レクサスUX & BMW X1は差が少ない?? 現役エンジニアは小型SUVをどう評価する?【静的評価編】

■隙間の合わせができないことはクルマ全体の作りこみと関係ある

 なぜ私がいつもパーティング隙間の合わせについて言及するのかというと、実はフロアやピラー、シル、メンバーなどプラットフォームの立て付けと密接に関係しているからなのです。

 精度よく作られ、剛性がしっかりと確保されていれば、バラつきもなくピシッと一定寸法の少ない隙間での合わせができるのです。

 逆に言えば、チリ合わせが上手くできていないということは、ピラー部やシル部分などの骨格精度にバラツキなどがあるということなのです。そこにC-HRベースの顔が見えてしまうのです。

パネルの合わせ面については見栄えの問題よりも、クルマ本体が抱える課題が隠れているという

 私がGT-Rを開発した時、工場生産ラインのすぐ横にマセラティを置いて、最低限このレベルの仕上げを作り、完成検査をするようにと指示をしました。

 価格に見合った質感を作り上げていかなくては、お客様は納得してくれはしません。1泊1万円もしない旅館と、5万円の旅館であれば、お客は価格に見合ったおもてなしを求めて宿泊するわけです。クルマという商品でも、その考え方はまったく同じです。

 フロントマスクはレクサスのブランドアイデンティティを表現するデザインなので、これをいい悪いと評価することは避けたいと思います。ただ、空力的には不利な形状ですが。

 インテリアは悪くない。いいですね。ちゃんと作っています。ソフトパッドの使い方もいいし、隙間の部分も余裕を付けて上手に配置しています。基盤となる黒色の使い方もいいです。

インテリアについては水野さんも評価するUX。インパネの黒の使い方にも注目だ

 インパネでも正面と上部、ドアパネルなど黒色を基調としたコーディネートなのですが、黒の見栄えにバラツキがない。

 通常は、光の当たり方や材質の違い、シボの入れ方などにより、同じ色味の黒を使うと逆にバラバラな何色もの黒色に見えてしまうのですが、このUXでは同じ見栄えの黒に見えるようにきちんとコーディネートされひとつのソリッド感としてまとめられています。これはとても上手です。

 実際にインパネ面を見るとスイッチ類などで凹凸があったりしてガチャガチャしているのですが、パッと見た目にそれを感じさせていません。

 基盤の黒色がしっかりしているのでスッキリと見せられるのです。インテリアの質感の仕上がりは、充分に600万円クラスの造りこみです。ある意味、アウディを超えたと言っても過言ではありません。かなり実車で造り込んできたのでしょう。

 これと比較するとX1のインパネはガチャガチャ感が目立ちます。同じようにブラック基調のインテリアですが、メーターフード上部とドアトリム、センターパネルの黒色がいろいろな、何種類もの黒色に見えています。

ガチャガチャしているというX1のインパネ。たしかに同じ黒でも数種類の色味が見えてきて統一感がない

 インスト正面のトリムは粗シボなのですが、光の反射で白っぽく見えるのにセンターパネルはピアノブラックでテカテカ反射する。これが安っぽさを感じさせてしまうのです。レクサスUXのほうが圧倒的に上質です。

■ハイブリッドの共用化に見るトヨタの実力

 エンジンルームを見れば、UXは完全にトヨタハイブリッドのパッケージング。

 エンジンとモーター、パワーコントロールユニットをひとつのパッケージングにまとめてあらゆるクルマに搭載できるようにしているこの共用化の技術力はたいしたものだと感服します。

パワーユニットを共用化してさまざまな車種に搭載できるようにする。トヨタらしい技術だ

 エンジン自体はC-HRの1.8Lとは異なる新開発2Lですが、エンジンが変わってもユニットのパッケージングは同じにできている。ここまで効率化されていると、今となってはコスト的にはずいぶんと低減できていると思います。

 一方X1はというと、エンジン本体はずいぶんと低い位置に置いています。エンジンルームの作り方はBMWの横置きFF系列の作り方で、特に新味はありませんが、きちんと作られていると思います。

 後席の居住性は、UXは決して広いとは言えませんが、座ってしまえば膝前にコブシひとつ分以上の余裕はありますし、頭上も当たってしまうこともなく充分。足元は靴先が前席下に収まるし、窮屈さを感じることはありません。

後席については厳しい評価となったX1。膝の裏が圧迫される形状は改善してほしいところ

 X1の後席に座ると前席の幅の狭さがよくわかります。特にヘッドレストをコンパクトにし、背もたれの肩部分をスッと落として背もたれ自体の幅も狭くすることで後席に座った人の前方視界を確保し、室内の広さ感の演出をしています。足元の広さ自体も充分あります。

 しかし後席座面の形状はダメ。フロアから座面までの高さが高すぎます。こうすることで後席乗員はアップライトな姿勢となり、膝が前に出ない姿勢で座ります。

 膝前のスペースを広く取るには効果的な姿勢なのですが、ゆったりと寛ぐ姿勢ではありません。

 それ自体はまあいいのですが、座面前端部のクッションが硬く盛り上がった形状のため、腿の裏が圧迫されて血流が阻害され鬱血してきそうな形状です。もっと手間をかけてソフトな座面を作ってほしいです。

 原価低減の影響は、例えばドアの開閉音にも現われています。サイドウィンドウの開閉レギュレーターの保持剛性が低いため、バンとドアを閉めた時にガラスがビビッてしまうのです。

 ドアの開閉音は、レクサスUXのほうが圧倒的に上質です。

【試乗車主要諸元】

【次回はいよいよ試乗しての動的質感に迫ります】

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