【「ものづくり神話崩壊」の影で】怒鳴られ罵られる自動車ディーラー販売店悲話


 製造業の無資格者完成検査問題や品質管理問題が取り沙汰されるたびに、「日本のものづくり神話が崩れた」と言われる。

 確かにそうした「大きい話」もいいが、そうしたニュースが報じられたあとで、その実質的なしわ寄せは、ユーザーと、実際に現場で粛々と後始末を担当する販売現場にのし掛かる。

 本企画では常に販売店を回って「生の声」を集める流通ジャーナリストの遠藤徹氏に、「自動車ディーラーでお客さんに怒鳴られたり罵られるのはどんなケースですか」と聞いてみた。

文:遠藤徹 写真:Shutterstock.com


■日産の完成検査問題で現場の苦労は……

 自動車ディーラーの営業マンは日夜、新車販売で奮闘している。そんななか、やはり何十件、何百件に一件かは、お客さんとのトラブルも発生する。

 最も多いのは欠陥車やリコールの発生で対応する場合である。

 直近では日産が完成検査の不備で約116万台のリコールを出し、新車の納車も一時出荷停止を行ったケースだ。

 成約したお客さんは納期が大幅に延び、「いつになるかも分からないのでキャンセルした」というケースが全国で10%もあったという。

 通常のケースでは、契約後のキャンセルは登録作業がスタートしたあとであればキャンセル料を請求できる。ただ今回の場合はメーカーサイドの責任だから、たとえ納車直前であろうと請求はできない。

「出荷停止で納車が遅れると、催促の電話がたびたび鳴り、大きな声で怒鳴られる。反省していないのかと言われ、繰り返し説明して謝罪しても謝罪しても怒鳴られて、最終的にキャンセルになったりする」(都内日産店)

 などのケースが発生している。

 営業マンはせっかくの商談を壊したくないので、

「値引きの上乗せやオプションサービスのプラスで納得してもらう場合もある」(同)

 という。そのぶんももちろんディーラー負担。

 いうまでもないが、お客さんにとってはメーカーも販売店も一蓮托生。そこに区別はない。もちろん現場のディーラーマンはそれを重々承知のうえでクレーム対応などに当たっている。

 しかしそのいっぽうで、メーカー本体の組み立て工場の完成検査員の不備のせいでお客さんから怒鳴られ、罵られ、その最中にメーカーの責任者が(当初の対応では)「自分は悪くない」というような態度を(記者会見などで)とっていると、やはり釈然としない気持ちはつのる。

■ホンダでもトヨタでも、トラブルは発生する

 ホンダは数年前にCVTの不具合で多数のリコールを出した。この時点で、

「お客さんが該当するホンダ車をショールーム前に乗り付け、担当の営業マンを呼び出し、キーを投げつけ、何も言わずにクルマを置いて帰ってしまった」

 という首都圏地区での出来事も発生している。

 ホンダの場合は不具合が重なったことで、顧客が怒り心頭になってしまったようだ。前述のケースは、リコール対象車を修理し、店長を伴って菓子折りを携え、クルマを自宅まで届けて謝罪したそう。

 トヨタの場合は、

「契約したクルマのオプション装備が納車後についていなかったり、頼んでいないものが余分についていたり、ボディカラーが微妙に違う【と言われる】ケースが時々ある」(首都圏カローラ店)

 という。

 販売店としては、

「確認すると契約書どおりで、成約時にお客さんのサインもあるので、こちらに落ち度はないのだが、それを見せても言ったとか言わないで揉めたりする」(同)

 とのこと。

 大抵の場合、店長が同席して担当営業マンが説明するが、納得してもらわないと販売店側の損害になるので、多くは値引きの上乗せで決着になる。

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