マツダには幸運の女神がついている!?
満を持して投入したアテンザと、それに続くアクセラの世界的ヒットによって、マツダはようやく反転上昇のきっかけをつかむ。
しかし、ようやく復活しつつあるマツダを襲ったのが、リーマンショックとそれに起因する景気後退だった。この大波は、マツダどころか本家すら巻き込み、親会社フォードを倒産の瀬戸際に追い込むことになる。
だが、いま思うとこのリーマンショックはマツダにとっては幸運の女神だったのだ。
財務体質強化のため資産売却を余儀なくされたフォードは、マツダの株式を段階的に売却。2010年には持ち株比率は3.5%まで縮小する。
これは、短期的にはマツダにとって不安材料だったが、長期的にみるとありえないほどの幸運だった。
まず、フォードと別れて独り立ちするために絶対必要な次世代パワーユニットとして、スカイアクティブプロジェクトが立ち上がる。
関係者は一様に「会社存続の瀬戸際という危機感はすさまじいものがあった」と述懐するが、それをバネとすることで驚異的な集中力で新エンジンの開発が進んだ。
また、フォードと別れたことで経営の主導権がマツダプロパーの首脳陣に集中。投資、開発、生産、販売など、あらゆる意思決定が合理的かつスピーディに行なえるようになる。
これは、ルノーとの関係で独自のイニシアティブがとれずに苦しんでいる日産や、VWに渡した株の買い戻しが難航したスズキとは対照的。マツダは最高のタイミングで、円満にフリーになれたわけだ。
日本市場がマツダの底力に気づくのは、2010年に“スカイアクティブ”が発表されてからだ
まずは、内燃機関の常識を破った高圧縮比ガソリンエンジンからスタートし、ディーゼル、ミッション、シャシーまで、クルマ造りのすべてを刷新するこのキャンペーンは、その搭載モデルが増えるにつれてじわじわと市場に浸透。初のフルスカイアクティブ車となるCX-5で大ブレイクを果たした。
経営面で見ても、スカイアクティブへの大規模投資を乗り越えて、市場最高益を更新するなど順調。NDロードスターの登場によって、第一次スカイアクティブ商品群はひととおり出揃ったわけだ。
加えて、2015年の5月、なんとトヨタからの熱心なオファーで包括的な技術提携に向けた話し合いが進んでおり、今後の見通しはさらに明るくなったといえる。
そのマツダが今かかげるのが「Be a driver.」。「走る歓び」を大切にするマツダが掲げるこのスローガンの根底には「退屈だと思うクルマは絶対につくらいない」という思いが込められている。
近年、マツダの社員と話をするとき、彼らは実に楽しそうに自分たちの仕事の話をし、クルマのことを語る。度重なる会社の危機がマツダのクルマ造りに共鳴する社員たちの結束を強め、マツダらしさにいっそう磨きをかけているのかもしれない。
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