遅すぎた取引停止 悪いのはビッグモーターだけなのか? 損保ジャパンの過失と責任

遅すぎた取引停止 悪いのはビッグモーターだけなのか? 損保ジャパンの過失と責任

 今回のビッグモーター騒動の発端は、ユーザーのクルマをわざとキズつけるなどして、損害保険会社に不適切な保険金請求を行ったことだった。その後、ビッグモーターは店舗前の街路樹(公共物)に除草剤を撒いたり、従業員へのパワハラ疑惑など、新たな問題が発覚している。

 しかし上述の「保険の不正請求」に関していえば、ビッグモーター社が単独で出来たとは考えにくい。他社の協力、もっといえば共謀がなければ成立しない事例がたくさんあったのではないか。「ビッグモーターはとんでもない会社だ」と本件を追求するのは大事だが、なにもかもビッグモーター「だけ」が悪かった、では見えない事情があるはず。本稿ではそのうちのひとつ、損害保険会社について、中古車に詳しい自動車ライターの萩原文博氏に伺った。

文/萩原文博、写真/Adobe Stock、損保ジャパン、ビッグモーター

■損害保険会社は「被害者」…なのか……?

 ビッグモーターは、損害保険ジャパン(以下損保ジャパン)、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の大手3社に修理費を水増しする不適切な請求を行っていた。

 なかでも損保ジャパンは、かつて前社長(兼重宏行氏)に次ぐビッグモーター第二株主だったし、2011年以降37人もビッグモーターに出向させていた(東京海上と三井住友は3名ずつ)。さらに、ビッグモーターの前副社長(兼重宏一氏)は、2011年から1年半あまり損保ジャパンの前身企業のひとつである日本興亜損保に在籍していたという。

 損保ジャパンは、8月3日、ビッグモーターとの保険代理店委託契約を終了することに合意したと発表。リリースには「ビッグモーターによる自動車保険金の不正請求は社会全体に影響を与える事件だったと厳粛に受け止めている」と書かれている。そして、ビッグモーターで自動車保険に加入したユーザーとの契約は満期日まで有効で、今後は別の代理店への変更手続きを順次書面で連絡するとしている。

損保ジャパンは公式ページにてリリースを発表。専用相談窓口を設けて、契約者向けに、代理店の変更など対応を実施するとのこと
損保ジャパンは公式ページにてリリースを発表。専用相談窓口を設けて、契約者向けに、代理店の変更など対応を実施するとのこと

 この損保ジャパンの発表リリースを見て感じるのは、「自分たちも被害者であり、今回の不正請求は見抜けなかった」ということ。

 はたしてこれを信じることができるのだろうか。個人的には信用できない。

 その理由は先ほども書いたが、ビッグモーターと損保ジャパンの関係性が、ほかの損害保険会社とは大きく異なる点だ。前述のように、損保ジャパンはもともとビッグモーターの第二株主であったこと、そして前身企業のひとつに今回の騒動のキーマンといえる前副社長が在籍していたこと、である。

 さらに、すでに報道されているが、修理の斡旋一件につき5台分の自賠責保険契約を回すというビッグモーターと損害保険会社との関係が見えることも重要だ。この(裏?)契約のために、損保ジャパンは顧客を積極的にビッグモーターへ斡旋し、不適切な請求も見て見ぬ振りしていたと思われる。

次ページは : ■損保会社と修理工場の「ビジネスの常識」とは?

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