かつてはパワーの象徴ともいわれたターボチャージャー。しかし、現在のターボは以前とは異なり、パワーよりもむしろ効率アップに活用されている。そんな最新ターボ事情を見ていくと同時に、入手しやすい現行ターボモデルを紹介しよう。
文:長谷川 敦/写真:スズキ、ダイハツ、トヨタ、日産、フォルクスワーゲン、三菱自動車、Adobe Stock
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ガソリンエンジンのような内燃機関で、排気ガスの熱エネルギーを利用してパワーを向上させる機構がターボチャージャー(ターボ)だ。
ターボは、本来はエンジン外部に排出されるだけだった排気ガスのエネルギーでタービンを回し、より大量の空気を燃焼室に送り込むことによってパワーを得るもので、20世紀には特に高性能スポーツカーでの採用例が多かった。
当時のターボは純粋にエンジンの出力向上のために用いられていたが、やがて時代は進み、ハイブリッド車に代表されるようなエコ重視のテクノロジーの台頭により、パワーアップ目的のターボは衰退傾向にあった。
とはいえ、排気エネルギーを再利用するターボには、パワーアップ以外にもエンジン全体のエネルギー効率を向上できるというメリットもあり、近年になってその点が再び評価されることになった。
パワーではなく効率重視方向にターボを使用するのであれば、それは現代のエコ社会にもフィットすることになり、市販車のターボに再び注目が集まっている。
登場! ダウンサイジングターボ
ターボを装着したエンジンは燃費が悪くなるといわれていたが、これは一面では事実であるものの、それがすべてとはいいきれない。
かなり乱暴な表現になるが、ターボは過給によってエンジン排気量を疑似的に大きくするシステムであり、小排気量エンジンであっても大排気量並みのパワーが得られた。
しかし、大きな排気量のエンジンは必然的に大量の燃料を消費することになり、これが燃費性能を低下させる。
このことを逆に考えると、スポーツカーではなく一般車のエンジンを小さくして、これにターボを装着すれば通常のエンジンと同等のパワーを確保でき、なおかつ小排気量のメリットである低燃費も両立できる。
これがダウンサイジングターボの考え方だ。
ダウンサイジングターボの登場は21世紀に入ってからで、早期にこのシステムを採用したのがフォルクスワーゲン(VW)のTSIエンジンだった。
2006年にVW ゴルフに搭載されたTSIエンジンは、1.4リッターの直4エンジンにターボとスーパーチャージャー(排気ガスではなくクランクシャフトの回転で過給を行う)を装着して大型のエンジンに匹敵する性能を発揮した。
TSIエンジンが評価されたため、VWはシングルターボ仕様や1.2リッターのTSIエンジンを登場させた。
なお、TSIエンジン以前にもダウンサイジングターボ的な思想のエンジンは存在していたが、世界にこのコンセプトを広めたのはTSIエンジンだといえる。
ところで、ベテランの読者にはターボ車=高額というイメージがあるかもしれないし、実際に、先に発表されたGR GTのように、高性能だが高価格が予想されるターボ車は現代でも存在する。
そのいっぽうで新世代のターボ車には手頃な価格で購入できるものも多い。
次項ではそうした高コストパフォーマンスの国産ターボモデルを見ていきたい。
















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