1000万円超の高級車なのに、NSXやGT-Rにはなぜ自動ブレーキが付かないのか?

クルマにまつわるさまざまな不思議を追う本企画。今回、調査したのは「NSXやGT-Rは1000万円超の高級車なのに、なぜ自動ブレーキが付かないのか?」だ。

ベストカー2017年1月10日号


NSXは背の低さゆえに採用できなかった!?

自動ブレーキと呼ばれる衝突被害軽減ブレーキは、今やクルマ選びのとても大切な要素になっていて、軽自動車にも用意されている装備。ところが、なぜか1000万円を超えるような高級スポーツカーに装備されてないという現実がある。しかも、NSXは今年登場したニューモデルだし、GT-Rだって2017年モデルにマイナーチェンジしたばかりと、どちらも最先端の高級車。いっぽうで、輸入スポーツカーのポルシェには採用されている。最新の自動ブレーキが標準装備されたっておかしくないのでは? とも思ってしまう。

というわけで、この疑問を調べるべく、まずはGT-Rについて日産自動車の広報に聞いてみると……。

「自動ブレーキはスポーツカーにも必要な技術だと認識はしていますが、GT-Rというクルマの特性に鑑みて、今回の17イヤーモデルでの採用は見送っています。今後のGT-Rに採用するかどうかは未定ですが、もしアップグレードするタイミングがあれば検討していきます」。

GT-Rに自動ブレーキを搭載することは今も技術的には可能だという。

では、NSXのほうの理由はどうなのか? ホンダ広報に聞いた回答は次のとおり。

「スーパースポーツとして必要な空力やデザインを追求した結果、実現した超低全高のボディにカメラやセンサーを適切な位置に搭載するにはさまざまな技術課題があるため、今回は搭載を見送りました」。

NSXの場合は、全高が低いため自動ブレーキの採用が技術的に難しいという。GT-Rとはまた違った理由だ。

以上は、それぞれのメーカーの回答だが、もう少し詳しい話を、自動ブレーキなどの先進運転システムの取材をしている自動車評論家の西村直人氏に聞いてみた。

まず、NSXのように車高が低いと自動ブレーキ採用はそんなに難しいものなのだろうか?

「わかりやすく答えるとすれば“難しい”ですね。その理由はセンサーの搭載位置にあります。おもに衝突被害軽減ブレーキなどで使用するミリ波レーダーセンサーの場合、搭載位置が低くなることでミリ波の正しい反射が期待できなかったり、(例/前走車のボディ下部の曲率が強い、反射面積が極端に狭いなど)、ミリ波が前走車のトレッド間を完全に通過してしまったりする場合があり、認識能力が不安定になることがあります。また、路面がうねっていたりすると、そこを通過する度にミリ波レーダーが遮られてしまうという状況も考えられます。

もっとも、スカイラインの前方衝突予測警報のようにトレッド間の抜けを利用して前走車の前を走るクルマの動きを察知し、警報ブザーやディスプレイ表示で危険を教えてくれるものもあります。よって、全高の低い車両に向けた専用品の開発が解決策のひとつになると考えています」。

技術的に難しいけれど、充分に実現は可能だという。では高級スポーツカーに自動ブレーキが装備されない理由はなんなのだろうか?

「衝突被害軽減ブレーキはセンサー設置場所や制御アルゴリズムなど勘案すべき項目が多く、さらに車種ごとの“厳密な設定”が必要です。なかでも繊細なのがセンサー。現在、市販車に搭載されているミリ波レーダーセンサーは、ミリ波の照射扇角度やセンサー感度などのスペックを販売台数の多い車種カテゴリーに合わせ、多くの車種への取り付けが容易になるように汎用性を高めています。周波数にしても、その目的だけでなく国や地域のレギュレーションに合致させています。

いっぽう、NSXのように全高の低い車種は世界的に見ても販売台数がかぎられるので、こうした厳密な設定を行ってまで搭載する意味はあるのか……、となるのです」。

メーカーとしては、スポーツカーのような需要がそれほど多くないジャンルに新たな開発費をかけるのが難しいという事情があるようだ。

国産スポーツは2018年頃から採用されるか!?

では、将来的には採用されるものなのだろうか?

「日本の『予防安全性能アセスメント』における衝突被害軽減ブレーキでは、歩行者対応型の試験が2016年度から始まっています。その意味で近い将来、開発費用の上乗せがしやすい高額モデルへの採用が始まるでしょう。

ただし、いわゆるミリ波+ステレオカメラのような“フルスペック版”の登場は少し遅れるかもしれません。

現在、すでにメルセデスやアウディ、BMWやポルシェなどの欧州スポーツモデルは衝突被害軽減ブレーキをはじめとしたADASを装備していますが、全高1290mmのスポーツカーであるベンツAMG GT(GT-Rは1370mmでNSXは1215mm)の衝突被害軽減ブレーキはC/E/Sクラスなどのフルスペック版ではなく、最大減速度がフル制動の約60%となる機能に留まっています」。

西村氏は、日本の高級スポーツカーでも2018年くらいから搭載車種が現われると考えているようだ。

【主なスポーツカーの自動ブレーキ設定の有無】

車種(車体の全高)        有無(検知方式)

日産GT-R(1370mm)        なし

ホンダNSX(121mm)          なし

トヨタ86(1320mm)         なし

マツダロードスター(1235mm)    なし

スバルWRX STI(1475mm)     なし

ベンツAMG GT(1290mm)      あり(単眼カメラ)

ポルシェ718ボクスター(1281mm) あり(ミリ波レーダー)

アウディR8 V10(1240mm)     なし

BMW i8(1300mm)        あり(単眼カメラ)

フェラーリ488GTB(1213mm)   なし

 

現状、日本のスポーツカーに自動ブレーキが装備されないのは、車高が低い車種は技術的に難しいので専用に開発する必要があり、販売台数の多くないスポーツカーにそれだけのコストをかけるのが難しいというのが一番の理由のようだ。自動車メーカーも企業なので利益が出ないことはできないのはある意味当然。

とはいえ、自動ブレーキは一定の被害軽減効果が認められているだけに、早い時期の採用を実現してほしい。


2台前の車両を検知できるスカイラインの自動ブレーキ。このような技術が全高の低いスポーツカーの緊急自動ブレーキの技術に応用できる可能性があるという

 

 

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