日産 ルネッサはMPVの新たな潮流を生んだクロスオーバー黎明期のチャレンジャー【愛すべき日本の珍車と珍技術】

電動化時代を見据えたEV仕様もラインナップ

 ルネッサにはガソリンモデルに加え、電気自動車(EV)仕様を設定し、1998年5月からリース販売を開始した。ルネッサEVのリース販売は、まだ電動化が一般化していなかった1990年代後半において、極めて挑戦的かつ先見的な試みだったといえる。

 ルネッサEVでは、ルネッサ特有の高剛性ボディと完全フラットなフロア構造を活かし、12個のバッテリーユニットをフロア下に配置。これにより低重心化を実現しつつ、5人乗りの広い室内空間を損なうことなく確保している。

 EVならではのメリットとしては、まず極めて静かで振動の少ない快適な室内環境が挙げられる。長距離ドライブでも疲れにくく、会話や音楽もクリアに楽しめる上質な移動空間が広がる。

 インテリアには、視認性に優れるデジタルメーターや、当時としては革新的なインダクティブ充電システム(非接触型)を採用。取り扱いのしやすさ、日常使用での実用性の高さにも配慮されている点は見逃せない。

 走行性能についても、モーター直結によるリニアな駆動フィールが特長で、アクセル操作に対してダイレクトに反応する高レスポンスかつ力強い加速性能を実現。都市部でのストップ&ゴーから郊外でのスムーズなクルージングまで、幅広いシーンに対応する走りを提供した。

 ルネッサEVは実験的モデルではなく、日常で使える電気自動車として成立させたモデルだった。日産の電動化戦略の礎となったこのモデルは、現在の日産EVラインナップへと続く、確かな布石だったといえる。

月額約27万円の3年リースのルネッサEVは、1998年に登場。後にルネッサEVをベースにした燃料電池車「ルネッサFCV」も開発されている
月額約27万円の3年リースのルネッサEVは、1998年に登場。後にルネッサEVをベースにした燃料電池車「ルネッサFCV」も開発されている

 ルネッサは183万5000円~というリーズナブルな価格設定や、回転対座シートの採用をはじめとした、ユーザー目線に立った多くの魅力を備えた意欲作だった。機能的なパッケージング、質の高い内外装デザイン、多彩なユーティリティ、さらにはEV仕様の設定まで、当時の国産車としては異例ともいえるほど、高い思想と独自性を持って開発された。

 売れ筋になり得る要素を多分に持ち合わせていたものの、それが災いして「中途半端」と見なされてしまい、販売成績は振るわなかった。さらに、当時のファミリーカー市場ではすでに3列シートミニバンが主流となっており、ルネッサの2列シート構成は、ファミリーユースを中心としたユーザー層に対して決定打に欠ける仕様だったといえる。

 それでも独創的な設計思想と多用途性を追求したパッケージングが、マルチユースやエコロジーが本格的なキーワードとなる時代まで健在だったとしたら、一定の成功を収めていた可能性は十分にある。

 だが、その先進性ゆえに実際には市場に受け入れられることなく商業的には埋もれてしまう。それでも、ルネッサが表現した独自の個性と志の高さは、今なお記憶に残る1台であることは間違いない。そして、その車名はクロスオーバー車の進化の系譜に刻まれている。

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