トヨタは「世界EV戦争」に勝てるのか? No.1アナリストが伝えたい重要な話

トヨタは「世界EV戦争」に勝てるのか? No.1アナリストが伝えたい重要な話

【著者自らが記す、話題の書『トヨタのEV戦争」を上梓した理由】

 EVが好きでも嫌いでも関係ない。今、米国、欧州、中国による国、地域を挙げたEV覇権争いが繰り広げられている。マルチパスウェイ(全方位)戦略を掲げるトヨタだが、「全方位」は、まずEVで勝つことが必須条件。世界の流れはそこまで来ているのだ。

文/中西孝樹、写真/トヨタ自動車

日本経済のゆくえも左右する、絶対に負けられないEV覇権争い

 国内自動車産業は過去最大の危機に直面していると感じます。そしてそれは業界トップのトヨタ自動車の危機でもあります。日本車メーカーが提供してきた「買いやすく、直しやすく、長持ちする」価値が封じ込められ始めています。

 EV販売が大幅に増大する中国や欧州では、日本車の市場シェアの下落が止まらないのです。この流れは日本車メーカーの収益の源泉である北米や東南アジアへも広がっていくものと考えられます。

 世界で広がるEV普及の本質的な理由はどこにあるのか。それは非常に政治的で強国のパワーポリティックが仕掛ける国家経済戦略です。

 脱炭素を進めながらも自国の経済安全保障を強める欧米のルールメーキングがEVを急速に普及させています。そのなかで米国のテスラ、中国のBYDが大躍進を続け、クレイトン・クリステンセンがいう「世代交代」を思い起こさせるような事態に向かっているようです。しかし、このEV戦争に勝ち残らなければ、日本の自動車産業のみならず、日本経済の未来に暗雲が漂うことになるでしょう。

 昔から大市場を有する欧米の規制やルールメーキングに抑圧されながらも、日本車は提供価値がユーザーに認められ、そして選ばれて成長を続けてきました。トヨタはユーザーニーズに耳を傾け、地域・地域に適合したクルマを丁寧に届け続けた結果、高収益で真のグローバルでフルラインの自動車メーカーとして存在感を放ってきたのです。

政治主導で動けない日本は、商品力の高さで選ばれるしかない。過去のその代表例が、トヨタが世界を制したハイブリッド車である
政治主導で動けない日本は、商品力の高さで選ばれるしかない。過去のその代表例が、トヨタが世界を制したハイブリッド車である

 しかし、2020年を境にトヨタのEVでの出遅れや将来の競争力に対する不安が台頭しています。EV戦争に敗北し、国内産業と自動車関連企業の衰退が起こるのではないかという悲観論が漂っているのです。

 EVでの出遅れというのは本当なのか。もしそうなら、将来のトヨタ経営にいかなる影響を及ぼすことになるか。しかし筆者は、EVのつまずきはトヨタが抱える現在の問題の一角に過ぎないと考えています。

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