燃費2割向上は言い過ぎ? マイルドHVの中身
48Vシステムは技術的にはシンプルそのもので、エンジンからベルト駆動されている発電機の容量を拡大し、余分に発電したエネルギーを貯めるリチウムイオンバッテリーを追加すればほぼ完成する。原理的には、スズキの“エネチャージ”の規模を拡大して、電圧を48Vにアップしだけ、といってもいい。
当然、駆動アシストにしてもエネルギー回生にしても、本格ハイブリッドほど高効率にはならないのだが、その代わり低コストで既存車種に追加装備も容易。
高電圧を使用しないから、電気まわりの配線や安全装置も簡略化できるなど、メーカーにとって使い勝手がいい。
これが、最近欧州メーカーを中心に48Vマイルドハイブリッド車が続々登場している理由だが、マツダもそのトレンドに乗ってディーゼルのさらなる燃費向上を目指しているというわけだ。
ただし、新聞報道などで書かれている燃費2割向上というのは、モード燃費では可能でも実用燃費となると少し楽観的だと思う。
例えばCX-5ディーゼルのJC08モード燃費は19km/Lだが、これを22.8km/Lまで上げるのは、モード燃費対策を入念に行えば可能だろう。
ただ、実用燃費の2割向上となると、事はそれほど容易ではない。48Vマイルドハイブリッドで期待できるのは、より長時間のアイドル停止、発進時のモーターアシスト、減速回生による慣性エネルギーの回収が主なところ。
例えば、プリウスはこれに加えて排気熱回収、電動コンプレッサーによるエアコン効率化、電制協調回生ブレーキによる慣性エネルギーの回収率アップなど、複雑で高コストな周辺技術を投入している。
この辺を徹底しないと、実用燃費はなかなか思ったほど上がらない。あのコストに厳しいトヨタが、何故こういう複雑な補機類を採用しているかを考えて欲しい。つまり、そこまでやらないと実用燃費はなかなか目標に届かないのだ。
効率を考えれば幅広い車種への展開が濃厚
実は、48Vシステムでもその気になればトヨタ並みに複雑高度なシステムは構築可能で、実際ベンツはSクラスから導入された新型直6エンジン(M256)でそれをやっている。
フライホイールにマウントされたISG(モーター機能付き発電機)は15kW/250Nmと強力で、ターボを補助する電動スーパーチャージャーの装備、ウォーターポンプ/エアコンコンプレッサー電動化によるベルトレス化など、「どこがマイルドやねん?」と突っ込みたくなるほど複雑なメカニズムが盛り込まれている。
ここまでやれば、実用燃費2割以上アップも可能だと思うが、コストを考えると日本のメーカーでは考えられない豪華路線。48Vシステムで同じように複雑なことをすれば、結局同じようなコストがかかる。
やはり、「そこそこのコストで、そこそこの効果」というのが48Vシステムの本質で、それを分かった上で使うべきなのではないかと思う。
そういう意味で、48Vシステムがお手本とすべきは“エネチャージ”をアッという間にほぼ全モデル標準としたスズキのやり方。
なるべく幅広い車種に標準装備として、ラインナップ全体の燃費効率を地道に上げてゆくのが、この48Vマイルドハイブリッドシステムの正しい使い方だと思います。
コメント
コメントの使い方