どんなもんだい日本の軽自動車! もはやガラパゴスではない!! 欧州でも軽自動車導入の動きあり!! 世界基準になる日はもうそこまで来ている?

どんなもんだい日本の軽自動車! もはやガラパゴスではない!! 欧州でも軽自動車導入の動きあり!! 世界基準になる日はもうそこまで来ている?

 2025年6月13日、ステランティスのジョン・エルカン会長が、欧州市場に日本の軽自動車規格の導入を呼びかけました。すでに欧州ではマイクロEVの人気が高まりつつあり、日本の軽がグローバルで再評価される兆しです。日本独自のクルマ文化が世界に羽ばたく時が来たのか? その可能性を探ります。

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部

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欧州にも“軽”の波?  ステランティス会長が語った未来

今や日本の新車販売の4割を占める軽自動車。2024年度の新車販売台数第1位を獲得し、軽四輪車の新車販売台数では、10年連続で首位となる「V10」の偉業を達成したN-BOX。日本の軽が世界で販売される時代が来るのか?
今や日本の新車販売の4割を占める軽自動車。2024年度の新車販売台数第1位を獲得し、軽四輪車の新車販売台数では、10年連続で首位となる「V10」の偉業を達成したN-BOX。日本の軽が世界で販売される時代が来るのか?

 「欧州にも日本の軽自動車のようなクルマが必要だ」。そんな衝撃的な提言をしたのは、ステランティスのジョン・エルカン会長。ステランティスは、フィアット、プジョー、シトロエン、オペルなど14ブランドを傘下に持つ欧州最大級の自動車グループです。

ステランティスのジョン・エルカン会長
ステランティスのジョン・エルカン会長

 2025年6月13日、エルカン会長はロイター通信とのインタビューで、「欧州では安全基準や法規制が厳しすぎて、価格を抑えたエントリーモデルが作れない」と語り、「日本の軽自動車のような小型・低価格のモビリティを法的に認めるべきだ」と主張しました。

 背景には、電動化による新車価格の高騰と、若者を中心とした“クルマ離れ”があります。彼は「クルマを持つ自由」をすべての人に届けたいとし、日本の軽規格がその一助になると訴えています。

欧州で注目され始めた“超小型EV”

2023年に発売されたフィアット・トッポリーノ。最高速は45km/hで、バッテリー容量は5.4kWh、一充電での航続距離は最大75km。イタリアでは14歳から原付二輪免許で乗ることができる
2023年に発売されたフィアット・トッポリーノ。最高速は45km/hで、バッテリー容量は5.4kWh、一充電での航続距離は最大75km。イタリアでは14歳から原付二輪免許で乗ることができる

 実際、欧州ではすでに軽自動車に近いクラスのBEVが登場しています。

・シトロエン・アミ:全長2.41m、最高速45km/hで16歳から運転可能。都市型モビリティとして大人気
・フィアット・トッポリーノ:アミの兄弟車で、愛らしいデザインが話題
・オペル・ロックスe:アミをベースにしたドイツ向けモデル

フランスの超小型車EV市場でシェア1位を誇るシトロエン・アミ
フランスの超小型車EV市場でシェア1位を誇るシトロエン・アミ

 これらはいずれもBEVで、価格は1万ユーロ(約170万円)前後とリーズナブル。日本の軽自動車と比べても遜色ないスペックです。たとえば、シトロエン・アミは全長2410×全幅1390×全高1520mmという超コンパクトサイズで、16歳からの運転も可能。さらに、兄弟車であるフィアット・トッポリーノは全長2530×全幅1400×全高1530mmと、若干大きくデザイン志向のモデルとなっています。

今後日本でもマイクロミニBEVが流行するのだろうか?
今後日本でもマイクロミニBEVが流行するのだろうか?
ドイツでは15歳から運転可能で、価格は7990ユーロ(約132万円)から
ドイツでは15歳から運転可能で、価格は7990ユーロ(約132万円)から

