高まる台湾有事の可能性。陸自の対艦ミサイルは日本の防衛力の要の1つだ!

■12式地対艦誘導弾とは?

 12式地対艦誘導弾を運用する第5地対艦ミサイル連隊は本部管理中隊と4個の射撃中隊、3個の独立地対艦ミサイル中隊で編成されている。

 本部管理中隊が捜索標定レーダー装置と中継機、指揮統制装置を装備、そのほかの各中隊は射撃管制装置、発射機と弾薬運搬・装填車両を装備する。またミサイル運用には欠かせない野整備機材や部隊整備機材なども配備される。

 12式地対艦誘導弾はロケットモーターで発射機から打ち出され、ロケットモーターの燃焼後はミサイル本体に搭載されたターボジェットエンジンにより飛翔する。射程は約200km、88式地対艦誘導弾は飛翔速度が1150km/hなので、その後継となる12式地対艦誘導弾も同程度かそれ以上の速度で飛翔できると思われる。

 誘導は指揮統制装置から送られてきたデータ(発射位置と目標位置を基にして計算された最適の飛翔経路など)を射撃管制装置を介してミサイルに入力、発射されたミサイルはプログラミングされたデータに基づきINS(慣性誘導装置)を使い目標に向かって飛翔する。さらにGPSを使用することで飛翔精度を向上させている。目標に接近した終末誘導では、ミサイル自体がレーダー波を照射して目標を探知(アクティブ・レーダー・ホーミング)、突入する。また地対艦ミサイルで敵艦船を撃破するには複数のミサイルを同時に発射する必要がある。敵もミサイルの迎撃システムを装備しているからだ。

 ちなみに12式地対艦誘導弾をベースにして護衛艦に搭載される17式艦対艦誘導弾が開発されている。

12式地対艦ミサイルの運用図解
12式地対艦ミサイルの運用図解

■陸上自衛隊の地対艦誘導弾の運用構想

 陸上自衛隊が運用する地対艦ミサイルは、本部中隊が捜索標定レーダーを索敵のために海岸線に配備して目標の索敵と指揮統制を行ない、ミサイルを発射する各中隊の射撃管制装置や発射機は敵の空や海からの攻撃を避けるために、海岸線よりも100km~150kmほど離れた内陸部に配置される。

 この方式では海岸線に配置したレーダー装置が探知できるのは50km程度で、仮にレーダー装置を海岸線に面した500mほどの高さの山に置いたとしても100kmほど先の洋上にいる高さが30mの敵の艦船しか探知できない。水平線の向こうにいる敵の艦船を探知するのは不可能ということだ。それでは12式地対艦誘導弾の射程が200kmあったとしても、沿岸から離れた目標を攻撃することは不可能で、沿岸に接近する敵の着上陸部隊しか攻撃できない。

 これは陸上自衛隊の地対艦ミサイルの運用構想が、沿岸に接近・上陸する敵の着上陸部隊の撃滅に置かれ、先にも書いたように射程の長さは敵の攻撃を回避するためのものであるということ。その理由は、陸上自衛隊では敵の侵攻が始まっても兵力を温存し、空自や海自が壊滅した後の国土に侵攻しようとする敵と戦うことに作戦構想の重点を置いていたからだ。つまり地対艦ミサイルは水際撃破戦のための兵器だったのだ。
 いっぽう、航空自衛隊や海上自衛隊は洋上での敵侵攻兵力の撃破に作戦構想を置いていた。

■リンク機能が付与される地対艦ミサイル

 近年、相手の射程に入らず、安全な射程圏外から攻撃できるスタンドオフ能力を持つミサイルの重要性が高まっている。防衛省でも反撃能力(敵基地攻撃能力のこと)を強化するためにスタンドオフ・ミサイルに注目し、2021年からは12式地対艦誘導弾の能力向上型の開発を進めている。これにより射程は1000km程度まで延伸され、車両の他に航空機や艦艇からも発射できるようにプラットホームの多様化を図るという。 

 先にも書いたように12式地対艦誘導弾が200kmの射程があったとしても従来の運用方法では、能力を充分に活かすことができない。そこで能力向上型では射程の延伸を図るとともにリンク機能も導入される。

リンク機構を利用した12式地対艦ミサイルの運用図解
リンク機構を利用した12式地対艦ミサイルの運用図解

 リンク機能により、航空自衛隊や海上自衛隊の早期警戒機や対潜哨戒機からの最新の目標情報と連動できるようになる。この情報を衛星を介して飛翔中のミサイルに送り続けることで、目標への命中精度を向上させ、長射程能力を十分に活かした遠距離からの攻撃が可能となる。

 近年、陸上自衛隊では空自・海自とともに統合作戦を行うという方向に作戦構想を変化させており、そうしたことから能力向上型ではリンク機能が付与されるのである。

 また能力向上型では長距離を飛翔したり、ステルス性を持たせるために従来とは異なる形状になるという。

 極端にいえば能力向上型は反撃能力を高めることにもなり、これによって単に島しょ防衛の兵器としてだけではなく、抑止能力を持つ兵器ともなりうるのだ。まさに対艦ミサイルは日本の防衛力の要の1つである。

【画像ギャラリー】88式地対艦誘導弾の運用シーンはこれだ!(2枚)画像ギャラリー

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

新型プレリュード仮想カタログほか、スポーツカー好き大歓喜情報満載!ベストカー12月10日号発売中!!

新型プレリュード仮想カタログほか、スポーツカー好き大歓喜情報満載!ベストカー12月10日号発売中!!

 ベストカーWebをご覧の皆さま、ちわっす! 愛車がどれだけ部品を交換してもグズり続けて悲しみの編集…