損害保険会社への不適切な保険金請求から始まった中古車販売店大手のビッグモーター騒動。この騒動は日を重ねるごとに、収まるどころか「店舗前の街路樹に除草剤を撒く」、「パワハラLINE流出」、「買い取り金の返金要求」と、本来の「お客から預かったクルマを故意に破壊した」「保険金を水増し請求した」といったこれまで論点から方向を変え、さらに問題が大きく深刻になっている。
それにともない、中古車業界全体に対して、一般ユーザーからの不信感が積み重ねっている。
以下、本件により各所で流れている「中古車店は大なり小なり似たようなことをやっているのではないか」という疑念について、中古車業界に詳しい自動車専門ライターの萩原文博氏に伺った。
文/萩原文博、写真/AdobeStock、ビッグモーター
■シェア15%のトップ企業が起こした事件
「ビッグモーター」という中古車店への一般の方の印象は、今回の騒動前であれば、テレビやラジオでCMを打ち、そのエリアで一等地といえる場所で大きな敷地にキレイな店舗を持っていて自社工場も完備と、それなりに優良な中古車販売店に見えていたはず(それは「環境整備点検」と呼ばれる、経営陣による恐怖政治ともいえる過剰な業務チェックの結果だったわけだが…)。
しかし今回の騒動によってビッグモーターへの印象は一変し、現時点ではユーザーがほとんど立ち寄らなくなっている。売上大幅ダウンは必至だが、そのいっぽうで経営陣は、現行社員の歩合給を補填する方針を打ち出している。社員の退社を防ぐための会社の防衛策だろう。
周囲から話を聞くと、一般ユーザーからのイメージダウンは、ビッグモーターだけに留まらず、中古車販売店全体に及んでいる。
以下、それを説明したい。
まず、2022年度の全国の中古車販売市場(事業者売上高ベース)は過去最高の3兆9073億円に到達した。これはコロナウイルス拡大や世界的な半導体不足により、新車の納期が遅延・長期化、これにより即納可能な中古車へユーザーの消費が流れたのが一因だ。その中古車市場において、ビッグモーターはシェア約15%を占めるトップ企業だった。
トップ企業が、今報道されているような保険金の不正請求や街路樹に除草剤を撒くといったブラックなことをしているのであれば、中古車業界全体が「多かれ少なかれこのようなことをやっているだろう」とユーザーに思われてしまうのは仕方がない部分がある。
今回、筆者は関東エリアで親子二代続けて中古車販売店を営んでいる友人に連絡し、規模は異なるものの同じ中古車販売店として「今回の騒動についてどう受けとめているのか」、そして「現状ユーザーの動きはどうなのか」を聞いてみた。
コメント
コメントの使い方記事末の「編集部注」には『ベストカー』編集部の矜持を感じた。外部から指摘される前に自らの責任を宣言するのは、どのジャンルの言論機関でもできている組織はほとんどない。強く支持したい。
同業他社にとっては本当に迷惑な話でしかない。
これで中古車販売業界全体に社会的マイナスイメージが一気に広まってしまった。
気の毒に思う。
ちゃんとしているところはしているはずなのに…
保険会社が知らないことはありえない、そう断言してくれるメディアがどんどん増えてほしいですね。
損保7社に行政が立ち入りましたが、中古車屋だけじゃなくこちらをもっと注目し取り上げないと
ビックモーター一社を倒産にもっていくだけで、裏の闇の解明にならないと思います。自身の入ってる保険会社にも注視を。