2026年1月22日、三菱自動車は都内で会見を開き、加藤隆雄社長(CEO)が今年6月の株主総会後に取締役会長へ就任することと、同社執行役員の岸浦恵介氏が次期社長兼COOとして執行の現場を率いる新体制を発表した。以下、会見でのコメントと質疑応答の要旨をお伝えします。
文・写真:ベストカーWeb編集部(アイキャッチ写真左が加藤隆雄社長、右が次期社長に内定した岸浦恵介氏)
「AI・SDVの時代」だから社長も新しい視点へ
三菱自動車の現社長である加藤隆雄氏は、後年振り返ると「名指揮官」と称されるだろう采配ぶりを見せた。2019年6月に取締役代表執行役CEOへ就任し、2021年4月から代表執行役社長兼最高経営責任者を務め、日産とのアライアンス強化やASEAN事業の拡大、PHEV路線の特化、なにより「三菱らしさ」を前に押し出す商品戦略で成功を収めてきた。その加藤氏が今年6月に会長へ昇進し、現在執行役員を務める岸浦恵介氏が新社長兼COOに就任する。
「リーダー交代」というわけではなく、二人で課題にあたる、という理解が正しそう。
加藤氏が社長交代(自身の会長就任&新社長登用)の理由として挙げたのは、近年の自動車界におけるAIの進化拡大やSDV(ソフトウェア定義車両)などデータを駆使した新技術が急速に進む現実だった。社内強化や商品・サービスの変革に新技術を取り入れる必要がある一方で、顧客も社員も世代交代が進む。だからこそ「社長ポジションも若返りが必要」と語った。
この4月から社長に就く岸浦氏は、就任にあたり「心がけたいこと」を3点に整理した。
- 誠実を旨とする
- 経営判断・実行のさらなるスピードアップ
- 世界中の三菱自動車社員・ビジネスパートナーとともに挑戦してゆく
まっすぐで分かりやすい内容といえる。
さらに岸浦氏は、自身のキャリアにも触れた。入社以来32年、管理部門から始まり、営業、アフターセールス、経営企画、海外駐在など幅広く経験。海外関係の業務は約10年、約40カ国を飛び回ったという。海外で心に残った言葉としては、販売店や顧客からの
・日本品質(ジャパニーズクオリティ)への信頼
・ここ数年の、三菱らしいクルマを次々出してくれてありがとう、という感謝
このふたつの背景には加藤氏のリーダーシップがあったとも語っている。
そして会見終盤、質疑応答に移った際、記者から「岸浦さんの好きなクルマと、どんなところが好きかを教えてください」という質問が飛んだ。
岸浦氏いわく、「学生時代、最初に買ったクルマがランサーターボでした」というわりと衝撃の発言が飛び出した。岸浦氏は1993年4月三菱自動車入社の56歳。約35年前の話だとしても、ランタボ購入はそこそこ気合いのいる選択だったはず。
「そういう経緯もあって、ランサーというクルマには思い入れがあります。好きなところ…ですが、ゴツいところ、今の言い方をするならタフなクルマですよね。そういうタフさが、自分の中の三菱自動車らしさだと思っています」
とのこと。これは……ベストカーとしてはどうしても「ランサーエボリューション復活のフラグが立ったか!???」と期待してしまう。
好きな言葉は「気合と根性」—日本拳法で鍛えた“最後の一押し”
もうひとつ、会見で岸浦氏の個性が出たのが「気合と根性」エピソード。以前のインタビューで「好きな言葉は?」と聞かれ、岸浦氏は「気合と根性です」と答えた過去を振り返りつつ、まず大前提として「論理的に考え、論理的にチャレンジする」としたうえで、それでもうまくいかない局面の最後に必要なのが「気合と根性」だと語った。
背景にあるのは、学生時代に取り組んだ日本拳法。体力が尽きかけても「バテるな」と言われるようなタフな競技で鍛えられた経験が、仕事の踏ん張りにもつながったという。
加藤氏も岸浦氏について「本当に気合と根性の性格」と評し、海外の生産・営業の現場で周囲が「厳しい」、「撤退か」と弱気になったタイミングでも、岸浦氏は「もうひと頑張りすれば売れる」と周りを鼓舞し続けた——そんな「押し切る力」を紹介した。
米国関税(15%)については「このレベルなら、頑張ればしっかりやっていける」としつつ、競争相手の強さも認め、大きな外部環境として「中国メーカーの技術力・商品力・コスト競争力」を挙げ、「世界中で戦う最大の戦い」と表現。社内で戦い方を議論していると語った。
デジタル/AIの取り込みについては、技術が日々アップデートされる中で「自社の体力に合った形で、どう追いつくかが重要」と現実路線を示している。協業面では、日産・ルノーを含むアライアンスの継続に加え、日産・ホンダとの3社での検討も続けている旨に言及した。
加藤CEOと岸浦COOの役割分担はどうするのか、という質問もあり、これには加藤氏が回答。
「いま方向性を間違うと、とんでもない結果になる」という危機感のもと、加藤氏(CEO)が中長期の方向性や提携・協業を主に担い、岸浦氏(COO)には生産・販売など日々動く現場に近い領域での指導・監督を厚く担う、という整理になるとのこと。
激動のモビリティ社会、この荒波のど真ん中で、三菱が今後どんな「三菱らしいクルマ」を出してくるのか。新体制の本気が試される2026年が始まった。令和のランエボ復活劇、待ってますよ!!
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