小学生の登校時に交通安全指導を行う藤巻さん。定期的に行っているので、小学生たちも平然としている・・・。
車両&モノを動かす女性を山路徹が至近距離取材!
馬を走らせている赤い服の彼女の職業が警視庁の警察官というからちょっとした驚きだ。
第三方面交通機動隊・騎馬隊の巡査長、藤巻優香さんは馬に乗り、交通安全を啓発する仕事に従事している。僕も話を聞いて知ったのだが、藤巻さんの仕事は警察官のなかでも特殊といえるもので、大きく3つの活動を行っているという。ひとつが幼稚園や小学校での交通安全教育の一環の乗馬体験教室。
2つ目がいろいろな警察行事パレードなどの広報活動で、3つ目は大使館員などの公人の警護。警視庁の伝統と威信を保ちつつも、馬を操って〝見せる〟という意図もあるのだろう、彼女が着るこの赤い服に僕は最初ハッとしてしまった。
「騎馬隊だけの服で、これは冬服です。燕尾服はそれまでプライベートで着たことがなかったので、最初は着方がわからなかったです(笑)。でも、着た瞬間は身が引き締まり、背筋がピッと伸びますね」
赤の燕尾服で白馬をさっそうと走らせる姿、まさに〝凛々しい〟という形容がはまる。
そんな藤巻さんは現在25歳、警視庁に入庁してから今年で9年目。入庁後は街の警察署へ配属され、3年間実務を積み、希望先の騎馬隊に3年前に入ったという経歴。尊敬する高校時代の先輩が警察官になったのが入庁した理由だが、なぜ騎馬隊希望だったのだろうか。
「もともと動物が好きで警察犬をパートナーにする警察官もいいなと思っていたのですけど(笑)、警察の部隊行進訓練で騎馬隊の存在を初めて知り、女性隊員の姿を目の前で見て、〝ステキで格好いいなぁ〟〝華がある〟と心を引かれてしまって……(笑)」
本誌の昨年9月26日号で登場の女性白バイ隊員の宮田舞美さんも、先輩隊員に憧れて白バイ隊員になったのだが、それを思い出す藤巻さんの動機。こうやって次の世代へ伝統が受け継がれていく流れなのだろうが、実際、騎馬隊に入ってみての印象は……。
「いつも華やかで、キラキラしているところかなと思ったけど、地味で地道なことも多く、そのギャップに最初、驚きましたね」とちょっと笑いながら話す藤巻さん。
伝統ある制服をまとい、馬を操りながら交通安全などを啓発する〝輝かしい表舞台〟があるわけだが、その背景には鍛錬と苦労があるというわけだ。騎馬隊に入るまでは馬を扱う技術はもちろん、馬の知識もまったくなかったというから、彼女が努力を積み重ねたことは想像に難くない。
僕も取材先のアフガニスタン最前線で、馬に乗り5㎞ほど移動したことがあるが、馬から落とされる恐怖と乗りこなす大変さは身に染みている。馬を扱うことは、ホント、一朝一夕ではいかない。
先ほどの女性白バイ隊員はバイクが相手だが、こちらは馬が相手。同じ〝またがる職種〟でも生き物だから大変な部分がありそうだが……。
Photo/藤井元輔
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