ここにきてさまざまなメディアが日産バッシングを始めた。記事の内容といえば「その通り」なものが多いのだけれど、行間を読むと「日産の今後」についてまったく触れていない。改めて書くまでもなく日産は日本を代表する企業であり、今まで日本に貢献してきた。そして今後も日本を支えて欲しいと思う。ちなみに日産の低迷は、5年前の2019年12月に内田誠さんが社長になった時から始まったと考えます。
(※編集部注…2024年11月7日、日産自動車が2024年度の中間決算での業績悪化を受け、人員削減策を含む「合理化策」を実施すると発表しました。北米や中国での販売減が響き、純利益が前年同期比93.5%減の192億円と大きく落ち込んだことにより、グローバルで生産能力20%削減、人員9000名削減などの方針が明らかにされました)
文:国沢光宏、画像:日産自動車
■はっきり分かったのは「グプタ氏の解任」
内田さん、新型コロナもあってメディアの前に出てこなかったため、私も就任後どんな手腕を持つのか評価できず。見守るしかなかったものの、2022年秋には「内田さんじゃ厳しい」という情報が入り始める。その後、加速度的に「厳しい」という話を聞く頻度が高くなっていく。このあたりから、社内からのSOSもあって日産について厳しい内容の記事を書き始める。現在の状況、1年半前には読めていました。
文頭に書いたとおり、日産は日本の財産である。内田さんとその取り巻きたちに舵取りをさせていたら、台風のど真ん中に突っ込んでいく。方向を変えて欲しかったけれど、大手メディアはまったく日産の危機を伝えない。むしろ順風満帆に見えるトヨタ叩き(電気自動車の開発の遅れなど)に熱心。内田体制の暴走を許してしまった。1年半前に内田体制を終わらせていたら、状況は違っていたと思う。
ちなみに日産社員の大半も2023年に入るや台風のど真ん中に進んでいることを認識していた。日産の社内抗争がハッキリ外に出たのは6月のグプタ氏解任(アシュワニ・グプタ氏/元日産自動車取締役代表執行役最高執行責任者兼チーフパフォーマンスオフィサー、2023年6月に退任)。
グプタ氏は社長候補だった。その流れを絶とうとする動きなどあったのだろう。さらに日産に改革を進めようとしている社外取締役の任を解いていく。この時点で日産が大苦戦してゆくことは決まったと思う。
■魅力的な新型車の開発が遅れている
これから日産ができる打ち手は少ない。アメリカ市場についていえば、赤字になるとわかっていて巨額の販売奨励金をつぎ込まないと在庫をさばけない状況。魅力的な商品が出るかといえば、ハイブリッドすら2026年までなし。円安の追い風を受けて2023年度は黒字になったものの、1ドル140円を超える円高だと現状で赤字。もしメキシコ工場で生産される日産車に関税が掛かることになればいっそう厳しい。
決定的なのは「売れる新型車がない」ということなのだけれど、理由を聞くと「新型車は内田さんと星野副社長によって次々と潰されました」。
日産の開発陣は優秀で、この5年間に下を見て10車種以上の新型車を立ち上げようとしていたようだ。新車の開発には急いでも4年くらいかかる。その間、クルマビジネスを知らない経営陣が舵を握っていたため、日産車の世界販売台数は落ちていく。
販売台数が下がると、当然ながら収益率だって悪くなる。すると「このクルマで利益を上げられるの?」と経営陣に詰められる。売れるかどうかなんか予想できるワケありません。開発陣が「わからない」と答えるや、「じゃ開発中止!」。2024年に入ってから、日産社内から出てくる話を聞くとそんなプロジェクトばっかりである。売れるかどうかの判断と責任は経営陣が取るべきなのに。
そんなこんなで日産の凋落は2年前からわかっていたし、現在進行形で魅力的な新型車の開発を行っていないため、今後4年は売れそうな商品が出てこない。最悪の状況にならないようにできたのは、日産社員じゃなく(経営陣に逆らった人はすべて放り出されるか左遷されている)、日産経営陣の暴走を見逃した株主やメディアにあると考える(編集部注/す…すみません……)。終わりが見えてきた日産を叩いたっていかんともしがたい。
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