 さらに、韓国のヒョンデ(HYUNDAI)は日本市場向けにインスターを導入し話題になりました。このインスターは韓国の軽自動車規格に準じたキャスパーの全長、全高、ホイールベースを延長したもので、全長3830×全幅1610×全高1615mm、ホイールベース2580mmと、インスターは厳密には日本の軽自動車規格ではない。

 キャスパーは韓国の軽自動車規格の一般カテゴリーのクルマで、全長3.6m以下、幅1.6m以下、高さ2m以下、エンジンは1000cc(または80kW)未満まで搭載できます。キャスパーのスペックは全長3595×全幅1595×全高1575mm、排気量998ccとなっています。

全長3830×全幅1610×全高1615mmと、特に全幅は日本の5ナンバー車で一般的な1695mmよりも極端に狭いのが特徴
全長3830×全幅1610×全高1615mmと、特に全幅は日本の5ナンバー車で一般的な1695mmよりも極端に狭いのが特徴

 インスターは42kWhと49kWhの容量を持つバッテリーが搭載され、一充電あたりの走行距離は、49kWhは370km(欧州のWLTP)。価格は284万9000~357万5000円でCEV補助金は56万2000円となっています。いずれにしても日本の軽自動車サイズの輸入車が日本導入されたことは大きな脅威です。

日本の軽は欧州に通用する? 安全基準の壁とその可能性

インド市場で販売されているワゴンR。ボディサイズは全長3655×全幅1620×全高1675mmでエンジン排気量は1Lと1.2L。日本の軽自動車規格は全長3.4m×全幅1.48m×全高2.0m以下で、エンジン排気量が660cc以下の車両
インド市場で販売されているワゴンR。ボディサイズは全長3655×全幅1620×全高1675mmでエンジン排気量は1Lと1.2L。日本の軽自動車規格は全長3.4m×全幅1.48m×全高2.0m以下で、エンジン排気量が660cc以下の車両

 ステランティス会長が呼びかけた「日本式軽自動車の欧州導入」には、多くの期待が集まる一方で、現実にはいくつかの越えるべきハードルが存在します。その最大の壁が「安全基準」です。

 欧州では、前面・側面・後方衝突試験はもちろんのこと、歩行者保護性能や電子安全装備の義務化(自動ブレーキ、レーンキープ等)といった高度な条件が課されています。そのため、日本の軽自動車がそのまま欧州市場に投入されるのは現実的ではありません。

 たとえば軽自動車は、全長3.4m/全幅1.48mという規格内に収める必要があるため、クラッシャブルゾーン(衝突時のエネルギー吸収エリア)が小さく、欧州基準の衝突安全性に対しては構造的な工夫が求められます。

 また、2人乗りの欧州マイクロEVと違って、日本の軽は4人乗りを前提としており、キャビンの強度や乗員保護性能もさらなる強化が必要になるケースが多いのです。

 さらに、2022年以降のEUでは、新車販売に対して先進運転支援システム(ADAS)の標準装備が義務化されており、自動ブレーキ(AEB)やレーンキーピングアシスト(LKA)、ドライバー異常検知といった装備の搭載が必須です。これは現在の軽でも上位グレードに装備されているケースがありますが、欧州仕様に合わせた制御調整や認証取得が必要となります。

 それでも、軽自動車の小型・軽量・コストパフォーマンスの高さは、欧州の都市部におけるモビリティ課題(渋滞、駐車スペース、エネルギーコスト)と非常に相性が良く、適切な法規対応がなされれば十分に通用する可能性があると言えるでしょう。

 事実、過去にはスズキ・アルト(欧州仕様)やダイハツ・クオーレといった“準軽サイズ”モデルが欧州でも一定の人気を博しました。ちなみに日本でもスマートが日本の軽自動車規格に合わせたスマートKを販売したことがあります。

 今後、日産サクラや三菱eKクロスEVなど、最新の軽EVをベースに欧州向けモデルが再設計される動きが加速すれば、「日本発のコンパクトEV」が世界標準の一翼を担う日も遠くないかもしれません。

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