ワイパーはなぜ進化しないのか? 変わらなく見える部品に進化の真髄を見た

■では、どこが進化している?

 拭く作業は変えようがないが、実は、そんななかでもワイパーは細かく進化している。

 ボッシュが2000年に実用化し、今も進化させ続けているのがECUワイパーだ。一体型のECUによりモーター自体が反転作動するもので、そのメリットは多岐にわたる。

 ワイパーの挙動を細かくECUが管理することでクルマの速度に合わせて拭き取り角度を変えられるため、Aピラー(フロントウィンドウ両端)の近くまで拭き取ることができる。

 また、リンケージを介さずダイレクトドライブとして使用すれば車体の左右に延びるリンケージが不要になるため、システムが小さく、軽くできるという。

 通常のワイパーは高速走行中の作動で、風で煽られてAピラーに当たらないように余裕を持って設計されている。

 しかし、ECUワイパーは速度に応じて拭き取り角度を変えられるため、低速から高速まで、Aピラー付近まで【攻めた】拭き取り面を確保できるのだ。

 また、この角度を変えられる特徴を生かし、使わない時には収納することもできる。

 さらに、アームが反転する時に作動速度を遅くし、ゴムブレードの先端がガラスを叩く音を減らす工夫や、ワイパーが停止している時のゴムの角度を上向き、下向きに頻繁に変えることで偏りや熱劣化を防ぐ制御などもされているという。

 このECUワイパーは欧米車には普及しているが、日本車にはまだほとんど付いていない。カタログなどで大々的に謳えないわりに、コストが上がる技術だからだ。

 「ワイパーの進化というのは目立たないものばかりです。広く拭けて、使わない時には邪魔をせずに隠れる、そして、それを軽く、安く作れるようにする。これがワイパーにとって最も大事な技術で、クルマにとっては縁の下の力持ち的存在なんです」(同担当者)

■ワイパーの進化を侮るべからず

 もちろん、ワイパーそのもの以外も進化している。ゴムブレードは新素材を積極的に採用し、熱劣化に強く、空気抵抗が少なく、圧力が均一な商品の開発が進んでおり、「拭くことに関しては、極限に近いレベルに達している」という。

 また、ボッシュはワイパーアームから直接ウォッシャー液を飛ばし、ガラス洗浄の利便性と効率を飛躍的に向上させた「ジェットワイパー」を実用化した。

 これが最新のボルボXC90に標準装備されるなど、一般的にはあまり知られていないところでしっかりと進化しているのだ。

ワイパーアームに組み込まれたノズルから直接ウォッシャー液を出すボッシュのジェットワイパー(写真下)。ムダなウォッシャー液がほとんどない。残念ながらアフター用は販売していない
ワイパーアームに組み込まれたノズルから直接ウォッシャー液を出すボッシュのジェットワイパー(写真下)。ムダなウォッシャー液がほとんどない。残念ながらアフター用は販売していない

 なぜワイパーは、いつまでたってもワイパーのままなのか? その答えは「ワイパーそのものが充分に進化しているから」ということになるのだろう。

 ワイパーを甘くみてはいけなかった。取材を終えた本企画担当、不明を恥じました。

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