ホンダバモスのもたらしたもの こっそり消えた!!元祖「楽しむ軽バン」

仕事にも使える軽バンとして注目を多く浴びているのがホンダN-VAN。車中泊やアクティブなユーザーにも受け入れられるような装備類、そして商用バンとしても考えられた構造は実に魅力的。

しかしそんなN-VANには始祖ともいえる名車がいました。それがホンダバモス。初代は遊び感満載、2代目には商用バンと「ホビオ」の設定で多くの人に愛されたバモス。

しかしN-VANデビューでひっそりとそのモデルライフを終えました。そんなバモスを振り返ってみましょう。

文:永田恵一/写真:ホンダ


■遊び心しかない!? ぶっ飛びだった初代バモス

まだホンダに登録車は本田宗一郎氏の鶴の一声による強引な空冷エンジンの搭載で、失敗に終わった1300くらいしかなかった1970年。

そんな1970年10月に初代バモスは登場した。正式な車名はバモスホンダ。

初代バモスの成り立ちは、フロントシート下に4気筒+日本初のDOHCエンジンを搭載した伝説的な軽トラック「T360」の後継車となるTN360がベース。

潔すぎる外観、そしてオープンエアと呼ぶにはオープンすぎるのがかっこいい初代バモス。ホンダらしいおもしろいクルマだが、商業的には成功したとは決して言えないクルマ

TN360は現在のアクティトラックにも通じるエンジン横置きFFのパワートレーンを使ったミドシップ構造を採用していた。

そうして誕生した初代バモスがどんなクルマかといえば写真を見て分かる通り、軽トラックの上物を変えたバギーといったところ。

とはいえバギーというには最低地上高は210mmもあるのに関わらず、4WDがなかったのは惜しまれる。

今になって初代バモスを見るとすべての法規が現代とは比べ物にならないくらい甘かった時代だったにせよ、とにかく迫力が凄い。

ドアがなく、ドアの代わりにあるのは保護用ガードパイプ、標準仕様には幌すらないという豪快さにというべきか、乱暴さというべきか、とにかく驚かされる。

荷台まで幌のあるバージョン。近所の配達などには実用性もありそうだが、やはり遊びに使うのが正しいと思う。しかし4WDがないのは少し残念!?

バリエーションは2人乗り、4人乗り、4人乗り+幌の3つで、いずれにしても側面には保護用ガードパイプしかない。

またシートは防水加工され、フロアも水洗い可能な点や全体的に楽し気な雰囲気は日本初のレジャーカーといってもいいだろう。

いっぽうで冷静になると「一般的には浜辺など以外何に使うのだろう」と考えてしまうのも事実。

乗員を守るのはこのパイプだけ。おおらかな時代が生んだ名車ともいえるだろう

ホンダでは乗り降りが素早くできることと機動性を生かし、遊び用に加えて農山林管理や牧場といった屋外作業の移動車や配達での使用を想定していたようだ。

しかし現実はあまりに必要性がニッチだったためか輸出も含め2000台の月間生産台数に対し、絶版となる1973年までに約2500台しか生産されず、姿を消した。

■26年ぶりに復活した2代目バモスは優等生!!

2代目バモスは軽自動車の規格が現在のものに変わってからしばらく経った1999年6月。それまでの軽1BOX乗用のストリートの後継車として登場。

復活したバモスはいたって普通の軽バンだった。しかしミドシップ構造などこだわりが満点でホンダイズムは継承されていた

バモスもTN360以来のミッドシップ構造を継承し、軽トラックと軽1BOXバンのアクティともにタイヤをフロントシート下から前方に移し短いノーズを持った。

この工夫もあって衝突安全性は前面フルラップ衝突55km/h、前面オフセット衝突64km/hに対応するという、軽自動車という枠を超えた当時としては世界最高水準のものを備えていた。

2代目バモスで驚かされるのは翌2000年2月に追加された、ATのみのターボ車とNAエンジン+4WDのAT仕様だ。

何が驚きかといえばこの時追加された4速ATは、なんと他グレードとは異なり、エンジンをわざわざ縦置きにしている。

同じクルマでエンジンの搭載方向が異なるものがあるのだ。こんなクルマはクルマに詳しいつもりの筆者でも、他には1986年から94年まで生産されたルノー21(ヴァンティアン)くらいしか浮かばない。

そういった意味で2代目バモスはかつてホンダが時おり出した「ビックリ箱」的な(アコードインスパイアのFFミッドシップ構造もそうだろうか)最後のクルマかもしれない。

「遊びにも使える軽」というDNAは2代目バモスにも受け継がれ、2003年の一部改良では標準のバモスに対し全高が105mm高いハイルーフのホビオが追加された。

ハイルーフでレジャー用途も考えられたバモスホビオ。軽バンで遊ぶという新感覚をもたらした

ホビオはハイルーフなだけでなく、車内に物干し竿のように衣類を乾かしたり、電車の網棚のような収納スペースなどを作れるユーティリティナットを装備。

さらには自転車などを固定するためにベルトを掛けるタイダウンフック、撥水&消臭シート、ラゲッジスペースのフロアとリアシート背面には汚れを濡れ雑巾でサッと拭いて落とせるワイパブルマットなどもあった。

アウトドアや車中泊に使う際の発展性、利便性を高めた。また愛犬とのドライブに使いやすい、車内の清潔さの保ちやすさや掃除のしやすさに配慮した「トラベルドッグバージョン」も特別仕様車で2回販売された。

ホビオがやりたかったことはN-VANにも通ずるものがある。「遊び車」だった初代バモス、そしてホビオの意志は引き継がれている

このように思い出すと遊びにも使える楽しい軽自動車だったバモスも寄る年波にはさすがに勝てず、N-VANに使命は引き継がれた。

N-VANもバモスが持っていた楽しさに加え、ホンダらしくというかバイクのトランスポーターという提案も行っており、バモスも頼もしい後継車の登場に今頃どこかで喜んでいるに違いない。

【番外編:ひっそり消えたホンダの軽自動車】

今回はバモスにスポットを絞ったが、ホンダにはひっそりと消えた車種がいくつかある。永田氏に2車種をセレクトしてもらった。

「Z」
初代モデルは1970年から1974年まで生産されたN360ベースのスペシャリティな軽自動車だった。

1998年から2002年まで生産された2代目は2代目バモスの4速AT車と同じ縦置きミッドシップ構造。

ご覧のとおりのミドシップ。さらに4WDを組み合わせるという非常に珍しいクルマ。何がしたいのか!? なんて言われることも多い1台だったが、これを作っちゃったホンダは凄い。CMにアメリカのロックバンド「ZZトップ」を起用するなどやる気満々だった

衝突安全性も高いSUVチックなモデルだった。初代はホンダの軽乗用車からの一時撤退により、2代目モデルも今一つコンセプトが分かりにくく、絶版となった。

「ザッツ」
2002年2月に当時のライフをベースにした「ちょっと雰囲気の違う軽ハイトワゴン」として登場。

デザインもグリルなどが新鮮でよかったのだが、いかんせん地味な感じも否めず……

悪いクルマではなかったが、どうにも掴みどころがないのに加え、運悪く同時期にジャンルは違うにせよ個性的な軽自動車を狙ったラパンが登場したのも災いし、低迷。

後継車となるゼストが登場したのもあり、2007年に静かに姿を消した。

ホンダは過去を振り返っても車名を復活させるのが好きな企業。最近ではインサイトもしかり。

ということはいつかバモスもいつか違う形で、我々の目の前に現れてくれるのだろうか!?

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