「基本はハイ、常時ロービームは違反」!? ヘッドライトの常識と法律

■警視庁ではハイビーム違反取締りは行っていない!

とはいえ、普段は都市部で暮らしている身としては、ハイビームの「常用」というのはピンとこない。

そこでストレートに警察庁へ「ハイビームを使わないと違反になるのか」と問い合わせると「各都道府県の警察に問い合わせてください」との返答。

そこで改めて警視庁に問い合わせてみると、

「道交法の第52条を確認してください。教則本などでも奨励していますが、東京都内の街中では夜間でも明るく、ハイビームは対向車の走行の邪魔になりますから、この件に関する違反行為の取り締まりは行っていません

という趣旨の回答を得た。

そもそも都内の交通状況を見れば当たり前の話。警察庁が問い合わせに対して居住する地域の警察への問い合わせを促す場合は、道交法の運用が場合によっては地域差があることの表れともいえる。都会と郊外、地方などで交通環境が異なるのだから、対応にはある程度納得できる。

ヘッドランプの照射に関する過去の技術論文などを調べてみると、HID(ディスチャージ/キセノン)ヘッドライトのロービームでも照射距離は90~105m(照射幅:20~30m)とハイビームの基準に合う能力があるとされていた。

さらに光量が大きいLEDのロービームは角度を考慮しなければ、約300mの照射距離が得られるというから、技術的には日常的にハイビームをデフォルトとする積極的な理由とはなり得ないだろう。

■サポカーにみる各社の自動ハイビームシステム

トヨタはハイビームで走行可能と判断した時はハイビームで走行、先行車/対向車のライトを検知したらロービームに自動で切り替え、先行車や対向車がいなくなったら再びハイビームでの走行に自動的に切り替える自動ハイビーム(オートマチックハイビーム)と、光検出用カメラで先行車のテールランプや対向車のヘッドライトを判別。ライトが当たっている範囲内に車両を検知すると、光線の方向を最適に変えながら直接ライトを当てないよう部分的に光線を遮るアダプティブハイビームシステム(写真)を設定している

右下にあるAUTOの表示があるスイッチが、トヨタの自動ハイビームのスイッチ

ヘッドライトの照射技術の進化が配光制御におよんでいることを実感している方も多いはず。もちろん、法律改正への対応ではあるのだが、メーカーや車種によって標準/オプションの装備設定の違いはあれど、新車時の装備として用意されている。

政府は今年4月から高齢運転者の交通事故防止対策の一環として、自動ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制装置等を搭載した車両(安全運転サポート車:セーフティ・サポートカー)、略称「サポカー」として、経済産業省や国土交通省、自動車メーカーが連携して普及を進めようとしている。

このうち「セーフティ・サポートカー」は自動ブレーキを搭載した車両、「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」はペダル踏み間違い防止機能が追加され、さらに機能を拡充したサポカーS「ワイド」では、自動ブレーキが歩行者にも対応。車線逸脱防止機能とともに、自動制御機能を備えたヘッドライト「先進ライト」の装備を設定、以下のように定義している。

●自動切替型前照灯:前方の先行車や対向車等を検知し、ハイビームとロービームを自動的に切り替える。
●自動防眩型前照灯 前方の先行車や対向車等を検知し、ハイビームの照射範囲のうち当該車両のエリアのみを部分的に減光する。
●配光可変型前照灯:ステアリングや方向指示器などの運転者の操作に対応して、水平方向の照射範囲を自動的に制御する。

各日本車メーカーの装備をいくつか挙げると、トヨタが「自動ハイビーム(オートマチックハイビーム)」と配光可変型とした「アダプティブハイビームシステム(現行LSでは世界初として2段型LEDによる配光システムを採用)やマツダの安全装備パッケージである「i-ACTIVSENSE」に含まれる機能である「アダプティブ・LED・ヘッドライト」、スバルは「アイサイトセイフティプラス」の装備として「ハイビームアシスト」を用意するなど、各社が法改正に対応して設定している。

順に3社の技術的な特徴を説明していこう。ちなみに、カメラの画像情報と組み合わせ、夜間に車速30km/h以下では先行車を感知したり、街路灯などによって市街地での走行を認識してロービームに切り替える機能をもつことは各社ともほぼ共通としている。

トヨタの自動ハイビームは、安全装備パッケージの「トヨタセーフティセンス」に含まれ、単眼カメラによる制御を実施、約30km/h以上で先行車・対向車がいない場合にハイビームを使用する。AHSはステレオカメラを用いて約15km/h以上で作動。LEDの配光範囲を細やかに制御し、先行車や対向車に光が当たる部分だけを自動的に遮光する機能をもつなど、微妙に両者で仕様が異なるので注意したい。

マツダの「アクプティブ・LED・ヘッドライト」は約40km/h以上で作動する。ちなみに40km/h以下では、従来ロービームで届かなかった左右方向をヘッドライト外側に装備した「ワイド配光ロービーム」で照射する機能をもつ。

スバルの「ハイビームアシスト」は照射モードを単眼カメラ(専用)によって判断する。40km/h以上での走行時に前方からのライトが感知されない状況ではハイビームを使用、対向車が近づいた場合は自動的に防眩のためにロービームに切り替える。約30km/h以下では市街地を走行していると想定し、ロービームに固定している。

スバルのハイビームアシストは、フロントウインドゥ内側の単眼カメラが前方の光を検知し、状況に応じてハイビーム/ロービームを自動的に切り替え。より明るく安全な夜間視界を確保。40km/hで走行している時に作動するが、約30km/h以下では市街地走行を想定してロービームで固定している

ちなみに、速度設定において30~40km/hでの作動条件に曖昧さが残るのは、オートクルーズ機能でも見られるような、設定速度と実速度の誤差を埋めるマージンと解釈してよいだろう。

近い将来にはLEDやレーザー光を利用した照射範囲を広く精密に制御可能とするヘッドランプの進化によって、ハイ/ロー・ビームの定義など、法律の解釈に拘泥することにあまり意味はなくなりそうだ。

むしろヘッドランプの性能や設定にこだわるのではなく、ドライバーにヘッドライトを「点けるか点けないか」という運転するうえでの自らの安全感覚に基づいて、機能を適切に使いこなしてもらえるように啓蒙するといった、運転マナーの再確認のほうが重要ではないだろうか。運転中にヘッドライトの機能設定に気を取られているようでは、本末転倒も甚だしいのだから。

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