されるのか? 上限料金値上げを行う真の目的は? 詳しく分析していく。

文/清水草一写真/AdobeStock(メイン写真: Caito)

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■昨年の東京五輪期間中1000円上乗せに続く値上げだが……

 首都高速道路が2022年4月より料金体系を見直し、普通車上限料金を1950円へ引き上げるとともに、大口・多頻度割引の拡充、深夜割引の導入を実施すると発表した。

「東京オリンピック・パラリンピック開催の時も1000円上乗せしたけれど、また値上げするのか?」。そのように思う人もいるだろう。果たして今回の料金改定に正当性はあるのか。

たびたび料金改定が行われる首都高。今回の値上げに正当性はあるのだろうか……

 今回の値上げに関して、首都高速道路株式会社は、このようなリリースを出している。

「首都高は2016年4月に対距離料金制度へ移行し、激変緩和のために上限料金(普通車1320円)を設定していますが、制度移行後、都心部の通過交通は減少したものの、都心部通過に際し周辺の路線よりも首都高速道路が割安な場合などがあり、依然として都心部に渋滞が発生している状況です」

 ここで言う「都心部」がどこまでを指すのか不明だが、最近はC1よりもむしろC2の外側の渋滞が激しい傾向にあり、「都心部に渋滞が発生している状況です」という言い方には納得できない。

首都高側の言い分に違和感アリ?

 2016年の新たな料金体系によって、外環道や圏央道を含め、出発地と目的地が同じなら、どのルートを通っても料金は同じになった。その効果もあって、首都圏の渋滞は平準化された。首都高が渋滞する日は、外環道も圏央道も渋滞する。どのルートを選んでも、所要時間に大差はなくなった。

 どのルートもまんべんなく使われるようになったのは大変いいことだが、そんな状況なのに、「都心部の渋滞が続いている」というのはおかしな話だ。

値上げの理由が「都心部の渋滞が続いているため」ということには違和感が……

「都心部通過に際し周辺の路線よりも首都高速道路が割安な場合などがある」という点に関しては、そういうケースは確かにある。例えば神奈川県の横須賀ICから都心の霞が関ICに向かう場合は、首都高を多く使ったほうが少し安くなる。

●ルート1:横浜横須賀道路→保土ヶ谷バイパス→東名→首都高/2160円
●ルート2:横浜横須賀道路→並木から首都高湾岸線/1840円
(普通車・ETC利用の場合)

 その差320円。所要時間が同じなら、多くのドライバーがルート2を選ぶだろう。

 しかし、横須賀方面へのアクセスなどを除いて、首都高を長く使ったほうが安くなるケースは非常にまれだ。こんなレアケースを解消するだけで、都心部の渋滞が緩和されるはずはない。つまり、「都心部通過に際し周辺の路線よりも首都高速道路が割安な場合などがあり、都心部の渋滞が続いている」という首都高の言い分は詭弁である。

値上げの真の目的は?

 今回の首都高上限料金の値上げの真の目的は、「全国の高速道路料金の平等性をアップさせる」という点にある。

 現在の首都高の対距離料金は、35.7km/hで上限の1320円に達し、それ以上はどれだけ走っても同額。しかし、首都高の最長距離は87.3km(さいたま見沼-幸浦)。それだけの距離をNEXCOの高速道路(大都市近郊区間料金)で走ったら2990円になる。その差2倍以上。これは確かに不公平だ。

 それを今回の改定で、2990円ではなく1950円に抑えるのは、これまでの議論で「料金を上げる場合は、激変緩和措置として、従来の1.5倍以内に収める」というルール(のようなもの)が決まっているからだ。

 2012年の距離別料金制導入当時、首都高の上限料金は900円だったが、それが2016年に1320円に引き上げられた際も、「激変緩和措置で1.5倍以内」というルールが適用された。

 それから6年が経過し、平等性確保のため、再度上限を引き上げるべき時期が来たと判断されたというのが、事の真相である。

 別に平等性を確保したからと言って、渋滞が減るわけではなく、特段のメリットはないが、それをあえて実行するのは、政治とは無関係の学者たちが決めた、一種の理想論だからだ。

値上げしても収益は変わらない?

 首都高の料金を決めるのは、首都高速道路株式会社ではなく国土交通省だが、国交省内で議論を行っているのは、幹線道路部会という委員会だ。メンバーは、14人中11名が大学教授などの学者で構成されている。

 新型コロナウイルスへの対応を見ても、政府は「専門家会議の結論を尊重し……」と繰り返していた。今、日本国政府の多くの政策は、それぞれの分野の有識者による委員会が出す結論に従う場合が多くなっている。高速道路料金も同様だ。

 今回の首都高上限料金値上げによる具体的なメリットはほとんどない。上限料金引き上げのかわりに、深夜割引(0~4時まで20%割引)の導入と、大口多頻度割引の拡大(最大割引幅を35%から45%へ)があるので、首都高の料金収入増もない。

今回の値上げが大きく収益拡大に繋がるとは考えられない

 もちろん、35.7km以上の距離を頻繁に使うユーザーにとっては値上げだが、深夜頻繁に使うユーザーは値下げになるし、大口多頻度割引の対象になる運送業者も、料金負担が下がるかもしれない。いずれにせよ、トータルではほぼトントンのはずだ。

日本の高速道路料金は世界的に見て高い?

 今回の上限料金決定に際しては、幹線道路部会で「もはや上限料金を撤廃してもいいのではないか」という意見があったと言う。つまり、NEXCOの高速道路とまったく条件を同じにして、さいたま見沼-幸浦間を2990円にすべきだ、ということだ。公平性の観点からすると、それに反対する根拠を見つけるのは難しい。

 ただ、「日本の高速道路料金は高すぎる!」という、料金全体に対する不満は、日本全国にあまねく存在する。

 日本の高速道路料金は世界一高い。いかに地勢や地質や地価などの条件が厳しいにせよ、世界でダントツに高いのは間違いない。

高速道路全体の料金水準を下げる方法は……

 つまり、議論の余地があるとすれば、今回の首都高の上限料金アップではなく、高速道路全体の料金水準だ。それを大幅に引き下げる方法はないのか?

 ある。高速道路建設の借金を、国費で一括して返済してしまうことだ。

 現在の高速道路の債務は、合計で約29兆円。それを国が肩代わりしてドーンと返済してしまえば、料金は管理費(約3割)だけにできる。つまり7割の値下げである。そうすれば、イタリアやフランスの高速道路料金とだいたい同水準になる。

 もちろんそんなキャッシュがあるはずないから、国債の増発で賄うしかないが、新型コロナ対策で、1年間で国債発行残高が100兆円増えたことを考えれば、29兆円を思い切って高速道路にブチ込んで見るのも、ひとつの手ではあるだろう。「ならばこっちに回せ!」という声が、あらゆる方面から飛んでくるだろうが……。

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