マツダ、スバルはなぜ年次改良が早いのか??クルマ業界の謎に迫る

マツダ、スバルはなぜ年次改良が早いのか??クルマ業界の謎に迫る

 毎年1回、1年ごとに行う一部改良のことを年次改良と呼ばれている。いったい、年次改良はなぜ行われるのか?

 年次改良前に購入したオーナーはメーカーに文句を言わないのか?ほんとに地球人ってわからないことだらけだ。


 宇宙人が不思議に思うのはわかる。○(担)もスバル車は年次改良しているのはわかっていたものの、昨年のレヴォーグにはびっくらこいた。

 だって’14年6月に発売開始してから約10カ月後の’15年4月16日に年次改良を行ったからだ。GTグレードに試乗してみると足回りの印象が激変。GTグレードはKYB製ダンパーが装着されているがフリクションが最適化されて微少なストロークでもよく動き、路面の凸凹を乗り越えた時の振動が抑えられていて乗り心地がよくなっていたのだ。

 スバル以外で年次改良を行っているメーカー&車種は、レクサス全車、マツダ、日産のGT-R、フェアレディZ、ノート、エクストレイルとNMKVのデイズ&ルークスなどだが、それ以外のメーカーは年次改良という1年ごとに決まって改良を行うということではなく、適切な時期を判断して改良するという。

 CX-5、アテンザ、アクセラ、デミオ、CX-3と毎年改良を加えているマツダ。なかでもCX-3は、発売約10カ月後の昨年12月に一部改良を行った。この一部改良では、初期操舵のコントロール性がよくなり、アクセルレスポンスもダイレクトに反応、乗り心地まで改善されていたから、これまたビックリ。

 なぜこんなに早く改良するのか?年次改良はどのような考えで行っているのか?

まずはマツダ広報部に直撃!!

 編集部 マツダさんは年次改良を行っていますか?

 マツダ CX-5から始まる新世代商品以前は、導入してから1年ごとの改良を行ってきていませんでした。

 編集部 それがなぜ行うようになったのですか?

 マツダ デミオからアテンザまでのフルラインを一括で企画し、そのすべてがモデルチェンジを行った後に、次の世代をまた一括で企画するやり方をマツダでは「一括企画」と呼んでいます。

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発売10カ月後に一部改良。騒音を抑えるナチュラルサウンドスムーザーを標準装備。アクセルレスポンスや乗り心地など大幅に改善

 いっぽう、一括で企画したものを、ディメンションやコンセプトの異なるクルマにコストを上げずに作り分けていくやり方を「ものづくり革新」と呼んでいます。

 この両輪が回ることで、商品力を向上させることを目指しています。「一括企画」はクルマづくりの考え方や技術は横串を通して展開していますので、技術的なアップデートはその世代のすべての車種に展開できるようになります。

 また「ものづくり革新」は新たな工作機械を投入したり、ラインを作り変えたりしなくても作り分けができるためスピーディに技術を他車種に展開することが可能です。

 この強みを活かし、商品を出しっぱなしにするのではなく、技術の進歩をスピーディに商品に反映し、個別車種の価値を上げ続けていくことでお客様メリットを最大化しようというのが新世代商品における商品改良の考え方です。

 当社の商品改良は1年に1度決まった時期に実施するということではなく、技術のアップデートが可能な最適タイミングで改良をしていくという方針です。

 続いて、スバル広報部に、年次改良を行う理由をズバリ聞いてみた。

スバル広報部に取材してみると…

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GT系のKYBダンパーの設定が変更され、これまでの固めだった乗り心地が改善された。改良前のオーナーは悔しいに違いない

 編集部 年次改良を行うことを前提に開発しているのですか?

 スバル モデルライフを通じて、随時改良を施していくことは通例となっています。モデルイヤーごとに開発目標を定めていますが、しっかり開発をやりきってから発売しています。よって、目標未達だが次年度モデルで対応、という考えは持っていません。

 編集部 新車がデビューした後、年次改良に向けて、テストやユーザーの反応など、どのような体制を敷いていますか?

 スバル 商品企画サイドではセールスヒアリングやユーザー調査(アンケート/インタビュー)を通じて、市場のニーズを把握。

 技術部門では、技術動向(トレンドや要素技術の進化)の把握。両者を突き合わせ、さらには社内のリソースなども考慮しながら、実際に年次改良として取り上げるアイテムを決めていきます。

 編集部 年次改良について、スバルユーザーからのクレームや文句などはないでしょうか?

スバル 基本的には、常に最良を追求するメーカーであると、ポジティブに受け取られていると思っています。改良前モデルのユーザーから、年次改良は気になる(うらやましい)という声もありますが、「それでも、自分のクルマは気に入っている」、「自分のクルマが改良され評判が上がるならよい」と言っていただける方も多いように思います。

 また年次改良時期が近くなってきたら、メーカーから販売店へ、できるだけ早めの情報展開をすることで、納車を待っている間に新型が発売された、という事態を避けるようにしています。

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インプレッサスポーツ&G4の場合、2年後、3年後に大がかりな変更を受けた

 ということで最後は実際にスバルユーザーたちはどう思っているのか、スバリスト代表としてマリオ高野氏はどう思っているのか聞いてみた。

 高野氏〉「スバル車はいつ買うのが正解か?」これはスバリストにとって重要なテーマです。スバル車は昔から年次改良の幅が大きく、1年違いでサスペンションの味付けがガラッと変わることもあり、その傾向は近年ますます顕著に。

 それゆえ初期型を買うことを躊躇する人が少なくないのですが、いっぽうで初期型は性能に余裕をもたせられることもあるのが悩ましいところ。

 例えば、私が今も所有する初代WRXは初期型のみエンジンブロックが高剛性のクローズドデッキで耐久性が高く、初期型を買って正解だったと思っていますが、そういうケースもあるのです。

 理想は、初期のA型を買って3~4年後の熟成を極めたD型に乗り換えること。スバル車の場合、WRX系は下取りの相場が驚くほど高いので、WRX系なら案外現実的なプランといえるでしょう。


 ということで、年次改良は、買ったオーナーからすれば、悲喜こもごもだが、ちゃんと改良することを、購入しようとしているオーナーに前もって早くから伝え、知らずに買う人をなくせば、とてもいいことじゃないか、というのが結論です。なにも改良されないほったらかしのクルマを買う気にはなりませんからね。

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