トヨタは「世界EV戦争」に勝てるのか? No.1アナリストが伝えたい重要な話

壮大なる消耗戦に、どう挑むのか

 4月に新社長に就任した佐藤恒治氏は、「EVとはミルフィーユのような3層構造があり、(1)車体プラットフォーム、(2)電子プラットフォーム、(3)アプリケーションのそれぞれの階層の議論を進めないと競争力のあるEVは作れない」と語りました。EVの競争力とは専用プラットフォームを開発し、コストの低い電池を入手するというハードウェアだけの戦いでは終わらないのです。

 EVはスマートフォンと同じようになり、通信で自由にソフトウェアをアップデートでき、新サービスを提供できる「ソフトウェア・ディファインド・ビークル」、いわゆるSDVへ進化します。ここでは、ソフトウェアやデジタル(データ)が競争力上重要な要素となってくるのです。

 本書ではSDVを詳細に解説して、テスラの分析と共に自動車産業の未来に不可欠な競争力の深掘りに取り組みました。

「デジタル化、電動化、コネクテッドなど、私はもうですね、ちょっと古い人間だと思う」

 再建を実現し、強いトヨタに引き上げ14年に渡りトップを務めてきた豊田章男氏はあえて自己否定ともとれることに言及してまでトップ交代の意義を語り、経営のバトンを佐藤氏に託しました。その真意はEVからSDVへ向けたトヨタの世代交代を目指すということでしょう。

 そして電撃的な社長交代の後、新体制は驚きのスピードで新たなEV戦略を次々に発表しています。壮大なる消耗戦の様相を呈してきたこの戦いに、トヨタはどう挑み、勝ち抜こうとしているのか。その戦略を詳細に分析するとともに、トヨタの課題を炙り出し、なぜ上手くいかないかの真因を考え、強いトヨタを取り戻すには何が必要かを考えることが本書を執筆する目的です。国内自動車産業、製造業全体のものづくり戦略を再考する書を目指しました。

新設したトヨタ「BEVファクトリー」のプレジデントに就任した加藤武郎氏。EVが大好きな人物と聞く。加藤氏の舵取りに注目が集まる
新設したトヨタ「BEVファクトリー」のプレジデントに就任した加藤武郎氏。EVが大好きな人物と聞く。加藤氏の舵取りに注目が集まる

 日本車は今回のピンチをチャンスに転じられるのか、あるいは100年目の深刻な衰退を迎えることになるのだろうか。その結果、国内自動車関連産業の未来、550万人の関連雇用者の行方はどうなるのか。これは製造業のみならず、日本の経済と産業の国際競争力を左右する一大事となります。トヨタのEV戦争。社長となった佐藤恒治氏が率いる新体制の、決して負けることが許されない戦いがここにあるのです。

 筆者は長く証券系のアナリストを生業としてきました。対峙してきたのは資本市場です。この独立的かつ中立的な立場から、アナリストの分析力と洞察力を駆使した未来の予測と、トヨタが進む道の足元を照らそうと努めました。

 初めてトヨタをタイトルに冠した拙著『トヨタ対VW』を2013年に書いてから、早くも10年が過ぎようとしています。この間、筆者のアナリスト人生も30年目の大きな区切りを迎えました。国内自動車産業には過去最大の危機が迫っていると認識しています。そういう危機意識を高めながら、フラットに、しかし同社に対してやや厳しいスタンスを心掛けました。ご一読いただければ幸いに存じます。

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