「街路樹に除草剤」って…ビッグモーター騒動でハッキリしておきたい中古車店の常識と非常識と責任の一端

■中古車業界全体のクリーン化を

 たとえば「大手中古車検索サイト」もビッグモーターのような大規模店には忖度していると感じるそうだ。

 例えばこの販売店が、「修復歴アリ」の中古車を「修復歴ナシ」として販売した場合、即レッドカードとなり、大手中古車検索サイトでは掲載停止となるそう。しかし、この原稿を執筆している2023年8月3日の時点で、大手中古車検索サイトのうちプロトコーポレーションが運営している『Goo.net』はビッグモーターの中古車が検索できなくなっているが、リクルートが運営している『カーセンサー』にはビッグモーターの中古車が約2万5000台掲載されている。

 また、カーセンサーは新規開店前のビッグモーターの店舗に対する口コミを一度は掲載し、その後、削除している。店舗オープン前に口コミが掲載できるというシステムもいかがなものか。結局、中古車販売店の良し悪しの判断材料となりえる口コミもコピペが横行していて、機能していないとも言える状況だ。

 オーナー曰く、「一連のビッグモーター騒動でわかったのは、国民生活センターに苦情が約1,500件も寄せられても中古車メディアはスルーして掲載、我々には厳しい損害保険会社も忖度している。それは皆さんビジネスだから仕方ないと思うが、何かあるとすべての中古車販売店が悪いというイメージになるのは耐えられない」とのこと。

 では、どうすれば中古車業界の不信感は取り除けるのかを聞いてみると、全国約1万1000社の中古自動車販売店が加盟しているJU中販連(一般社団法人 日本中古自動車販売協会連合会)が先頭に立って業界のさらなるクリーン化を進めていくしかないと話す。

 そしてユーザー目線に立って、安心して中古車を購入できるシステムを構築しないと、不信感はなくならないだけでなく、このまま業界全体がシュリンクしていってしまう、と危機感を口にした。

損保ジャパンは2011年以降、合わせて37人をビッグモーターに出向させていたことが明らかになっている。37人って…
損保ジャパンは2011年以降、合わせて37人をビッグモーターに出向させていたことが明らかになっている。37人って…

■膨大な数の在庫車は流出するのか?

 最後に、「今後ビッグモーターのクルマが市場へ大量に出回るか」と聞いてみると、元ハナテンが運営しているオートオークションのミライブへ出品される可能性はあると思うが、正直、他店へはそれほど出回らないと思う、という答えだった。

 グレーと言われる中古車業界だが、長年中古車販売店を取材してきた筆者にすればクリーンな販売店はたくさんある。しかし、そういった販売店にスポットが当たりにくいのが実状だ。それはユーザーの車種重視、価格重視という理由もある。

 だからこそ、JU中販連や中古車情報メディアが、本当の意味で推奨できる良い店を選べるようになり、最終的にはそれがスタンダードになるようにならないと、この不信感は拭えないだろう。それくらい今回のビッグモーターの件は中古車業界において非常識なことだった。

(編集部注/上記原稿には特定のメディア・サービス名が掲載されていますが、今回のビッグモーター騒動に関しては、老舗の自動車専門メディアである本誌『ベストカー』および当サイトにとっても大いに責任があると考えています。わたくしの知る限りビッグモーターの広告が当社メディアへ掲載されたことはありませんが、それでも先月まで当サイトの「中古車検索」(Goo.netと連携)にもビッグモーターの中古車が検索対象として掲載されておりました(もちろん「不祥事があったことと販売車両を掲載することは別問題ではないか」という論点はありえます)。

 また、自動車専門メディアで中古車関連の取材をしたことがある記者・ライター・編集者であれば、急成長しているビッグモーター社に対して、なにかしらの噂を聞いたことがない人間は少ないでしょう。わたくしを含めて当編集部でも「何かやっているのではないか」「あまり評判はよくない」という話は聞いており、それでも確証がないので記事化はせず、取材して世の中に問おう、ということはしてこなかった過失があると感じています。

 この点について深く反省し、自動車専門メディアの存在意義のひとつとして、継続的に業界のクリーン化について、わたしたち自身も当事者意識をもって進めつつ、関心を寄せ続ける必要と、なんらかの再発防止案を講じる重要性を痛感しております。編集部一同)

【画像ギャラリー】ビッグモーターと損保ジャパンの相談窓口(3枚)画像ギャラリー

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