WLTCモード燃費はJC08モード燃費の約8割?
それでは、先のトップ10に入ったモデルからWLTCとJC08のモード燃費値を両方表記しているモデルの数値を比較して、あくまで参考値ながら現状でJC08モード燃費値のみが明らかにされているモデルのWLTCモード燃費値を類推するとどうなるのか計算してみた。すると、JC08の約8割がWLTCの数値になることがわかった。
たとえば、トヨタの両雄である、プリウスの“燃費スペシャル”といえるEグレード(1.8L、直4+モーター、JC08モード燃費39.0km/L)やアクアのLグレード(1.5L直4+モーター、JC08モード燃費38.0km/L)は、今回計算して出した仮定値とはいえWLTC燃費モードでそれぞれ31km/Lと30km/Lと30km/L台に届くことになる。
あくまで目安だが、WLTC燃費に表記値が変わってもどちらもカタログ燃費のトップを争うことになるだろう。
現状でJC08モードのみが明らかにされている、燃費で上位にランクインするモデルも見ておくと、現行フィットハイブリッド(標準グレードのDCT、直3、1.5L+1モーター、JC08モード燃費37.2km/L)や日産ノートのe-POWER Sグレード(1.2L、直3+モーター、JC08モード燃費37.2km/L)、スズキアルトのXグレード(直3、658㏄、CVT、JC08モード燃費37.0km/L)はいずれも30km/Lの大台に乗るなど、どうやら燃費競争はかつての30km/L台の達成争いが“再燃”することになるかもしれない。
サヨナラ「燃費スペシャル」!?
燃費モードがJC08からWLTCに変更されていくなかで、表示変更の“猶予”期間が2018年から2022年の約4年に設定されているのは、生産継続モデルのマイナーチェンジなどでの燃費表記値の変更を念頭に置いているからだが、ユーザーの立場からすれば、変化を確認する意味でも、JC08とWLTC両モードの“精度”を比較するうえでも、カタログ上での両者の併記を望みたい。
ひとつ加えておけば、WLTCモード燃費の計測では、従来一部車種に設定されていた、慣性質量(車重)の変化による計測時の燃費向上を狙って、軽量化を施した“燃費スペシャル”を設定しづらくなっている。
それでも、依然として一部モデルでは、ベーシックグレードとして“それらしき”仕様が存在することは残念としか言いようがない。WLTCモード燃費導入の効果として、購入者を惑わすような仕様設定が無駄な努力として消え去ることを願いたい。
※参考:燃費スペシャルとは?
クルマの燃費はシャシーダイナモメータで測るが、この時には車両重量による慣性を再現するためフライホイールを使う。フライホイールは、車両重量に応じて重さの異なる数種類が用意され、この重量を等価慣性重量と呼ぶ。
等価慣性重量が軽いと燃費数値も好転するため、例えばホンダフィットの場合、JC08モード燃費が37.2km/Lに達するベーシックなハイブリッドは、燃料タンク容量がほかのグレードよりも8L少ない32Lになる。しかもボンネットはアルミ製。これにより車両重量を1080kgに抑え、等価慣性重量を1130kgとした。車両重量が1081kgになると、等価慣性重量は一気に1250kgまで増えるから、燃費数値が見かけ上は大幅に悪化してしまう。
トヨタプリウスは、大半のグレードが燃料タンク容量を43Lとするが、Eだけは38Lだ。装備も簡素化して、車両重量を先に述べた1080kgの2つ上の設定区分になる1310kgに抑えた。これによりJC08モード燃費は40.8km/Lとなった。
ちなみに等価慣性重量の上限になる車両重量は、740kg/855kg/970kg/1080kg/1195kg/1310kg/1420kg/1530kg……、という具合に続く。車両重量が上記の数値になる場合、等価慣性重量に着目した「燃費スペシャル」の可能性が高い。
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