’02年から本格的な普及が始まったアイドリングストップ。
スバルの場合はアイサイトとも連動している。
クルマが停止している時にはエンジンを止めたほうがイイ。
これは誰でも思いつく素朴な燃費向上テクニックだから、日本車では’81年のスターレット・エコランシステムが最初に実用化している。技術的には現在のシステムと同様だが、エンジン停止の条件はかなり緩い。停止して一定の時間が経過してからエンジンが止まり、クラッチを踏んだりウインカーを操作したりすると即エンジンをかける。
エンジンはまだキャブ仕様だし、スターターにも特別なしかけはなかったから、メーカー側としてもおっかなびっくりだったのだ。
残念ながら、燃費メリットも顕著ではないし、ユーザーの評価も低かったから、このシステムはスターレットのみで消滅し、その後しばらくアイドリングストップは忘れられてしまう。
歴史的に見て、停車中にエンジンがアイドリングしないことのメリットをユーザーが本当に実感するのは、’97年デビューの初代プリウス以降、ハイブリッド車が普及してからだ。アイドル停止中もエアコンや補機類を電気で動かすことができるから快適性も損ねない(これは初期はトヨタ系のみ)。
「アイドリングストップって便利じゃん!」ユーザーは初めてそう評価したのだ。アイドリングストップにさらに追い風が吹くのは’02年から始まるグリーン税制だ。基準値より燃費のいいクルマが減税となるこの制度によって、モード燃費向上に有効なアイドリングストップがイッキに普及してくる。
新世代のシステムは、技術的にもさまざまな工夫が施されている。たとえば、マツダのi─stopは、オルタネーターでブレーキをかけてピストンを次の燃焼に最適な位置に止め、直噴のひと吹きと点火スパークでそのシリンダーに着火することで再始動を助ける(実用化時はスターターモーター併用)。
また、エンジン停止時間を伸ばすためには、クルマが停止する前にエンジンを止める必要がある。そうなると、そこで想定外のエンジン再始動が発生した場合、まだ完全に停止していないエンジンを再始動するケースが発生する。 現行ヴィッツの初期モデルでは、フライホイールのリングギアにワンウェイクラッチが内蔵されていて、モーターピニオンとリングギアを常時噛み合いとしてこれに対応していた。
ただし現在のスターターモーターはピニオンの飛び込みとモーターの作動を独立させ、エンジンが完全に停止していなくても再始動が可能なシステムが主流となっている。アイドリングストップは時代の流れ。いずれ、すべてのクルマに装備されるんじゃないでしょうか?
アイドリングストップで年間約1万円のセーブマネー!?
いまや多くのクルマに装着されるようになったアイドリングストップ。ガソリンをセーブするのはよくわかるが、では実際問題お財布にはどれくらい優しくなるのか。ここでは2ℓクラスミニバンのノアを例に算出してみよう。
まずどのくらい燃費がアップするかだが、編集部の過去の調査では約10%燃費がよくなることがわかっている。これを元に年間1万キロ走行(走るのは市街地のみという想定)、2回目の車検となる5年間使用したとすると、下の計算表でもわかるとおり、セーブできるガソリンは285ℓ。金額では4万7025円となる。
意外に伸びず、これだけと思う人も多いかもしれない。それに装着車の場合、バッテリーも特別仕様なのでトータルのランニングコストはもっとビミョーなものになる。ただし、日本全体で考えれば膨大な量のガソリンがセーブできることが重要だ。なのでアイドリングストップとは、個人の利益を優先するものというよりも、ドライバーが担う社会的な責務のための機能といっていいのかも。
■アイドリングストップあり/なしのガソリン代比較
使用車両 トヨタノアSi 7人乗り 2.0ℓ JC08燃費 16.0km/ℓ
これでいいのか日本のアイドリングストップ!
鈴木直也が喝を入れる!
自動車メーカーの技術者がアイドリングストップシステムを実用化する時、まず考えたのは「必要な時に再始動しなかったら困る」という信頼性の問題だ。これは、場合によっては事故にもつながりかねないから、初期のアイドリングストップは「何かあるとすぐ再始動」という感じですぐエンジンがかかる。かなり慎重にデザインされていたといっていい。
いっぽう、アイドリングストップは日本車だけのブームではなく、欧州車にも続々装備。それが日本にも入ってくる。リスクに対する考え方の違いなんだろうけど、ヨーロッパ車は「できるかぎりエンジンは止める」という意味では日本車よりずっとアグレッシブだ。
例えば、最近のVW車なんかに乗るとビックリするのだが、とにかくエンジンを止めたままねばる。ホールドスイッチを入れておけば、停止後ブレーキから足を離してもそのまま、ATセレクターをPレンジに入れてもそのまま。日本車だったら再始動条件に当てはまるような状況でもエンジンを掛けようとしない。
日本車が安全性を気にして及び腰になっているところを、欧州車は積極的にエンジンを止めてくる。ただ、これは実用的なドライバビリティを考えると諸刃の剣で、欲張ると弊害も出てくる。
典型的なのが軽自動車。最近の軽はみんな速度20㎞/h弱でアイドル停止しようとする。そのまま止まればいいのだけれど再加速するなど想定外の動きをすると、エンジン停止、即再始動とバタバタしちゃう。
また、これはスズキ車で気になるのだが、減速してアイドリングストップが作動するのはいいのだが、スムーズに停車しようと停止寸前にブレーキをスッとゆるめた瞬間に加速と判断して再始動となってしまう。まぁ、何でもそうなのだが、限界まで攻めようとするとイロイロと難しい問題が生じてくる。いまやアイドリングストップは付いていて当然の装備だから、今後はその作動をいかに効率よく洗練させるかの競争となるはず。
あと現状で装備されていないクルマもある。最近でビックリしたのはレヴォーグ2・0GTだし、トヨタのノンハイブリッド上級車も装備されていない。
筆者の個人的な意見ですが、こういうのはすべて環境技術に対する怠慢だと思ってます。
エンジン停止を好まないユーザーがいるならキャンセルスイッチひとつつけておけば問題ないこと。いまや、フェラーリだってアイドリングストップが装備されている時代。「我が社はアイドル時に浪費されるエネルギーや無駄に排出される排ガスに対して鈍感です」といっているに等しい。環境問題に対するメーカーの姿勢として、いまやアイドリングストップは必須の装備なんじゃないでしょうか?
早期装着を願う!!
国産車アイドリングストップ非搭載車リスト
下を見ていただくと、アイドリングストップが当たり前となっている日本車でも、アイドリングストップがないモデルがたくさんあることに驚かれる人も多いだろう。アイドリングストップがないモデルがこれだけある理由はいくつかある。ひとつ目は登場が古いモデル。これはしかたのない面も大きい。
ふたつ目は新しいモデルなのにアイドリングストップがないというパターン。これはアイドリングストップを装着するにはトランスミッションにも手を加える必要があり、共通のパワートレーンでそれなりの数をさばけないとアイドリングストップに対応しないということが多い。
3つ目は単純に価格を下げたいという理由だ。最新の日本車であるWRXにもアイドリングストップは装着されない。対応が難しいCVTのS4はともかく、比較的容易にアイドリングストップが付くMTのWRX STIだけでも輸入車を見習ってアイドリングストップを付けてほしかったというのがユーザーの本音だろう。
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