フラッグシップタイヤ「ADVAN」はなぜ絶大な信頼を獲得したのか?【前編】

 80年代、ADVANはモータースポーツでの技術開発をバックボーンとした、確かな「高性能」と「信頼性」を私たち若いクルマ好きたちにイメージ付けていたし、実際、その高性能と最先端の開発技術を満載したタイヤを味わうことができたのだ。

タイプDの衝撃をさらに上回ったのが1995年に市販開始された初代『ADNAN NEOVA』 だ。ストレートグルーブを一切持たない、大胆な左右非対称V字カットのトレッドパターンは、当時のクルマ好きたちの度肝を抜いたのだった!!
タイプDの衝撃をさらに上回ったのが1995年に市販開始された初代『ADNAN NEOVA』 だ。ストレートグルーブを一切持たない、大胆な左右非対称V字カットのトレッドパターンは、当時のクルマ好きたちの度肝を抜いたのだった!!

ポルシェの新車装着タイヤとして世界に認められる‼︎

 そしてこの時代、さらにわれわれクルマ好きをワクワクさせたのは、ポルシェの承認タイヤとなったというニュースだった。80年代半ば、国産車の性能はまだまだ200km/hの壁と言われていた時代、アウトバーンの国で世界のスポーツモデルのトップを牽引するポルシェは、今のイメージよりも遥かに遠く、高嶺の存在だった。『ヨコハマのタイヤがポルシェの承認を得た!』 これはものすごいインパクトを持って日本のクルマ好きたちの心を揺さぶった。

1988年、ポルシェ911ターボに『YOKOHAMA A008P』 が初めて技術承認を取得した。国内で販売される『ADVAN HF Type D』 の海外版がベースとなった
1988年、ポルシェ911ターボに『YOKOHAMA A008P』 が初めて技術承認を取得した。国内で販売される『ADVAN HF Type D』 の海外版がベースとなった

 80年代前半から、横浜ゴムは欧州のモータースポーツに積極的に参入を始めていた。WRCや欧州F3選手権、グループCカーによる耐久レースシリーズにタイヤを供給し、『YOKOHAMA』がモータースポーツで高い性能を発揮することを印象付けていった。

 この時代、欧州ではADVANブランドではなく、『YOKOHAMA』のブランドで販売をしていた。そのため欧州に向けた『ADVAN  HF Type D』は『YOKOHAMA A008』の名称だったのだが、これが欧州のポルシェユーザーの間で好評となり、ニュルでタイムを出すならYOKOHAMAじゃないとダメだと、履き替えるユーザーが多く現れたのだという。これを知ったポルシェ社が『A008』に興味を示したことがポルシェ純正タイヤ開発の始まりだったという。

1988年当時のポルシェ911はいわゆる930型と呼ばれるモデルだ
1988年当時のポルシェ911はいわゆる930型と呼ばれるモデルだ

 1983年、正式にポルシェ社からコンタクトを受けた横浜ゴムは、新車装着タイヤの開発を開始し、88年に924S、944、944Sの新車装着タイヤとして『YOKOHAMA  A008P』が技術承認を取得。『P』とはポルシェを意味している。さらに“ポルシェと言えばこれ”というRRの911ターボ(930型)の技術承認を取得、89年にはモデルチェンジして964型となった911の技術承認を得るに至った。ポルシェとADVANの関係はその後も深く、現在の911や718ケイマン/ボクスターにも『ADVAN Sport V105』が新車装着されている。

 この、80年代後半から始まったポルシェへの新車装着タイヤ開発がADNANブランドの大きな転機となったことは間違いない。

 それまで国産スポーツモデルやチューニングカーに向けたスポーツタイヤを軸とした商品展開だったADVANブランドは、2000年代に入り、ワールドワイドに視野を広げたグローバルプレミアムタイヤへと、大きくその立ち位置を進化させていく。2005年には『ADVAN  Sport V103』がベントレーコンチネンタル、ロータスエキシージ、ポルシェ911カレラ4などの新車装着タイヤとして承認され、その後アウディS8、メルセデス・ベンツ各モデルなどに続々と新車装着を広げていった。

 現在もさらに進んでいる、欧州メーカーとの新車装着タイヤ開発の話は後編(近日公開予定)でお伝えすることにしたい。

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