2月8日、千葉県トラック協会女性部会はアリソンのトルコン式AT車を使用した「ATトラック試乗会・研修会」を千葉県南房総市で行なった。
今回集まった女性部会は各々の運送会社の経営者や役職に就く方たち。女性の目にはアリソンのフルATはどう映るのか?
文・写真/フルロード編集部
求められる運転しやすいトラック
トラック運送業界の人手不足は深刻で、試算では2030年度に10億トンに近い輸送力不足に陥ると公表(NX総合研究所)されている。
この輸送力不足の要因は、元来のドライバー不足に加え、2024年から始まる長時間労働の規制(改善基準告示)によるもの。今後運送事業者はさらに人材確保が課題となってくると予測される。
現在中高年層の男性が多いトラック運送業界は、40歳未満の就業者数は全体のおおよそ25%に対し、40歳以上は約75%。女性の就業者数はわずか3.5%ほどである。
人手不足の打開のためには若者や女性、あるいは元気なシニア世代の活力が不可欠なわけだが、いっぽうでこうした人材の確保・育成のためには運転しやすいトラックの導入など、働きやすい環境づくりも重要になってくる。
ではこうした人々にとって運転しやすいトラックとはどんなトラックだろうか?
国土交通省と全日本トラック協会が2019年に行なった調査「女性ドライバー等が運転しやすいトラックのあり方」のアンケートによれば、トラックの装備で「良くなってきた内容」を女性ドライバーに聞くと、「AT・AMT化」が回答で最も多く、60歳以上の男性の回答は「安全装置の装着」に次いで「AT・AMT化」が示されている。
このような背景のもと、千葉県トラック協会女性部会は、ATトラックの評価を得るべく女性限定のトルコン式AT車を使用した「ATトラック試乗会・研修会」を千葉県南房総市で行なった。
AMTに比べまだまだメーカーラインナップ自体少ないATだが、実際女性に運転してもらった感想はどうだろうか?
ATトラック試乗会・研修会の概要
今回の試乗会に協力したアリソンは、米国に本社を置く商用車向けフルオートマチックトランスミッションの分野で世界トップシェアメカーカー。日本市場では大型路線バスの8割以上が同社製ATを採用するいっぽう、一般用途向けトラックには日野レンジャーに設定されている。
試乗会では、アリソン製トルコン式ATを搭載した日野レンジャーの平ボディとウイング車、比較車両としてAMTのいすゞエルフの3台を用意。なおAT車は2tほどのウェイトを積載するが、エルフは空荷の状態だ。
試乗コースは南房総市の急勾配を含む一般道で、一往復20分ほどの距離を千葉県トラック協会女性部会の方たちが運転や同乗試乗を行なうもの。
こうした坂道の多い道は、ATが得意とする場面でもある。MTを自動化したAMTでは、どうしてもギアを切り替える「間」の変速ショックが発生するため、特に上り勾配では変速のたびに失速し力不足に感じやすく、燃費面でも芳しくない。いっぽうATのギアボックスには遊星歯車が採用され途切れの少ない変速が可能である。
試乗した女性部会からは「オートマはスピードが出ますね。出足がすごくいい」「(ATを)最初に乗ったから(AMTは)ストレスに感じる」「オートマは踏んだアクセルのパワーがそのまま駆動に伝わるのがいい」などの声があがった。
ちなみにエルフのAMTは「1STスタート」ボタンなどを押さない限り2速発進がデフォルト。1速のギア比はAMTのほうが深いが、アリソンATの発進時は必ず1速からスタートするためトルクコンバーターによる発進時のトルク増幅作用と相まって力強い走りが発揮される。
いっぽう重量物運搬(トレーラ)を生業とする会社の経営者からは「重量物の会社ではオートマはすごく魅力だと思います。重トレにもオートマがあるといいな」というトラックでの設定の少なさを残念がる意見も。
アリソンATはトルク増幅や途切れない加速といったほかに、中型クラスに設定のない自走事故を予防できるパーキングギアの設定(※アリソン1000シリーズ等の場合)、砂利道・雪道などに強い滑らかな走り出しなどさまざまなメリットがある。もちろん、クラッチ操作が不要という面でも運転しやすいクルマであることは間違いない。
今後、運送事業者に求められるであろう働きやすい環境づくりのためにも、是非ATの設定車種を増やしていただきたいと思う。
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