2023年3月23日、日本自動車工業会は都内で会見を開き、先日トヨタ自動車の社長を退任して同社会長へ就任することを発表した豊田章男氏が、(同時に辞意を伝えていた)日本自動車工業会の会長職について「残り任期1年、続けることにいたしました」と発表した。
文/ベストカーWeb編集部、画像/三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY、自工会会見スクリーンショット
■激動のクルマ界に道筋をつけるため「もう1年」
「経団連モビリティ委員会の発足」や「政府官邸との対話」など、ここ1年の自工会の活動は目を見張るものがあった。日本経済の大黒柱である自動車産業の発展のために「政界に存在感を示す」という業界団体の役割を、十分以上に果たしている。
その背景のひとつに、豊田章男会長の強力なリーダーシップがあった。これまで(無給であり手弁当での奉仕活動ということもあって)いまいち存在感の薄かった日本自動車工業会であったが、近年は強い影響力を発揮し、業界全体の発言力が増していた。
そうしたなか、2023年1月に豊田章男氏がトヨタ自動車社長から会長へ就任することを発表、それにともない自工会会長についても辞意を伝えていた。
しかし、百年に一度の、激動の自動車界である。2023年5月には広島G7サミットが控えており(主要テーマのひとつに「持続可能な社会」がある)、10月にはジャパンモビリティショー(旧称:東京モーターショー)が控えている。
こうした状況を踏まえると「余人をもって代えがたい」(自工会首脳)豊田章男氏には、ぜひとも(2024年まであと1年間の)任期満了まで続投してほしいとして、自工会全理事が全会一致で遺留をお願いしたという(それもすごい話だ)。
もともと昨今の自工会では会長職に負担が集中しており、よくもわるくもワンマン体制となっていた実情がある。そこで、これを機会に正副会長が一丸となって自工会の運営改革に着手し、実作業を分担することになったとのこと。
「いままで会長に過度な負担が集中していました。これを機会に自工会の改革も進めていきたい」(日髙祥博自工会副会長)と、改革を約束して、豊田氏に留任を頼んだそう。
「わたしには3つの顔があります。トヨタ自動車の社長、自工会会長、そしてモリゾウです。前者ふたつの役目は終わらせて、これからはモリゾウとしてバックアップに努めようかな、そのほうが変なバッシングも受けなくなるかな、と考えておりました」
と語る豊田章男氏。しかしそんな豊田氏に対して、自工会副会長が全員で(!!)遺留を申し入れ、「昨日、もう1年だけ、と(留任することを)決めました」と豊田氏は語る。
この日の会見には、前述の日髙祥博氏(ヤマハ発動機代表取締役社長)のほかにも、片山正則氏(いすゞ自動車代表取締役社長)、三部敏宏氏(本田技研工業代表執行役社長)、内田誠氏(日産自動車代表執行役社長)、鈴木俊宏氏(スズキ代表取締役社長)、永塚誠一氏(自工会常勤専務理事)、そして新たに自工会副会長に就任する佐藤恒治氏(トヨタ自動車次期社長)と、日本自動車界のトップがずらりと顔を揃えた。
これまで豊田章男氏が目立つかたちで牽引してきた日本自動車工業会、これを「(自動車界では)”競争と協調”が大事であり、この自工会は、各社が本音で語り合う協調の場であると思っています。日本の自動車産業を守る、そして世界の自動車産業をリードする、そういう存在であり続ける道筋をつけたい」と、豊田章男氏は語った。
あと1年、豊田章男氏には日本自動車界550万人のため、そして新たに到来するモビリティ社会に携わる1000万人のため、さらには日本経済全体のため、ぜひともがんばっていただきたい。
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