【クルマのナンバープレートは真ん中になくてもいい!?】左右に移動すると違法なのか?

ナンバープレートがオフセットされている主な車種

N-BOXのグリル内部にはクーラーコンデンサー(エアコンの空気を冷やす装置)があり、そのすぐ後ろにラジエターが配置されている。それらに走行中、風を導くためにナンバーをずらしているのだ。なお、助手席側には前述の補記類のほかトランスミッションを配置し、運転席側にはエンジンが置かれることが多い。
N-BOXのグリル内部にはクーラーコンデンサー(エアコンの空気を冷やす装置)があり、そのすぐ後ろにラジエターが配置されている。それらに走行中、風を導くためにナンバーをずらしているのだ。なお、助手席側には前述の補記類のほかトランスミッションを配置し、運転席側にはエンジンが置かれることが多い。

 次に各メーカーの純正装着でナンバーがオフセットされている主なモデルを挙げてみた。※兄弟車や商用車は除く

■日産/デイズルークス
 現行の日産車でナンバープレートをオフセットするのはデイズルークスのみだが2020年に発売される次期デイズルークスは中央になる見込み。
■ホンダ/N-BOX/N-BOX SLASH/N-WGN
 ホンダはN-BOXシリーズが対象。ちなみにN-ONEはナンバーの位置がセンターだが、過去の名車『N360』をデザインモチーフとしているだけに、ナンバーの位置もセンターへ配置している。
■三菱/ekスペース/ekスペースカスタム
■ダイハツ/アトレーワゴン/ウェイク/キャスト/コペン/タント/ミラ イース/ミラ トコット/ムーヴ/ムーヴ キャンバス/ムーヴ カスタム
 ダイハツに関してはすべての軽自動車が対象となっている。これについてダイハツは「初代のミライースからだと思いますが、弊社の車種はフロントのナンバーの位置がオフセットしている車種は多い」(広報部)とコメント。
■スズキ/アルト/アルトワークス/エブリイワゴン/スペーシア/スペーシアカスタム/スペーシアギア/ハスラー/ラパン/ワゴンR/ワゴンRスティングレー

 さて、上記で挙げたモデルに共通しているのは軽自動車ということ。オフセットしている理由について各メーカーに問い合わせたところ異口同音に、

 「エンジンスペースに限りがあり、エンジンの冷却水を冷やすラジエターの位置をフロントグリル中央付近に配置している。そこへ走行風を導入するため、ナンバーをオフセットさせている」という。

過去の軽自動車はどうだったのか?

1993年に発売された初代ワゴンRのナンバープレートは向かって左側にオフセットされている
1993年に発売された初代ワゴンRのナンバープレートは向かって左側にオフセットされている

 ところで、それまで各メーカーで過去に発売されていた軽自動車はどうだったのだろうか? 10年前はともかく、20年以上前はセンターにナンバーを配置していたのがほとんどだろう。

 それにも関わらず、今ではナンバーがオフセットされたモデルが半数以上になっている。過去モデルとは一体、何が異なっているのか? 答えはひとつ、居住空間の拡大だ。

 ご存じのように軽自動車はボディサイズが限られている。居住性を向上させるために室内のタイヤハウスやラゲッジルームなどあらゆるスペースがギリギリにまで突き詰められている。

 ちなみにそうした流れは現行の軽自動車の主流でもあるハイト系の元祖、スズキワゴンRから。ワゴンRはフロントガラスが前寄りで、エンジンルームに被さるようなレイアウトになっている。

 よって、必然的にボンネットの前後長は短く、エンジンルームも省スペースになっている。

写真はN-BOXターボモデルのエンジンルーム。エンジン右側のダクトはインタークーラーへの導風に設けられているのだが、他にバッテリーやエアクリーナーのダクトなどもあり、補記類でぎっしりの状態
写真はN-BOXターボモデルのエンジンルーム。エンジン右側のダクトはインタークーラーへの導風に設けられているのだが、他にバッテリーやエアクリーナーのダクトなどもあり、補記類でぎっしりの状態

 直近ではN-BOXが「ミニマムエンジンルーム」という発想でエンジンルームをさらにコンパクトに凝縮させている。その結果、セダンはもちろんミニバンさえも越える居住空間を実現させているのだ。

骨格写真はN-WGNのものだが、居住スペースに比べてエンジンルームが詰められているのが分かる
骨格写真はN-WGNのものだが、居住スペースに比べてエンジンルームが詰められているのが分かる

 しかし、実はその一方でエンジン自体は小さくなっている。30年近く営んでいる民間整備工場のオーナー整備士に聞いたところ、

 「車体の大きさや容量から見ても、軽自動車のエンジンは相対的に小さくなっています。過去の車両に比べ、排気量が大きくなっても(注:1990年に550cc→660ccと排気量がUPした)現在の方がエンジン自体、小型化されています。また排気ガス規制に関しても電子制御化が進み、配管なども少なくなっています。それに伴って、エンジンルームは小さくなっていますね」というのだ。

 そういうワケで、エンジンにとってはかなり極限の状態。ナンバーのオフセットはラジエターへの導風を確保しようという表われなのだ。

 ちなみに先述の整備士に軽自動車のラジエターの性能についても聞くと、

 「面積は普通乗用車のほぼ半分です。軽自動車に限らず、過去にはほとんどのクルマのラジエターは黄銅製でしたが、現在はアルミ製です。熱伝導率がアルミの方が黄銅の2倍近くいいので、小型化しても放熱性が高くなっています。

 30年位前のクルマでは停車中にエアコン(クーラー)を使うとオーバーヒートしやすかったんですが、当時はFR車が多かったので冷却ファンはエンジンの回転力を使い、さらに黄銅製のラジエターを使っていたためだと思います。

 今のクルマは冷却ファンが電動化されているので、停車中でもしっかりと冷却されるようになっていますよ」とのこと。

 ということで、ナンバーをオフセットしなければならないほどシビアな問題ではなく、電動冷却ファンの装備やラジエターの素材の進化によって、渋滞中にエアコンを使うという高負荷な状態でもエンジンはちゃんと冷却されるようになっているのだ。

 なお、ナンバープレートは機能的なレイアウトとなっているが、実用上センターにレイアウトしても問題なく、実際にセンターにナンバープレートがある車種もある。

 まとめるとナンバープレートの位置がオフセットされているのは、クルマの居住空間を上げるためにエンジンルームを省スペース化。

 その結果、エンジンの空間が小さくなったため、ラジエターやエアコンコンデンサーも含め、補記類に効率よく走行風を導入=冷却させるためにナンバープレートをオフセットして配置しているのだ。

【画像ギャラリー】ナンバープレートが真ん中にない主なクルマ一覧

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