エンジニアの誇りと驕り
では、どうしてこんなことになってしまったのだろう?
私見なので、こんな見方が正しいのかどうかわからないが、日野自動車はエンジニア主導のメーカーという印象がある。それに対して、たとえばいすゞ自動車はマーケティング主導の会社という印象だ。
日野のエンジニアは、非常に頭がよく真面目な人が多い。自分たちが確立した技術に誇りを持っているはずで、それは素晴らしいことである。
HC-SCRは立派な賞までもらっている優れた技術であり、尿素SCRには真似できないメリットもある……。しかし、その誇りがいつしか驕りになり、できないことまでできると過信して、切羽詰まってしまい、耐久劣化試験中の触媒コンバーターごと交換してしまった、そんな絵が見えてくるのである。
エンジニア主導のメーカーだから、なかなか他部署の人間が口をはさめない空気があり、エンジニアもプライドがあるから「無理」とは言えない。
「継続は力なり」という言葉があるが、技術を大切に育てていくことは大事だが、自分たちの技術を過信することで物事を見誤ることもある。余談だが、日野のもう一つの革新技術であるハイブリッドも、もう一度見直すべき時にきているのかもしれない。
ユーザーとしっかり向き合うことの意味
以前、日野のエンジニアと話した際、新型車の開発にあたってユーザーやドライバーと話をする機会はどれくらいあるかを尋ねたところ、「一度もありません。市場のニーズの状況は調査会社からデータが入りますし、販売会社を通じてユーザーの要望もわかりますから……」との返事で、非常に驚いたことがある。
そのほうが効率的という判断なのだろうが、クルマづくりは本当にそんなことでいいのだろうか。
今回の不正問題により、日野車の出荷停止は国内販売の約35%、年間約2万2000台におよぶ。
台数を稼ぐ小型トラックが含まれていないので約35%という数値にとどまっているが、出荷停止は主力の普通トラックが大半であり、その期間が相当長引きそうなことを考えれば、そのダメージは計り知れないものがある。
また、すでに出荷済みの対象となる使用過程車は11万5526台で、このうち排ガス不正のHC-SCR採用の日野レンジャー4万3044台はリコールの対象となる。
日野の経営陣は記者会見の席上、「お客様にご迷惑をお掛けしたことをしっかりお詫びし、今後の対応をご相談させていただくつもりです。
お客様に直接向き合っていくのは販売会社の人間なので、今後のことも1つ1つしっかりとお答えできるよう我々もバックアップしていきたい」と語っている。
しかし、これは筋が違うのではないか。不正を犯したのはメーカーの開発部門の人間なのだから、詫びるのは不始末をしでかした人間であるべきだろう。彼らが直接ユーザーのもとに出向き、しっかりお詫びするのが筋というものだ。
怒鳴られることもあるだろうし返事に窮することもあるだろう。しかし、開発部門の人間が直接詫びなければ、本当に謝罪したことにはならない。
トラック・バスのユーザーの経営環境は押し並べて苦しい。車両を購入するのも大変だし燃料の高騰も深刻だし、故障やリコールによる車両のダウンタイムも減らしたい。そんなユーザーの声にしっかり耳を傾けてほしい。
ただ単にお詫びするだけではなく、とことん話をして、自分たちのつくっているトラックやバスがどんな人にどんなふうに使われているか、しっかり把握してほしい。そして最後はユーザーと仲良くなって会社に戻ればいいのだ。
どうせ日野の開発部門は今回の問題で、しばらくは暗く沈んだ空気が漂っていることだろう。ユーザーのもとにお詫びに出向くことで、少しは気分も晴れるだろうし、ユーザーと直接話すことによって次の開発のヒントをもらえることだってある。
火の消えたような開発部門に灯をともすのは、小さくてもいい、次の目標とやりがいである。
コメント
コメントの使い方ユーザー1人の意見しか訊いていないところからも伺い知れますが、かなり憶測が入っている内容とおもわれます。私見と書いてはありますが、ここまで憶測が強いのであれば個人ブログにでも掲載したほうが懸命でしょう。