交通コメンテーターの西村直人です。ベストカーには15年ほどの間、寄稿させていただいていますが、ベストカーWebへは今回から寄稿させていただくことになりました。改めまして、よろしくお願い致します。
編集部からいただいた依頼内容は「自動運転」です。
「自動運転を語らずして自動車ジャーナリストに非ず」などと言われる昨今ですが、私は交通コメンテーターですので自動車ジャーナリストや自動車評論家の方々とはちょっと違った一面から、即ち利用者であるドライバー側の立場から自動運転を紹介していきたいと考えこれまで取材に臨んできました。
■今日、自動車メーカーが目指しているのは「自動運転」ではない
「自律自動運転」を正式名称とするいわゆる自動運転ですが、5年ほど前までは今のようにメディアで大々的に紹介されることは少なく、あくまでも話題のひとつであって、近い将来の新技術的な採り上げられ方だったように記憶しています。
それがどうでしょうか、2015年あたりから徐々に自動運転をキーワードとする紹介記事が増え、TVなどでも特番が組まれるほどになりました。
でもみなさん、忘れないでください。
今日、自動車メーカーが、サプライヤーが、そして政府の自律自動運転開発の旗振り役であるSIP-adus(編集部註/Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program-Automated Driving for Universal Services=戦略的イノベーションプログラムによるユニバーサル自動走行システム)が目指しているのは、
「自動運転」ではなく「高度な運転支援技術」の早期実現です。無人運転ありきで自動運転の技術開発が進められているわけではないのです。
ここでの高度な運転支援技術とは、運転操作の一部、またはそのほとんどを自動化することで“自動走行状態”が条件付きで保たれることを意味します。
2016年3月29日、国土交通省は「ドライバー異常時対応システム」のガイドラインを世界に先駆け発表しました。
ここでは、オートバイを除くすべの自動車を運転中にドライバーの健康状態が突然悪化し、運転継続ができなくなった場合、どのように安全に停車させるかを定めていますが、高度な運転支援技術は、このような状況にも対応する技術の礎にもなり得ます。
実際に、アイシン精機では同社の開発した「ドライバーモニターシステム」の応用技術として自動運転モードである「緊急路肩退避」機能を研究しています。
これは、後輪を自動操舵することでドライバーに不測の事態が起こった際、車両を路肩に停車させる技術です。
まぁ、書き出しから文面がカタくなってしまいましたが、私が最初に申し上げたいのは“自動運転ができなきゃダメじゃん”みたいな風潮はなんとしても避けなければならないということです。
よって、どの自動車メーカーの自動運転が最先端であるとか、自動運転に不可欠な人工知能開発のトップランナーはどこなのかといった、ある時点でのスペックをお知りになりたい方々からすると、この先に記述がないことから、ガッカリされるかもしれません。
でも、“何故、自動運転が必要なのか?”そして“それは誰のための技術なのか?”という素朴な疑問に立ち返っていただければ、自動運転+人工知能という図式で成り立つ自律自動運転の世界観に広がりが生まれ、みなさまにも興味を抱いていただけることと信じています。
ここでズバリ結論です。自動運転は現在普及しつつある運転支援技術の延長線上にあります。
運転支援技術とは文字どおり、ドライバーの運転を支援する先進安全技術のことであり、この普及によって事故のない交通社会の実現が見えてくると言われています。
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