高速道路の「街路樹問題」 中央分離帯の植栽は必要なのか? 【清水草一の道路ニュース】  

◾️植栽の歴史はアウトバーンの影響による

 高速道路の中央分離帯の植栽は、アウトバーンの影響が強いと思われる。日本初の高速道路である名神高速道路建設にあたって、世界銀行から融資を受けるため、日本はドイツからクサヘル・ドルシュ氏というアウトバーンの専門家を招聘した。ドルシュ氏は、ドイツ・アウトバーンの生みの親であるフリッツ・トット氏の弟子にあたる技術者だった。

 トット氏は、「庭園のように美しい高速道路」という高邁な理念を掲げ、アウトバーンの中央分離帯には、造園家の協力を仰いで木々を植えた区間があった。当時のアウトバーンの写真を見ると、ガードレールはなく、ゆったりした幅の中央分離帯には、高木が西洋庭園のように植えられている。

 日本も高速道路の創成期、「日本の風景と調和させる美しい道路づくり」を目指し、中央分離帯に植栽を設けた。アウトバーンのような贅沢な設計は不可能だったが、幅の狭い中央分離帯に、マサキやサザンカなどの低木を6メートル間隔で植えた。開通当時の名神高速道路の写真を見ると、ガードレールはなく縁石だけで、中央分離帯に低木が植えられている。

 しかし、低木でも手入れは必要だ。交通量の多い幹線高速で車線規制を実施すると、高い確率で渋滞が発生してしまう。時代が下るにつれて、中央分離帯の植栽は、管理の容易な遮光板に付け替えられていった。名神でも、中央分離帯に植栽が残っている区間はかなり減少している。

遮光板であれば植栽ほど手入れに手間がかかることはないが……
遮光板であれば植栽ほど手入れに手間がかかることはないが……

 首都圏も中央分離帯の植栽はわずかになったが、東名高速は頑固(?)に守っており、東京近郊でも植栽区間の割合が高い。

 しかし過酷な環境のせいもあって、決して誉められた見栄えではない場所もある。これではドライバーの心は癒されないし、CO2削減効果もゼロに近い。地方の交通量の少ない区間は別だが、大都市部では「ないほうがいい」のではないか。

 NEXCOも、それは承知しているはずだ。高速道路の中央分離帯の植栽は、今後も徐々に減少していくだろう。

【画像ギャラリー】あった方がいい? なくてもいい? 高速道路の植栽にまつわる写真を見る!(4枚)画像ギャラリー

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