■不祥事で現行型は不遇の存在に。それでも進化はすごい
もっとも大きく影響しているのは、2000年代の中盤までに次々に発生したリコール隠しなどの不祥事だ。
一連のイメージダウンにより、2010年に発売された現行RVRのアピールも十分に行われなかった。
この後、2012年に現行アウトランダーのノーマルエンジン車、2013年にアウトランダーPHEVとeKワゴン、2014年にはeKスペースが発売され、国内販売が上向くかと期待された。
それなのに2016年に、eKワゴンとeKスペース、日産のデイズとデイズルークスに燃費数値の偽装があったことが発覚する。三菱車全体の売れ行きが再び伸び悩んだ。
紆余曲折の結果、今の国内では、すべての三菱車が売れていない。2017年(暦年)における三菱車の国内販売総数は9万1620台で、1か月平均に換算すると7635台だ。
この台数は同じ時期のフィットやシエンタ1車分と同程度になる。
そうなればRVRの販売が低調だといっても、三菱にとっては大切な商品だ。
販売会社とセールスマンの尽力により、RVRを何台も乗り継ぐユーザーもいるから、安易に廃止などできない。
そこでRVRは定期的にマイナーチェンジや改良を行い、2018年9月6日にも、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備を全車に標準装着した(以前は一部がオプションだった)。
ドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知する機能も、新たにオプション設定している。このように定期的に進化を図り、現行RVRのユーザーも、新車へ乗り替えやすくしている。
RVRの売れ行きが下がったのに生産と販売を維持する理由として、国内の販売店舗数が以前に比べて減ったことも挙げられる。
現在の三菱の店舗数は600拠点少々だから、460拠点前後のスバルに次いで少ない。トヨタは4系列を合計すると4900拠点、ホンダは2200拠点、日産は2000拠点とされるから、トヨタと比較すれば10%以下だ。
そうなるとRVRの登録台数が1か月当たり173台でも「1店舗の割り当て台数」という見方をすれば、トヨタの1400台、日産の580台くらいには相当する。
それぞれの販売店にとっては、手堅い収益源だ。
特に今の三菱では、販売総数の55%を軽自動車が占める。1台当たりの粗利が限られるから、小型/普通車のRVRは、売り上げを伸ばす上で効率の優れた商品でもある。
このほかアウトランダーやエクリプスクロスとの相乗効果もねらえる。
販売店でこの2車種の商談をしている時に、顧客から「ボディが大きすぎる」「価格が高い」といった問題点が提示された場合、「RVRであればボディがコンパクトで価格も安いですよ」と解決案を示せるからだ。
RVRの需要がアウトランダーやエクリプスクロスに奪われることもあるが、その逆もあり得る。
メーカーの損得勘定としては、基本的に長く造るほどトクをすることもある。車両の開発には、エンジンに加えてプラットフォームを共通化した場合でも、80~100億円は必要だといわれる。
販売しながらこの開発費用を償却していくわけだが、予想外に売れ行きが伸び悩むと、収支を合わせるまでの販売期間が長引く。
RVRのように長く売り続けるクルマの中には、一定の台数に満たないため、販売期間が伸ばされている車種もある。
このように、いろいろな事情でRVRは販売を続けている。新型車が次々と発売されれば好ましいが、そうもいかない場合、設計の古い売れ行きの下がった車種が重要になることもある。
とりわけ三菱はSUVを主力商品としてブランドの再構築を図っているため、RVRは絶対に省けない。
三菱の悲喜こもごもを背負いながら、今日もRVRは、大切な三菱ファンの元に届けられている。
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