SNSなどで見ていると「トヨタのパールホワイトがなにもしていないのに剥がれた」という投稿を何件か見かける。
業界的に見てもトヨタに限らずパールホワイトは原則として有償色であり、メーカーとしてもそのクオリティには力を入れている。
それがある日突然「ペリペリ」っと剥がれたというのだ。これはいったいどういうことなのか? メーカーへの取材、そして塗膜の専門家に聞いてみた。
文:永田恵一/写真:トヨタ
■塗装に問題があればメーカーは保証する?
ここ1、2年、SNSで「2010年から2012年あたりに製造されたパールホワイトのトヨタ車の塗装が5年目以降に剥がれた」という投稿を見ることがある。
筆者の知る限るはトヨタのパールホワイトの品質は高いという認識であり、にわかには信じがたいが投稿を見るとたしかに剥がれている。
今回は真相を追求するためにトヨタと識者への取材を行った。
まずパールホワイトの剥げ、剥がれが報告される車種は前述した年式のiQ、カローラルミオン、ウィッシュ、ハイエース、先代ヴェルファイア、ランドクルーザー200あたり。
なかにはルーフの塗装がまるでラッピングのように剥がれているクルマもあり、これが自分の愛車だったらと思うと実にショッキングな画像だ。
なお、トヨタ車の塗装に関する新車時の保証は乗用車、バン、ワゴンであれば3年間となっている。
SNSなどで展開されている塗装剥げ事象についてトヨタ広報部に聞いてみた。
「個別のケースについてはお答えできかねますが、一般的にトヨタでは、お客様から塗装ハゲのお申し出があった場合、販売店が実際のお車を確認させていただきます。
塗装ハゲが鳥糞害、溶剤の付着、チッピング(石当たり)などによる外的要因が認められず、供給者側の責任に起因すると判断した場合、責任の度合に応じ、適正な費用負担で修理することを保証書でお約束しています。
また、本件のような塗装に関する不具合に限らず、供給者側の責任に起因すると判断した場合、適正な費用負担で修理を実施させていただいております」。
対応についてはコンディションがクルマによって千差万別であるのもあり、ケースバイケースだが補修費用をトヨタが負担することもある。
なお塗装に関する不具合でメーカーがサービスキャンペーン(無償修理)を実施することもある。直近では2018年11月のホンダS660の「カーニバルイエローII」がその例だ。
顔料の選定が不適切なため早期に色抜けするという問題に対し、ホンダは特定部分の再塗装を2699台を対象にサービスキャンペーンという形で発表している。
このことを見ると、塗装の不具合に関しても製造工程や塗料自体に問題がある場合にはメーカーは対策を行う事例が存在することが分かる。
■塗装のプロは誤ったケア方法の可能性を指摘
メーカー以外の第三者の意見も聞いてみよう。1万台以上の塗膜を見てきた関東でコーティング業を営むE氏に見解を聞いてみた。
「トヨタの塗装というのは各車格においてトップクラスのクオリティで、その中でもパールホワイトは特にクオリティが高いです。
そんななかで納車3年目のトヨタのパールホワイトのクルマで『下地が出た』という相談を受けたことがあります。
詳しく聞いてみると水アカが目立つ色というのもあってか『コンパウンド入りのコーティング剤を結構な頻度で使っている』とのことでした。
この手のケミカルには塗装への攻撃性が強いものがなかにはあったり、ケミカルメーカーの想定を超える頻度で使われていた可能性があります。
また水アカを見てしまうと一般の方はそこをゴシゴシとやってしまいがちで塗装が薄くなります。
磨いた部分には水アカが付きやすくなり、またゴシゴシと磨いてしまうという悪循環で塗装の剥がれにつながっていることは考えられます。
具体的にはスポンジで20回も擦れば面ではなく点で塗膜を磨く作業となり、どんなクルマでも下地が出る可能性は高くなります」。
新車で購入して頻繁に洗車をしていて塗膜が剥がれてしまったなんて場合、もしかするとケアの方法が間違っていた場合もあるかもしれない。
またマイスターによればコーティング業界はレベルの差が激しく、技量の低い研磨や不適切な板金修理から傷口が広がることもゼロとは言えないという。
長年同じ場所で営業している実績のあるコーティング業者や、塗膜にダメージの少ないケミカルを使うなどケアについても慎重になるべきかもしれない。
中古車での購入も含めると、パールホワイトのトヨタ車の塗装が剥がれるという不具合は、製造過程ではない外的な要因が多数ではないだろうか。
コメント
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