F1開幕! フェラーリF1-75の躍進は、テストで牽制しあったメルセデス、レッドブルのおかげ?

ブレーキのオーバーヒートでルクレールと勝負ができなかったフェルスタッペン

 レッドブルは、バーレーンテストで大きなモディファイを受け、本番に挑んでいた。もちろんバーレーンでは1ランク上の走行を見せロングランもアタックランでもトップタイムをたたき出し、その速さを誇示していた。

 しかし、レッドブルはなんとポールポジションを取り逃がしてしまった。というよりも予想以上にフェラーリが速かったということかもしれない。

 前出通りフェラーリの速さは予想されても、誰も本番でこれほど速いとは信じてはいなかったはずだ。そう、むしろフェラーリこそが、F1-75の本当の力を本番まで隠し続けてきていたのかもしれない。F1-75は2人のドライバーともに速く、予選PP、決勝でファステストラップ、そしてワン・ツーフィニッシュの完璧な結果を出してしまった。もはやフェラーリの速さを疑う理由は何もないのだ。

 唯一この驚速フェラーリに挑んでいたのがフェルスタッペンのレッドブルRB18。しかし今シーズン最速を予想されていたRB18は予選・決勝を通じて2番手がやっと、それでもフェルスタッペンはトップを走るルクレールに果敢にアタックしたものの、ルクレールの余裕すら感じる強さでいなされてしまった。

 そのレッドブル、フェルスタッペンはいくつかの問題を訴えていた。ルクレールに追いすがるとブレーキのオーバーヒートが発生、いったん距離を置かねば冷却が出来ない状況に。そしてピットストップでのジャッキダウンでトラックロッドを痛め、曲げてしまったことでフェルスタッペンは不安定な重いステアリングに悩まされてしまった。

マックスはピットでトラックロッドを曲げてしまい、思った通りにならないハンドリングで走っていた
マックスはピットでトラックロッドを曲げてしまい、思った通りにならないハンドリングで走っていた

 とどめは燃圧の低下でエンジンがミスファイアー、そしてパワーロスからリタイアへと追い込まれている。この現象はペレスにも起こり、彼はエンジンストップがコーナリング中に起こりスピン、リタイアを余儀なくされた。

燃圧の低下で2台のレッドブルRB18はリタイア

 RBの2台のリタイアは同じ原因で、燃圧の低下。これは燃料タンク内のポンプがトラブルを起こし、燃料がエンジンに行かなくなったという事らしい。

 問題はポンプや燃料タンクの内部構成等に起因するのだろうが、これもバーレーンの本レースを想定した本格的なシミュレーションと現実とのギャップが生み出したのではないかと想像する。もちろんロングランもレースシミュレーションもこなしてはいたはずだが、混戦状態、先行車への長時間の追走、混戦時のブレーキ熱交換能力の把握……そういった事象へのデータ不足などが今回のリタイアを招いた気がするのだ。

 低燃料積載でのタンク内ベーパーリング、コレクタータンク、コレクターベイのシールド、コレクターポンプの耐ベーパー能力……これらの解析にはそれなりのテストが必要だが、果たしてレッドブルは実走でどこまでこれらを把握していたのだろうか。

レースまでのたった2、3日で問題を解決できるのか?

アルファタウリ ガスリーもリタイア。マシンが燃える災難に……MGU-Kのトラブルか?
アルファタウリ ガスリーもリタイア。マシンが燃える災難に……MGU-Kのトラブルか?

 レッドブルRB18ペレスのマシンにギアボックス関係のトラブルが1度ならず2度発生している。先のブレーキのオーバーヒート問題、さらにはレッドブル軍団のアルファタウリにもトラブルが発生、MGU-Kの問題とはいうがガスリーは好調にレース展開をしながらも後部が火炎にみまわれリタイアしてしまった。次のレースまで1週間しかなく、この状況を2日3日で立て直すことができるのだろうか。

【画像ギャラリー】フェラーリがワンツー。不調だが運良く3位のメルセデス、レッドブルは2台ともリタイアに(5枚)画像ギャラリー

津川哲夫
 1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。
 1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。
 F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などがある。
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