日本の高速道路が「先進国最悪の乗り心地」と言われるのはいったいなぜなのか? 【清水草一の道路ニュース】

◾️日本ならではの高速道路を取り巻く環境要因とは?

 もうひとつの要因は、路面の沈下だ。

 日本の平野部は、前述のように、全国どこへ行っても地上にいろいろなもの通っているので、欧米と違って、地表面にそのまま高速道路を建設できる場所はほとんどない。高架か盛り土によって、高く盛り上げる必要がある。

 ところが、日本の平野部は川が運んだ堆積物でできていて、地盤がとても柔らかい。柔らかい地面の上に土を盛ると、その重みで地盤が沈下してしまう。

 そこで、土を盛る前の地面に無数の穴を開け、そこに砂を詰めて地下水を抜く「サンドパイル」といった工法が用いられているが、それでも盛り土の沈下をゼロにすることは不可能だ。沈下すればどうしても路面に凹凸ができる。

 舗装面の下に鉄筋コンクリート製の床版を敷いて、不等沈下しないようにすればいいのだが、そんな重いモノを敷いたら、ますまず地盤が沈下する。

 だから日本の高速道路は、下から順に、改良した軟弱地盤→盛り土→砕石を混ぜた路床→アスファルト舗装という構造の区間が多い。不等沈下が起きないように対策は講じているが、全体が柔らかいので、ゼロにすることはできない。

東日本大震災では、常磐道の盛り土が崩壊した。断面を見るとその構造がよくわかる   画像:国土交通省
東日本大震災では、常磐道の盛り土が崩壊した。断面を見るとその構造がよくわかる   画像:国土交通省

 しかも、盛り土区間には、その下をくぐるアンダーパスが多数設けられている。アンダーパス部には、重い鉄筋コンクリート構造が用いられる。重い物は軽い物よりも沈む。それらを計算した上で設計・建設しているが、誤差をゼロにすることはできず、どうしても凹凸ができる。

 日本の高速道路を走っていると、ジョイントもないのにかなり大きな段差を感じる場所が間々あるが、その多くは、高速道路の下に幅の狭いトンネル(道や水路)が通っている。盛り土の内部構造の差によって、道路表面に段差がでてきしまうのである。

 欧米では、表土の下はすぐ岩盤で、地盤が堅固な場所が多い。そこで、地表の上に鉄筋コンクリート製の床版を敷き、その上に舗装を乗せている。こうすれば不等沈下はほとんど起きず、路面は平滑性を保てる。

 つまり、日本の高速道路の乗り心地が悪いのは、大部分、日本の国土の成り立ちに原因があるわけだ。

 しかし、そんな日本でも、アウトバーンにひけを取らない高速道路が完成している。新東名・新名神だ。新東名・新名神は、多くがとんでもない山間部に建設されていて、トンネルと橋だらけ。沖積平野のような軟弱地盤の上を通過する区間はあまりない。

 おかげで欧米のように、コンクリート製の床版(プレキャストコンクリート)を敷くことができた区間が多く、素晴らしく乗り心地がいい。まさに「日本のアウトバーン」である。地盤さえよければ、そのほうがメンテナンス費を抑えられて一石二鳥でもある。

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