海外では、おっと思わせてくれる、カッコいいクルマがたくさん走っている。
海外メーカー製だけではなく、トヨタやニッサン、ホンダなどが海外市場で販売しているクルマも、国内で見かけるクルマよりなぜかカッコよく見える。
「このまま国内市場に持ってくればいいじゃないか! 」という議論はしょっちゅうされている。筆者もそう思う一人だ。
では、海外仕様車を日本市場に売り出すにはどんな手間がかかるのだろうか。欧州で販売されているマイクラを例題としてシミュレーションしてみようと思う。
文:吉川賢一、写真:日産
自動車メーカーがまず初めにやることとは?
海外と日本では、クルマに求める性能がだいぶ異なる。マイクラが販売されているのは欧州地域。
欧州と聞くと、多くの方はドイツのアウトバーンのような道路をイメージするかもしれないが、街から街を繋ぐ片側一車線の田舎道を対向車を交わしながら、クルマを100km/h近い速度でかっ飛ばして移動するようなシーンのほうが実は多い。
しかも、中央分離帯はなく白線だけなので、大型トラックが遠慮なく前からやってくる。そのため、欧州の方は、クルマへは走りやすさや燃費、そして壊れにくさといった経済性を求める。
いっぽう、日本では、世界一とも呼ばれる程に道路環境が整えられており、クルマには走行性能よりも、乗り心地やノイズといった快適性、安全性、そして見栄えを重視する。
安全至上主義でもあるため、それほど車に乗らないにもかかわらず、セーフティオプションを多数つけ、エアロパーツなどの装飾品をたくさん付けたりもする。
このように、各国で要望が違うのに、同じクルマをそのまま出して売れるとは考えにくい。
例えばマイクラを日本で売るとして、自動車メーカーがまずすることは、日本人に向けてコンセプトを見つめ直すことなのだ。
開発部隊が行う設計変更とは?
海外仕様と、日本仕様の大きな違いと言えば、ハンドルの左右位置を思い浮かべるだろう。
左ハンドル仕様を右ハンドル仕様にする場合を例にあげると、
- 1、ハンドル位置の変更に伴ってインテリアデザインを反転させたダッシュボードの作成
- 2、ステアリングコラムを支えるメンバー変更
- 3、ペダル類のレイアウト変更
- 4、ステアリングラックの変更
- 5、ブレーキブースターの位置変更
- 6、エンジンコンポーネント内部のレイアウト
- 7、細かい部分だと右ハンドル様にしたハーネスの変更など
これらの変更には、作り分けが必要な部品と共用できる部品がある。当然作り分けが必要な部品は、新たに設計する必要がでてくる。
ひとつでも部品のレイアウトをミスすると、エンジンコンポーネント内部に収めることができなくなる。
しかしながら、設計エンジニアは、こうした変更作業は案外得意だ。自分が担当する部品については、右ハンドルに直す際の変更箇所を詳細に述べよと言われれば、即座に答えることができる。
設計エンジニアたるもの、部品番号まで暗記していて当然であり、言えないような人は一人前には程遠い。
各自動車メーカーには、あらゆる部品の一流設計エンジニアが数十人といて、一台のクルマを担当している。そのため、これらの設計変更はそれほど難しい作業ではない。
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