■お客さんにとっては大きなマイナス作用
クルマは価格の高い移動ツールだが、嗜好品的な性格も併せ持ち、情緒的なイメージで選ばれる傾向が強い。技術の信頼は揺るがず、価格が割安だったとしても、メーカーにダーティな印象が生じると選ぶ気分が萎えてしまう。
だからこそ、日産はユーザーの疑問や不安を完全に払拭させ、納得のできる公表をせねばならない。
この内容はクルマ選びにも影響を与える。ノートやセレナが、自分の使い方や予算にピッタリならこれを選ぶところだが、そこに少しでも迷いが生じた時にはアクアやヴォクシーに変更する……というようなことも起こり得る。
リコール隠しなどと違って商品に直接影響を与える事案ではないはずだが、先に述べた会社の体質として完成検査問題とセットでイメージされたり、「日産車を買う気分」が萎えることは充分にあり得る。
■日産と三菱は「下がりきっている」状態
さらにいえば、本件は三菱自動車にも少なくない影響が生じるだろう。
カルロス・ゴーン氏は三菱の会長も務めるからだ。三菱は、日産ほどゴーン色は強くないが、会長に招いた以上影響は避けられない。
ただし国内販売において、メーカー別販売ランキングの順位が後退するほどの影響は生じない。なぜなら日産と三菱のブランド別国内総販売ランキング順位は、カルロス・ゴーン氏が不祥事を起こす前から下がりきっていたからだ。
目下のところ国内におけるメーカー別の販売順位を見ると、乗用車メーカー8社のうち、日産はトヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに次ぐ5位になる。三菱はマツダとスバルよりも低く、最下位の8位だ(2018年1〜10月累計/軽自動車含む)。
日産の国内店舗数は、ホンダの2200箇所に次いで多い2100箇所になる。マツダが1000箇所弱、スバルは約460箇所だから、今回の一件が販売にどれだけ悪影響を与えても、日産がマツダに抜かれて6位に転落することはない。
しかし長い期間で見れば分からない。ブランドイメージが悪い時間が長引くと、日産、三菱ともに売れ行きをさらに下げるからだ。
そうなると今後の日産と三菱は、マイナスのゴーンショックを回復すべく、尽力する必要がある。その手段は、国内における優れた商品投入と、入念な顧客サービス以外にあり得ない。
なぜなら日産と三菱は、自動車メーカーであるからだ。
日産、三菱ともに今までは海外向けの商品開発に力を注ぎ、日本における商品力は大幅に下落していた。その結果が前述の販売ランキング順位だ。そこを改めないかぎり、日産と三菱の回復は望めない。
数年後に今を振り返った時、「苦しい状況に陥ったが、あの不祥事をきっかけに、日産と三菱は見違えるように立ち直った」と思えるようになってほしい。
メーカーを本当に救えるのは、社長でも会長でもない。クルマと顧客サービスという「商品」である。
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