最近よく耳にする可搬式オービス。本来は通学路や抜け道として使われている生活道路での速度違反を取り締まるための装置だった。
しかしその状況が一変しているという。速度違反が検挙しにくい生活道路よりも、多くの速度違反の取り締まり機会が多い箇所へと設置が進んでいるという。
いったいなにが起こっているのだろうか?
文:国沢光宏/写真:ベストカー編集部、Adobe Stock
ベストカー2019年4月26日号
■子どもたちの安全を守る可搬式オービス
移動式オービス(警察では可搬式と呼ばれる)がドンドン増えている! すでに北海道から、九州の宮崎県警まで導入ずみで、愛知県警など5台も運用する熱心さ。
加えて移動式オービスの「機種」も増えており、現在確認されているだけで5タイプ。うち2機種は速度センサーとしてレーザー(光)を使っているため、電波出さない。
レーダー探知機じゃ見つけられないというから素晴らしい。以下、最新の移動式オービスの状況をレポートしよう。
まず移動式オービス導入の理由だけれど、警察曰く「通学路など速度違反が特に危険だと思われる場所の取り締まりに使う」。
素晴らしい。孫を持つ私としては、小さい子供のいる道路での速度違反をドンドン取り締まってほしい。ところが通学路などに設置してみると、案外捕まる車両は少ないのだという。
考えてみたら肖像権を侵害するオービスの場合、30km/h以上の重大な違反をした車両が対象になる。ということで取り締まり対象は悪質な違反に限定されます。
先日のこと。我が家の近所の通学路で1時間ほど通過するクルマの速度をスピードガンで測ってみたら、制限速度を30㎞/h以上超える速度違反は1台もいなかった。
近年そういった無謀運転をする輩は減ったということだろう。つまり移動式オービスを置いても空振りばかりになってしまう。これだと3000万円する「道具」を導入したってまったくペイできない。
実績なければ「何のために高い税金を使ったんだ!」ということになるワケ。
■警察は違反抑制よりも取り締まり実績を求めたのか?
そこで最近警察は「速度違反の多い場所」でも移動式オービスを使い始めている。ネットで検索すると移動式オービスの”目撃写真”が多く出てくる。
2018年の夏くらいまでの移動式オービス設置場所の投稿を見ると、警察の言うとおり危険性高そうな場所が大半だった。
けれど2018年秋口あたりから「そこはふつうの流れのいい道路でしょ!」というケースが急増。取り締まり実績件数を増やさないとマズイという判断なんだと思う。
何と! 子供たちの安全を守る正義の味方から、ノルマをこなすのが目的の取り締まりという悪役になっちゃったワケ。
ちなみにオービス発祥の地であるアメリカにいくと、ほぼ絶滅している。ピストルで打たれたり、焼かれたり壊されたりしてしまった。
どうやら「反感を買う場所」に設置された日本の移動式オービスにも被害出ているらしい。もちろん警察に聞いても返事なし。
漏れ伝わるウワサによれば、燃やされていたり、方向をズラされたり、横倒しになっていた移動式オービスもあるらしい。
これまた正式に確認できていないが、道路端の3000万円相当の移動式オービス、盗まれたという。高額な機器だけに窃盗団とかからすれば格好の餌食。
かくして最近は移動式オービスを取り締まりの時に保管場所から現場に運ぶことが多くなったそう。
もちろん速度違反は許されないことだが、警察にはぜひ原点に戻ってほしい。
取り締まり実績は少なくても、通学路に置いて子どもたちを守るほうが大事だと思う。
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