ほかの輸送分野への波及に期待
ZANZEFF全体が2022年中に終了する見込みとなっている。「ショア・トゥ・ストア」プロジェクトはトヨタ・ケンワース・シェルが提案し、CARBが4100万ドルを拠出している。この資金は州のイニシアチブであるカリフォルニア環境投資によるもの。
基金は数十億ドル規模の資金供給と投資を通じて、温室効果ガスの削減と経済の強靭化、住民の健康増進、環境保護を目指している。
FCEVトラックを使った今回のプロジェクトは、同様のコンセプト実証のテストケースとしては最大規模のもので、水素燃料電池技術の実践的な運用の可能性を示すため、将来の貨物輸送の「港からお店まで」全体の枠組みを想定したスケールで行なった。
なお、ロサンゼルス港は北米のコンテナ取扱港の中でも最も忙しい港湾で、港内だけで働くクルマも含めて中型~大型のトラックが多く集まっている。
これらのトラックは、カリフォルニア州の全車両のうち3%を占めるに過ぎないが、重量物を扱う大型車が多く、州内の道路輸送における温室効果ガス排出量の23%を占めている。ロサンゼルス港がドレージ輸送を2035年までにゼロ・エミッションに移行すると表明したのはこうした背景がある。
州は移行を支援するために「クリーン・トラック基金」を設立しており、事業者にとってこの地域はFCEV大型トラックのデモンストレーションを行なうのに最適な場所となった。
ロサンゼルス港のエグゼクティブ・ディレクターであるジーン・セロカ氏は次のように話している。
「トヨタやケンワースのようなOEMメーカーとコラボレーションすることは、次世代の新技術を市場に投入するためには重要なステップです。また、支援してくださったCARBにも感謝しています。今後も、ロサンゼルス港でゼロ・エミッションのトラックが増えて行くことを楽しみにしています」。
いっぽうシェルはこのプロジェクトを通じて3か所の水素ステーションを建設し、カリフォルニアで初めての大型トラックに水素を供給するプロバイダーとなった。これらの水素ステーションは、ドレージ輸送中に日常的に使用されFCEVの運用を支えた。
シェルで北米の水素モビリティ事業を統括するワイン・レイティ氏は次のように語った。
「カリフォルニア州が水素による商用輸送の素晴らしいユースケースを提供してくれたことと、ZANZEFFプロジェクトが成功したことを嬉しく思っています。民間企業と公共部門の連携は、大型車のゼロ・エミッションを推進するために不可欠です。CARBとロサンゼルス港、ZANZEFFのメンバーによるサポートに感謝します」。
このプログラムを通じて、カリフォルニア州内外でのFCEVトラックの開発と商用化への道が開かれるとともに、プロジェクトが成功裏に完了したことにより、この技術がほかの輸送分野に受け入れられる準備も整いつつあるようだ。
なおトヨタは米国ケンタッキー州で、2023年からトラック用燃料電池パワートレーンモジュールの製造を開始する計画だ。