■「損保会社は知らなかったと言っているが…」「それはない」
今回、話を伺った中古車販売店は、1988年に創業し、地域に根ざして、とにかくユーザーに値段以上の価値あるクルマを提供することをモットーとしている。
在庫一覧を見ると、ミニバンやコンパクトカーなどを中心に約20台展示。すべての中古物件は車両本体価格に加えて諸費用を加えた総額表示となっていて、ほとんどのクルマが100万円台となっている。
この販売店の取り扱っている中古車は、人気車種もあるが、一見すると地味に見える。しかしそれはオーナーの目利きによって安心・安全をユーザーに提供できる中古車を選んでいるから、という理由がある。その自信の表れが、「全国対応12カ月・走行距離無制限の保証」が総額の中に入っていることだ。
ディーラー系列店を除いた多くの中古車販売店では、保証はオプションで追加料金が発生するケースが一般的だが、この販売店は保証込み、提示された総額表示で乗り出せる明朗会計となっている。さらに、展示しているクルマすべて、業界トップクラスの中古自動車検査専門機関、AISの車両検査を行い、鑑定書を発行している。
さらに2011年の東日本大震災後、高い放射能のクルマが市場に出回ったという際には、ガイガーカウンターを導入し、1台1台数値を測り販売していたほど、ユーザーの不安を取り除くことに真摯に取り組んでいる販売店だ。
そのオーナーが開口一番「今年7月末の記者会見後、お客さんがピタッと止まりました。中古車販売店のトップ企業だったビッグモーターの影響は、我々のような小規模な販売店にも及んでいます」と話した。
筆者も懸念していた中古車業界全体に不信感が広がっているのは間違いないようだ。
今回の騒動について尋ねると、「あくまでも個人的な意見」という前提で、「これまでビッグモーターに向けられていた様々な疑惑が、やっぱり本当だったのだ、ということが、残念ながら証明されてしまった」と話す。
「一般の人から見れば、大きくてキレイな店舗、自社工場も完備していて、大量にTVやラジオでCMを行っているとなれば、それはいいイメージをもつでしょう。しかし実際はそうではなかったと明らかとなった。しかもそれのマイナスイメージは、ビッグモーターだけでなく中古車業界全体に及んでいて、今後もさらに拡大していきそうです」
「これまでビッグモーターについてのよくない話をユーザーから聞いたことがあるか」と聞くと、「買い取り価格がどこよりも20万円高いと聞いたことがある」とのこと。ただ返金請求までは聞いたことがないということだった。
続いて中古車販売店と損害保険会社との関係を聞くと、「自分のところのような小規模店は、圧倒的に損害保険会社のほうが強い」という。
「やはりビッグモーターのような、取引額が大きいところ、さらに自社工場や保険の代理店も行っている大規模店には、損害保険会社も利益追求で忖度してしまうのだろう」と話してくれた。
損害保険会社は「(不正請求について)知らなかった」と話している点はどう思うのか、と聞くと、「それはない」と即答。メディアには「信頼関係」と書いてあったけれど、うちのような小規模な販売店では絶対できないことをあれこれとやっているので、ビッグモーターと損害保険会社との特別な関係を感じる、と話す。
そして、こうした「特別な関係」は、なにも損害保険会社相手だけではない、と話す。
コメント
コメントの使い方記事末の「編集部注」には『ベストカー』編集部の矜持を感じた。外部から指摘される前に自らの責任を宣言するのは、どのジャンルの言論機関でもできている組織はほとんどない。強く支持したい。
同業他社にとっては本当に迷惑な話でしかない。
これで中古車販売業界全体に社会的マイナスイメージが一気に広まってしまった。
気の毒に思う。
ちゃんとしているところはしているはずなのに…
保険会社が知らないことはありえない、そう断言してくれるメディアがどんどん増えてほしいですね。
損保7社に行政が立ち入りましたが、中古車屋だけじゃなくこちらをもっと注目し取り上げないと
ビックモーター一社を倒産にもっていくだけで、裏の闇の解明にならないと思います。自身の入ってる保険会社にも注視を。