最近感じる「危機」と、若き起業家へ「肝に銘じて」と願うこと
この「スタートアップ企業が成功するまで育つ場所の条件」は、吉野氏が数年前から語っている持論だそうだが、実は最近「危機感」を持っているという。以下、合わせてお届けします。

「5年くらい前、私、京都府の西脇知事に、上記のとおり、スタートアップ企業として次々に成功させている場所は世界中でもシリコンバレーくらいですよ、日本でいうと京都ですよ、だから焦る必要はありません、そのうち出てきますよ、とお伝えしました。
しかしですね、たとえば”タンパク質の立体構造を予測するAI開発”で2024年のノーベル化学賞を受賞したデミス・ハサビスCEOと研究チームのジョン・ジャンパー氏が務めるDeepMind(ディープマインド)社は、英国ロンドンに本社があります。
ディープマインド社は創業2010年です。
2014年にGoogleの親会社である「アルファベット」の傘下となって、ここらへんはさすがGoogleといえるんですが、それは置いておいて、2015年には囲碁の世界で「AlphaGo」を開発し、名人を破って話題になりました。
この頃はまだ囲碁や将棋、つまり遊戯の世界で話題になっていたわけですが、それが10年でノーベル化学賞を獲るまでにに成長したわけです。
それから2023年の生理学・医学賞は、メッセンジャーRNA(mRNA)を使った新型コロナウイルスワクチンの開発に道を開いた米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ客員教授とドリュー・ワイスマン教授に贈られています。
この研究の基礎を支えたのは、ドイツのバイオ系ベンチャー企業であるビオンテック社です。創業は2008年。メッセンジャーなんてモノにならんよとバカにされながら研究を続けて、結果的にパンデミックで一気に世界的な知名度を得ることになりました。
何が言いたいかと申しますと、今後もベンチャー企業発、アントレプレナー(起業家)発のノーベル賞受賞は続くでしょう、イギリス、ドイツからはもう出てきました、そう考えると日本だけちょっと取り残されていないか、という危機感があります。
そのうち出てきますよ、とのんびり構えていたわけですが、世界情勢を見ると、もうすこし早くやってもらったほうがいいかもしれません、というのが本日の私の話したかったことです」
上記の話を聞いていた西脇隆俊・京都府知事は「たしかに…」と学びを得つつ、「のんびりしていわけではなく頑張ってきたつもりなんですが、さらにスピードアップが必要だということがよくわかりました」と応じた。
成長企業が生まれる土壌、背景、条件に京都がよく合っていることは間違いなく、また何かイベントを開けば世界中から人が集まってくれる魅力が京都にはある。
そのための「場」をどう用意できるかが、今後の鍵となるだろう。
イベントの最後に「若い起業家に向けて何かアドバイスを」と発言を求められた吉野氏が、これまた大変含蓄のあることを仰っていたので、以下に紹介して本稿を閉じたい。
「まず、新しいことをやろうとした時は、やっぱり夢と遊び心がないとなかなか前へ進まないと思います。どんな壁にぶち当たっても、その夢と遊び心だけは失わないようにお願いしたい。これがひとつ。
それともうひとつは、皆さんがこれから新しいことをやろうとする時、必ず既得権益者が邪魔しますよっていうことを知っておいていただきたい。
誰かが新しいことをやろうとすると、そんなことをやってもらったら困るという人が、いっぱい出てきます。絶対邪魔しに来ますので、ええ、必ず来ますよと、ちゃんとそれに備えておられますか、ということを肝に銘じて進めていただきたいなと思っております。はい」
さすがとしか言いようがない。
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