クルマにまつわるさまざまな不思議を追う本企画。 今回宇宙人が依頼してきたのは、あるショールームの行列の先にあった、 新型EVによってもたらされた疑問だ。
地球を見ていて気になった……。別に新しいiPhoneが発売される日でもないのに、なぜか東京・青山のとあるショールームに、長〜い行列ができているではないか。
こと、日本人は話題のものがあると、行列を作りたがる民族ではあるが、行列の先には新しいスイーツがあるわけでもなさそうだ……。
気になって調べてみると、なんとその行列はクルマを予約するための行列だというではないか!
しかも、EVなのに発売から3日間で、全世界での予約件数が27万台を超えているというから、さらに驚いた! (1週間で32万5000台に到達した)
その宇宙人が驚いたクルマの正体は、アメリカのシリコンバレーに拠点を構えるベンチャー企業、テスラモーターズ(以下テスラ)の新型車「モデル3」だった。
テスラといえば、2008年に発売された最初の車両「ロードスター」が約1000万円。
次に発売された「モデルS」も、エントリーグレードでも約800万円からと、高級路線をひた走っていた。
そのテスラが満を持して発売したのが、今までのイメージを覆す低価格のEV「モデル3」だ。
いや、このモデルでも約400万円もするのだから、低価格と言えるかは微妙だが……、前よりは安いのだ。
そんな好調なモデル3を横目に見つつ、国内に目を向けるとEVの普及は思うように進んでいないのが現状だ。
国産メーカーでEVを発売しているのは、日産と三菱自動車だけ。しかし販売状況からいえば、日産の孤軍奮闘といった状況となっている。
EVでリーダーになることを打ち出している日産の主力EV「リーフ」は、発売から5年で累計20万台以上を達成したものの、その販売ペースは当初の計画からすると、決して順調とは言い難い。
そこで宇宙人は思ったのだ、「日本のEVには何が足りないのか?」と。
ゴーン社長は、先日行われたいわき工場見学時の会見で、今回のテスラの件を質問した報道陣に対し、「競争は歓迎する。EVがいい競争をすることは盛り上がることだ。これは我々にとっても朗報」と答えた。が、テスラが売れたからといって、日産のEVが売れるわけではない。
そこで、日産はEV販売台数が伸びない原因をどのように考えているのか、メーカーとしての考えを聞いてみた。
メーカーとしてどう考えているのか?
2012年にマーケティングチーフだったサイモン・スプロール氏が、LAショーでリーフの販売台数減速の原因は、「クルマのデザインではなく、充電スタンドなどインフラ設備の問題だ」と答えていたが、そのように考えているのだろうか?
「日産自動車は、世界で初めて量販型EVを発売し、今ではEVのリーダーとなっています。しかし、さらなる普及に向けて、まだまだ課題があることは認識しております。充電インフラのさらなる普及もそのひとつです。
ただ現在日本においては、2万1000基以上の充電インフラが設置されており、インフラの不足は解消されつつあります」
日産としては、バッテリーを含めEVのコスト削減や政府のインセンティブが、ゼロエミッション社会の実現の加速には必要だと考えているそうだ。
今回のテスラの一件を受けて、今後のEV戦略に変化はあるのか? との質問もしたが、現在のところ「特に変更なし」との回答だった。
テスラとリーフその違いとは?
テスラの歴代モデル
0-100㎞/h加速が3秒という動力性能を誇るモデルS。ファルコンウィングという従来のSUVにはないドアを備えたモデルXなど、個性的なクルマがラインアップされている
では、なぜテスラはこんなにも爆発的に受注が伸びたのか? どんな層がメインで購入しているか? 自身もリーフに乗り、EV事情に詳しい自動車評論家国沢光宏氏に聞いてみた。
「ここまで爆発的に売れた要因は、今までのモデルに比べて安かったという点が大きいでしょう。それにデザインもウケた。テスラを購入する人は、今までと違う新しい物が大好きで、テスラをコンピュータや家電製品と同じと捉えている人が多いと思います。iPhoneを購入するのと同じ感覚なんですよ」
なるほど、だから行列を作ってクルマを買おうとしていたわけか。妙に納得してしまう……。
「あとテスラを購入するのは、国産車を買う層とはまったく違って、アウディを購入する客層と近いんです。お金があって、人と違ったものを買いたいという人が多いという点でね」
国沢氏によると、モデル3の航続距離345kmが公表されているとおりであるならば、車体価格とランニングコストを考えれば、シビックと比べても遜色ないレベルであるとのことで、ガソリン車に対しても充分な競争力を持っているそうだ。
ではテスラと比べて、日本のEV、もとい日産のリーフが伸び悩んでいる原因は何だと考えられるだろうか?
「根本的な問題として、あのデザインがかっこ悪い。これを改善しないと、販売台数を伸ばすことは、かなり厳しいでしょう。それにテスラは電化製品として、ユーザーを惹きつけるストーリーがあるが、リーフにはそれがないという、2点が大きいですね」
なかなか厳しい意見ではあるが、リーフはモデルが長く、そろそろテコ入れが必要な時期にきている。この課題は、次期型で改善されることを期待したいものだ!
商品に訴求力があれば、EVを買い求めようとする人が多くいることを、テスラが証明してくれたのだから。
重要なのはやはりデザイン。そして商品に目を惹きつける個性が必要だ
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