日産2025上期決算発表 営業利益▲277億円でも反転の芽は見えた……か!? 固定費800億円削減と新型車攻勢とリストラの「痛み」

日産の通期見通しと、重く苦しいが進めるべきリストラ案

 日産自動車の2025年度通期(2026年3月期決算)見通しは、売上高約11.7兆円。関税影響を除けば、営業損益は損益均衡(ブレークイーブン)という保守的なスタンスだ。

 上期時点で為替の逆風や規制対応コストが重い一方、下期は新型車による寄与と原価改善の積み上げが進む。

 編集部の見立てによるとポイントは三点。第一に、北米での値引き規律(インセンティブ)と在庫コントロールが機能すれば、営業段階の上振れ余地はある。あとは米国関税と為替、周辺国での競争激化だが、これはなんというか……コントロール不能な要素が多すぎるので順風を祈るしかない。

 第二に、固定費800億円超の実弾削減は評価できるが、最終的なキャッシュ創出の質は運転資本の巻き戻し(販社在庫と売掛金の圧縮)にかかる。また、社員削減と工場閉鎖を粛々と進めることになるが、そのマイナス影響をどこまで吸収できるのか。

 第三に、提携は“領域別・実利優先”でいい具合に進んでいると評価できる。Wayve型のAIドライバー、Huawei型のスマートコックピットのように、体験価値を引き上げる技術が着々と積み上がっているように見える(早く日本市場で実装してほしい)。ホンダとの技術部門や調達部門での協業の成果報告、待ってます。

 こうして状況を整理すると日産は上向きに差し掛かっているといえるが、もちろんリスクも直視する必要がある。

 米国の環境規制対応コストとEV市況、中国NEVの価格競争、為替の円高方向、欧州需要の弱さ――いずれも単体で数百億円規模のPLインパクトになりうる。会社側も供給面の不確実性(素材・半導体など)に対してプレースホルダー的に影響額を織り込む慎重姿勢を崩していない。だからこそ「販価の粘り×原価低減×商品投入」の三点セットを足元で崩さないことが肝心だ。

 なにより再建策「Re:Nissan」の中心的施策といってもいいリストラ案、「グローバル従業員のうち15%にあたる2万人削減」と「(子会社含む)17工場のうち7工場閉鎖」は、2024年度~2027年度にかけて実施され、現時点で進んではいるものの本格的に「痛み」と向き合うのはこれからと考えられる。

 この「痛み」を乗り越えるためには、実直なクルマづくりとユーザーからの信頼、平たくいえば「いいな、と思えるクルマを揃えること」をコツコツと続けるしかない。

 日本市場でいえばリーフ、ルークス、パトロール、エルグランド。近いうちにキックス、スカイライン、そしてGT-Rの復活。ノートやセレナ、エクストレイルといった販売の大黒柱へのテコ入れも欠かせない。課題は山積している。市場全体が踊り場に差し掛かっているBEV商品戦略の見直しも必要だろう。具体的には一部HVへの移行を含むHV商品群の再強化だ。出来るのか、いまの日産で。やってもらうしかない。

JMS2025で披露された新型エルグランド。日本市場で2026年度内に正式発売となる。搭載される「第3世代e-POWER」とともに、日産復活のカギを握るモデルとなる(NISMO仕様、出してほしいぞ)
JMS2025で披露された新型エルグランド。日本市場で2026年度内に正式発売となる。搭載される「第3世代e-POWER」とともに、日産復活のカギを握るモデルとなる(NISMO仕様、出してほしいぞ)

 また報道で大きな話題となった、横浜グローバル本社の売却に関しては、今回の決算会見でエスピノーサCEO自ら売却の重要性と意義を語った。

「このグローバル本社については、セールス&リースバック(資産として他社へ売却するが引き続き同じ場所で賃貸料を支払って業務を続けること)を実施します。リース期間は20年の契約です。これにより日産は引き続き、ここ横浜を拠点とし、地域社会にコミットしていきます。従業員や事業運営への影響はございません。売却益の一部はAI主導のシステム構築やデジタル化を推進し、改革の取り組みに必要な投資を賄う一方で、イノベーションと会社の成長に向けた投資も確保します」

 と語っている。

 ここでエスピノーサ体制の“コミュニケーション戦略”についても触れておきたい。会見では「業績は回復しつつある。あとはメディアの【日産】に対するイメージがポイント」という趣旨のメッセージが語られた。

(会見の質疑応答では、記者から「日産の暗黒時代は終わったということか? それともまだ続くのか?」という質問が飛び、エスピノーサCEOは「わたしにとって大事なのは、お客様に日産の実際の能力を見てもらうことです。暗黒時代とはどういう意味でしょうか? 大事なのはお客様のイメージを変えること、お客様から日産はすばらしい会社だと言っていただくことです」と返答している)

 実際、昨年度決算からここ最近まで、日本における日産自動車への危機的報道は「強風」だった。「日産は本当の本当につぶれるんじゃないか」という報道が多数あり、SNSで拍車がかかった。しかし今期も半ばを回り、潮目が変わりつつある。エスピノーサCEOはそうした風向きに注意を払い、丁寧に対応しているように見える。

 JMS2025以降はSNS上の会話量が大きく伸び、ポジティブ比率も改善している。ネガティブな報道環境が集客を冷やした局面を乗り越え、ユーザー接点で“体験価値”を積み上げること、ここに広報と商品が一体となった“第2段階”の核心がある。

決算会見には多くのメディアがつめかけ、多くの報道があったが、「商品(クルマ)」について詳細に語る意見は少ない。めげずにいいクルマを出してください! クルマの話ばっかりし続けますので!!
決算会見には多くのメディアがつめかけ、多くの報道があったが、「商品(クルマ)」について詳細に語る意見は少ない。めげずにいいクルマを出してください! クルマの話ばっかりし続けますので!!

 本記事の最後に、エスピノーサCEOが会見の最後に語った言葉を引用しておく。

「上期の結果は、当社が複数の課題に直面していることを物語っていますが、同時に日産が着実に回復に向かう道のりを進んでいることを示しています。当社は大きく前進しており、まだやるべきことはあるものの、将来の発展に向けた土台作りはできています。

 利益を回復するために断固たるコスト削減対策を実施しながら、今は次の段階に向けて新型車重点市場、そしてブレイクスルーとなる技術について、優先的に取り組みを加速化していきます。

 下期も複数の課題に直面することが予想されますが、ぶれない活動と規律正しい取り組みを持ってすれば、よりよい結果を出せると信じております。

 日産は成長と価値創造を実現するために必要な戦略、商品群、そしてチームが揃っております。日産は力を合わせてこれから進む道を切り開き、自信を持ってチャンスを掴み、イノベーションを成し遂げてまいります」

 復活を待っているぞ日産。

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