■見た目以上にオフロード性能も高い4WDがウケた
このほかRAV4が好調に売れる理由として、商品自体の魅力も大きい。分類上は前輪駆動をベースにしたシティ派SUVだが、デザインやメカニズムの性格は、ランドクルーザーのようなオフロードSUVに近いからだ。
そのためにRAV4で前輪駆動の2WDを選べるのは価格が最も安いXに限られ、中級以上のグレードはすべて4WDになる。
2Lのノーマルエンジンを搭載するG・Zパッケージとアドベンチャーには、後輪左右の駆動力配分を電子制御で変化させる機能も備わり、悪路走破力と舗装路上の安定性を一層向上させた。

C-HR、ハリアー、CR-Vなどを見ると分かるように、今はシティ派SUVが多い。SUV本来のオフロード指向を表現した車種は、エクストレイル、アウトランダー、フォレスター、エスクード程度に限られる。
そこに悪路走破力を高めて外観も野性的なRAV4が加わったから、注目された。従来型のRAV4や生産を終えたヴァンガードからの乗り替えもある。
ただしRAV4の旺盛な需要が、今後も長く続くとは限らない。SUVなど趣味性の強い車種は、発売直後に売れ行きを一気に伸ばし、その後は急速に落ち込む傾向もあるからだ。
趣味性の強い車種を買うのはクルマ好きのユーザーで、欲しい車種が登場すると、愛車の車検期間が残っていても乗り替える。
そこで販売が急増して、欲しいユーザーに行き渡ると売れ行きが下がるわけだ。C-HRも以前から徐々に販売を縮小させ、RAV4の登場でさらに下がった。
逆にヴィッツのような実用指向の車種は、ユーザーも損得勘定を考えて冷静に選ぶ。
発売直後に売れ行きを急増させない代わりに、優れた商品であれば長期間にわたり安定して売れ続ける。このような事情があるから、RAV4の本当の人気は、少なくとも1年以上を経過しないと分からない。
エクストレイル、ハリアー、CR-Vといった全長が4600~4700mmのライバル車に対するRAV4の優位性は、先に述べたオフロード指向の強さだ。
エクストレイルも最低地上高は205mmを確保して4WDのロックモードを備えるが、後輪左右の駆動力配分を変化させる機能は、RAV4ならではだ。
またRAV4の2Lノーマルエンジンは動力性能が大人しいが、回転感覚は上質でノイズも小さい。乗り心地を含めて走りの質を高めた。
RAV4の買い得グレードは、幅広いユーザーに適する実用装備を充実させた2Lエンジンの4WD・Gだ(320万2200円)。
これに相当するエクストレイルは、4WD・20Xi(303万4800円)になる。比較すると価格はRAV4が約17万円高い。
しかしエクストレイルではオプション設定のサイド&カーテンエアバッグを標準装着して、運転席の電動機能、緊急時にSOSを発信できる通信機能なども備わる。これらの装備の違いを考慮すると、RAV4が少し割安だ。
エクストレイルは強力なライバル車だから、RAV4は価格の割安感で対抗できるようにした。
ハリアーでは同じく2Lノーマルエンジンを搭載する4WD・プレミアム(344万4120円)が買い得だ。
ハリアーにはアダプィブハイビームシステムが備わり、ヘッドランプに採用された複数のLEDを消灯することで、ハイビームを維持しながら相手車両の眩惑を抑える。細かな快適装備もハリアーが充実して内装の質感も高いが、価格もハリアーを約41万円上まわる。
ハリアーは豪華さに魅力があり、クラウンのような価値観を備える。SUVというより、居住性と積載性を向上させた背の高いステーションワゴンだ。RAV4とはコンセプトがまったく違う。
従って直接競争はせず、前述のようにRAV4が発売されてもハリアーは販売面であまり影響を受けない。
それでも割安感を競えば、装備の違いを補正して、RAV4が20万円程度は安い。いい換えればハリアーの上質な内外装は、20万円に相当するわけだ。
このほかRAV4は、ハイブリッドを含めて新しいパワーユニットを搭載していることも魅力になる。
CR-Vの買い得グレードは、1.5Lターボを搭載する4WD・EXだ(344万6280円)。2LエンジンのRAV4・4WD・Gに比べて24万円少々高い。
CR-Vの1.5Lターボは2.4Lのノーマルエンジンに匹敵する動力性能を発揮するから、この価格は10万円相当に換算できる。
さらにCR-Vは14万円相当のカーナビも標準装着したから、この2点を差し引くと、価格はRAV4と同等だ。
このように考えるとCR-Vは意外に買い得だが、カーナビまで標準装着したから価格を高めた。北米指向のインパネも、質感がいまひとつだ。2019年1~6月の月販平均は1600台前後で、直近を見ると約1000台になる。

このようにRAV4は、SUVの持ち味とされる悪路走破力と野性味を適度に強め、価格は割安感のある設定にして人気を高めた。
今後は販売促進に力を入れながら、大切に売り続けて欲しい。2016年のように国内販売を終了すると、ユーザーはトヨタから裏切られた気分になり、顧客満足度を下げてしまう。
クルマのユーザーには、ひとつの車種をフルモデルチェンジの度に乗り替える人が多い。それは人生の大切なイベントで、ユーザーの愛車に対する愛情は、日本の自動車産業の礎でもある。それを一番良く知っているのは、トヨタであるはずだ。
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