12月も下旬に差し掛かり、雪が降る地域も増えてきました。車の“冬支度”といえば冬用タイヤへの履き替え。降雪地域ならばスタッドレスタイヤに履き替えるユーザーがほとんどでしょう。
一方、首都圏などの非降雪地域で雪が降るのは多くても年に数回。そうなると、スタッドレスタイヤへの履き替えを「あまり効率的ではないなぁ」と感じているユーザーも多いでしょう。
そんなユーザーにとって興味深いのが「オールシーズンタイヤ」と呼ばれるタイヤ。その名の通り、1年中使えることをセールスポイントとしていますが、実際のところ、冬専用のスタッドレスタイヤに比べて性能面に不安はないのでしょうか? その長所と欠点を解説します。
文:斎藤聡/写真:編集部
ベストカー 2018年12月26日号
そもそも「スタッドレス」はどんなタイヤ?
オールシーズンタイヤというのは、文字どおり春夏秋冬一年中履いていられる全天候型タイヤです。こう書くと素晴らしいタイヤのように思えてきますが、気をつけなくてはいけないことがいくつかありますので、メリットとデメリットに触れながら紹介していきたいと思います。
タイヤを季節で分けると「夏用タイヤ」と「冬用タイヤ」に分けることができます。
夏用タイヤは一般的に履いているタイヤのことです。冬用タイヤ(言い方はいろいろありますが)は、欧州で主流のスノータイヤや北欧でまだ多く見られるスパイクタイヤ、日本のスタッドレスタイヤもこの分類に入ります。欧州ではスノータイヤが主流で、冬季に夏用タイヤから履き替えます。
ご存じかもしれませんが、タイヤのゴムは気温が低くなると硬くなり、グリップ性能が低下します。雪や氷がなくても、気温が7℃を下回るようになると、タイヤのゴムは徐々に本来の性能を発揮できなくなっていきます。乾いた路面ではわかりにくいかもしれませんが、濡れた路面で滑りやすくなっているのを実感している人は多いのではないでしょうか。
ちなみに現在「スタッドレスタイヤ」と呼ばれているのは、日本で進化した鋲なしの冬用タイヤで、0℃付近の氷雪上性能に特化したタイヤを特にこう呼んでいます。
「オールシーズンタイヤ」には夏寄りも冬寄りもある!?
なぜ、日本でスタッドレスタイヤが進化したのかというと、1980年代後半から社会問題になっていたスパイクタイヤの粉塵による環境汚染がきっかけ。さらに、もうひとつ重要なのは日本の冬は世界中で最もタイヤにとって過酷であるということなのです。
冬用タイヤにとって最も過酷なのは、マイナス20℃の寒さではなく、0℃付近のツルツル滑る凍結路なんです。
欧州は地中海沿岸では温暖ですが、緯度が高いため山間部や内陸部に入ると気温がイッキに下がり、マイナスを大きく下回ります。そのためスノータイヤで事足りてしまうわけです。
と、これまで出てこなかったオールシーズンタイヤは冬用、夏用どちらに分類されるの? と思われるかもしれませんが、実はそこがオールシーズンタイヤの問題点なのです。夏寄りもあれば冬寄りもあり、ひと口に言いきれないんです。
そのため少し前までは、どっちつかずの中途半端な性能のタイヤというイメージが強くありました。
オールシーズンタイヤのメリットと注意点は?
現在、日本で手に入るオールシーズンタイヤは“やや冬寄り”になってきたように思えます。さまざまな事情で夏用タイヤと冬用タイヤの2セットを持てないという方も少なからずいると思います。そうした人にとってオールシーズンタイヤはとても便利なタイヤだということができます。
もともと履いていたタイヤをどうするのか、という問題はありますが、オールシーズンタイヤを選ぶのであれば、タイヤを履き替えることなく、多少の雪が降ろうとなんとか走ることができるでしょう。
タイヤによって違うので確認してほしいのですが、最近のオールシーズンタイヤには、チェーン規制でもスタッドレスタイヤやほかの冬用タイヤと同じようにチェーンなしで高速道路を通行できる、“冬用タイヤであることを示すマーク”が付けられているものがあります。
「M+S」、「SNOW」、「STUDLESS」、といった表記のほか、スノーフレークマークという山に雪の結晶を組み合わせたマークが入っているものです。
ただし、スノータイヤ、ましてやスタッドレスタイヤほど低温に合わせたゴムを使っているワケではないので、氷雪上性能は明らかに劣ります。
特に氷の性能は夏用タイヤより多少マシといったレベルですから、雪が走れるからといって冬用タイヤと同じペースで走ると非常に危険であるということも承知しておいてほしいと思います。
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