L4=無人運転の長距離トラック
ダイムラートラックがトルクの大部分の株式を取得したのは3年前だ。当時は「アイデア」に過ぎなかった自動運転トラックが、今では現実のものとなりつつある。
典型的な運転シナリオ、例えば車線変更や複雑な合流などに関しては集中的に試験を行ない、トルクの自動運転ソフトウェアが高速道路で安全に車両をナビゲートできることを証明した。
最近では範囲を拡大し、L4自動運転トラックをより困難なシナリオに適合させようとしている。最新のLiDARとレーダー、及びカメラを使って一般道での高度な制御が可能になり、高速道路と接続するランプや信号機のある交差点も走行することができるようになった。
こうした能力は、ハブ(拠点)間輸送を想定した実践的な配備では不可欠だ。この場合、人間のドライバーが最初の「ファーストマイル」の貨物輸送を担い、(米国内の)主な道路沿いにある物流拠点まで荷物を運ぶ。
その先はトレーラとL4自動運転トラックを連結し、途中で高速道路を利用しつつ拠点から拠点までを移動する。自動運転トラックが目的の物流拠点に着いたら、配達先までの「ラストマイル」輸送は再び人間のドライバーに委ねられる。
米国の高速道路網は長大で比較的空いており、貨物輸送の需要が多く、大規模な物流企業があり、規制当局も協力的なことなどから、新技術を導入するには米国はうってつけの実験場となっている。
自動運転技術の強化について、ダイムラートラック会長のマーティン・ダウム氏は次のように話している。
「私たちは自動運転トラックにコミットしています。なぜならそれは、すべての人に利益をもたらすからです。システムは疲れることがなく、集中力が切れることもないので、安全性が向上します。
トラックがより多く走ることで物流のパフォーマンスも大幅に向上します。これにより、(アメリカや日本など先進国で共通の課題となっている)増大する貨物量と深刻化するトラックドライバーの人手不足という社会問題の解決にもつながるでしょう。
また、ダイムラートラックにとってはサービスの売り上げを伸ばし、マーケットで成長する機会をもたらします。あらゆる理由から私たちはレベル4自動運転のトラックを開発します」。
いっぽう、トルクの創業者でCEOのマイケル・フレミング氏のコメントは次の通りだ。
「自動運転ソリューションを商用化するというトルクの経験と、ダイムラートラックの運送業界における顧客との強固な関係により、長距離トラック用のレベル4自動運転技術開発チームはエネルギーに満ち溢れています。
運送業界のパートナーとの協業を通じて、コンセプトや組織を共同で設計することに加えて、クラス8自動運転トラック、物流拠点間での自動運行、フリートのオペレーションやメンテナンスサービスに関する研究開発など、多くの機会が生まれています」
自動運転に向けてフレイトライナー「カスケイディア」を開発
この数年間、DTNAのエンジニアは、商用車の自動運転において何よりも重要な「安全性」に関するシステムを備えた、最初のスケーラブルな自動運転トラックプラットフォームを開発してきた。
DTNAに属し長距離輸送用トラックで北米最大手のトラックメーカー・フレイトライナーは、最先端のクラス8(大型)フラッグシップトラックであるカスケイディアで、自動運転への準備と、実際の配備に向けた冗長安全性を用意している。
このトラックはダイムラートラックの妥協を許さない安全基準をクリアするために、ステアリングやブレーキなどの重要システムを2セット備える。車両はシステムの健全性を常にモニターし、割り込み操作やエラーが起きた際は、新開発の冗長化システムが安全にトラックをコントロールする。
レベル4自動運転の準備が完了したフレイトライナー・カスケイディアは、自動運転ソフトウェアとハードウェア、コンピューティングを統合するのに理想的なトラックだ。自社のシステムだけでなく、あらゆる自動運転ソリューションにとって強固な基盤となる。
システムの冗長化により安全性はさらに強化される。自動運転技術は、ダイムラートラックがビジョンに掲げる「事故のないドライビング」に向けた大きな一歩となりそうだ。
【画像ギャラリー】フレイトライナー「カスケイディア」ベースの自動運転トラック(4枚)画像ギャラリー