レーシングカーのデザインだけを追求した1冊
次はグラフィック系の1冊を紹介しよう。『WHEN SEX WAS SAFE』。書名からして興味をそそる本書、ひらくと目に飛び込んでくるのが美しいグラフィックの数々だ。
写真なのか、絵画なのか、それともCGなのか、一見すると判別できない。とにかく美しく刺激的。
画像にもあるが「マクラーレンM23」が走っている下のシーン、これ実は富士スピードウェイの最終コーナー付近で、1976年の日本でのグランプリという記述もある。
当然ながらその当時ここまで高画質のカメラがあるわけもなく、おそらくこの作品はCGと考えられる。しかしこの迫力と美しさ。見ているだけで当時の情景が頭に浮かぶ。
「これは言葉があまり必要ない1冊ですね。大人の絵本とでも言うべきでしょうか。クルマ好きが自身の世界を広める1冊になると思います。
1940年代のレースシーンをドローンの空撮視点で描いていたり、上から見るとこうだったのかな、という空想力も鍛えられます」
チューナーが主題の写真集と、あの名カメラマンの1冊
写真集というと日本ではアイドルの写真集が人気だが、クルマの写真集にも名著が存在する。今回紹介するのは『RWB -LIFE AFTER BIRTH-』と『小川義文 自動車』の2冊。
■この本の存在に価値がある
まずは『RWB -LIFE AFTER BIRTH-』の紹介から。RWB(ラフヴェルト)は日本発のポルシェチューニングメーカーだ。
代表の中井啓氏の独創性あふれるエアロパーツ、そしてその確実な仕事が日本のみならず、アメリカや香港など海外でも大きな反響を呼んでいる。
必ず中井氏本人がクルマを仕上げるというスタンスをとっていて、それはたとえ海外からのオーダーでも変わらない。
この写真集はオーストラリアのオーナーが製作を依頼した際に、中井氏が組み上げる1台の930をベース車両の段階から追っている。
マスキングテープの貼り方、フェンダーを切り抜く姿など、意外性のあるシーンすらも「絵」に仕上げている。
「この本は“存在する”ということに価値があります。RWBやポルシェが好きとか嫌いではなくて、たった1台のクルマでよくこんなに分厚い写真集にしたなと。
そこに感心してしまいます。世界930冊限定ですが、きっと赤字覚悟かと思います。それでも圧倒的な写真の質で、なんとなく買ってしまう。やりたいことやった、そんな1冊ですね」
■名カメラマンが独自の世界観でクルマを切り取る
小川義文氏といえば日本を代表する自動車写真家であり、その活動は国内に留まらず海外にも及ぶ。
ポルシェをはじめ多くの名車たちが、小川氏のファインダーを通して現実世界から切り取られる。ひと目で「あのクルマだ」とすぐわかる写真ばかりだが、その着目点は独創的だ。
清野氏と担当が見入っている下の画像は、イギリスで撮影されたスカイラインGT-Rの1枚。当然ながらこのページに文字はない。しかしイギリスだとわかるヒントがその構図には何点もあった。その構図作りに思わず言葉を失ってしまう。
「小川さんの原稿も載っていますが、やはり写真の説得力が抜群です。言葉が要らないんですよね。
見る人によって見え方も変わります。今回は本を作る人、本を売る人で見え方が異なりました。それこそが写真集の醍醐味。言葉は多くは要りません」
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