2019年9月24日、日産は2020年モデルとなる改良型「パトロール」を、アラブ首長国連邦のドバイで初公開。日本では馴染みの薄い同車ながら、2007年まで日本でも販売されていた日産の名門SUV「サファリ」と同一のモデルだ。
新型パトロールは、全長5メートル越え、全幅は驚異の2メートル弱という巨大なSUVだが、日産が「中東でパトロールの好調な販売が続いていることで、(北米仕様の姉妹車アルマーダと合わせて)このプラットフォームの販売はグローバルで79%増加し80千台となりました」と、2018年2月付リリースで発表しているように、実は海外での販売は好調。
なぜ、日本では生産終了となった不人気モデルが、海外では未だに健在で、人気を集めているのか? 元日産エンジニアでもある吉川賢一が解説する。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA、編集部
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名門サファリの後継! 新型パトロールとは?
「パトロール」は、かつて日本国内で「サファリ」として販売されていた、日産の本格大型SUVである。最大のライバルは、トヨタ「ランドクルーザー」だ。
高いオフロード性能や耐久性能が追求された現行パトロールは2010年に発表されたモデル。8人乗りの5ドアSUV、全長5170×全幅1995×全高1940mm、ホイールベース3075mm、車両重量2780kg、という見事なボディサイズを誇っている。
そのパトロールもデビューから9年が経ち、大幅改良を受けて、今回、2020年型モデルへと進化をした。
エンジンは引きつづき、5.6L・V型8気筒ガソリンエンジンと、4L・V型6気筒ガソリンエンジンの2種類が用意された。
また、“自慢の機構”である、「HBMC」(Hydraulic Body Motion Control)も搭載。
これにより、4輪独立サスペンションの油圧シリンダーを、2系統の配管で接続することで、路面からの衝撃を柔らかく吸収するとともに、コーナー走行時は車両のロールを低減し、安定した走行を実現する。
この装置によって、オフロード走破性を向上させることができ、フルサイズSUV向けの荷重コントロール技術として、評価も高い。
エクステリアデザインは、フロントのVモーショングリルを最新型へと更新し、より強調されたデザインとなった。
また、昨今流行であった「つり目」型のヘッドライトから脱却し、新しいブーメラン型のLEDヘッドライトへと進化したことで、シンプルながら迫力のあるフェイスとなった。
リアは、テールランプをブーメラン型に変更し、さらにはシーケンシャルターンインジケーターが採用された。
インテリアには、インフィニティQ50で採用しているようなデュアルディスプレイを導入。シート素材には、ダイヤモンドステッチキルティングレザーを新採用しており、ステアリングホイールも新デザインとなっている。
日産の名門SUVが海外で生き残っている理由
狭い日本では、できれば運転したくない程の巨大SUVだが、UAEをはじめ、中東・アフリカ地域では、車高が高いSUVタイプの大型車が大変好まれている。
なかでも日本車は、人気が非常に高く、トヨタ ランドクルーザー、レクサス LX570、日産パトロールといったモデルがよく売れている。
こうした車を買うのは、富裕層が中心だ。実用目的はもちろんのこと、なんと、砂漠地帯をこの巨大SUVで走り回る、という「遊び」にも使われているらしい。
筆者の知人も、砂丘の山をどこまで登ることができるかを競走したり、小高い砂丘を使って車でジャンプをしたりという、とても日本では考えられないような使い方をされているのを、実際に現地で見たという。
パトロールの開発にあたっては、こうしたハードな使われ方を想定し、例えば、「3トンの車が1mの高さのジャンプをしても、サスペンションやステアリングが壊れないこと」といったような、普通乗用車ではあり得ない設計要件が盛り込まれている。
もちろん、設計要件を厳しくするだけでなく、現地での走行テストと対策を繰り返すことで、驚異的な耐久性を実現しているのだ。
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