【もう味わえなくなるかも!?】珠玉の現役国産エンジン 5選

 パワーユニットの開発には莫大な開発費と労力、そして量産までに長い時間がかかる。だから多くの自動車メーカーは、長い期間にわたってエンジンを作り続けているのだ。20世紀は何十年も作り続けているエンジンが少なくなかった。が、地球環境にやさしいエンジンを求められる21世紀は違う。高性能が求められるのは20世紀と同じだが、扱いやすさの比重が大きくなった。

 最近は環境問題を抜きにしてエンジンを開発することはできない。燃費規制は年を追うごとに厳しくなっているし、地球温暖化の元凶とされるCO2の排出量に関してもシビアだ。燃費が悪く、CO2の排出が多いとメーカーにペナルティが課せられる時代なのである。だが、厳しい条件を突きつけられたことにより、自動車史に残る名機が生まれることもあるのだ。そこで軽自動車のエンジンを除く、珠玉のパワーユニットを独断と偏見で選んでみた。

 日産「GT-R」に積まれている『VR38DETT型V型6気筒』や、すでに生産終了となったがスバル「WRX STI」に積まれている『EJ20型ターボ』は魅力的なスポーツエンジンだ。が、これらはマニアックなので、誰もが運転を楽しめ、排ガス規制にも臆しないエンジンのなかから選ぶことにする。

文/片岡英明
写真/LEXUS、NISSAN、SUBARU、MAZDA、SUZUKI、編集部

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「今や数少ない官能的なエンジンを堪能」
トヨタ 2UR-GSE型 V型8気筒

 昭和の時代に免許を取った人にとって「マルチシリンダー」の8文字は悪魔の響きだ。精緻なV型8気筒エンジンやV型12気筒エンジンは芸術品と映った。20世紀には多くのエンジンが存在したが、ダウンサイジングの波に飲まれ、激減している。その魅力を今に伝える数少ない国産エンジン、それがトヨタの『2UR-GSE型 V型8気筒DOHC』だ。レクサス「LC」や「GS F」などに積まれている5LのV型8気筒DOHCで、パフォーマンスにおいてもドライバビリティにおいても世界トップレベルの実力派である。

【2UR-GSE型】V型8気筒、4968cc。シリンダー内径94.0mm×行程89.5mm、圧縮比 12.3

 パワーフィールは、驚くほど滑らかだ。それでいて応答レスポンスは鋭いし、実用域のトルクもたっぷりとある。ATでも7000回転まで気持ちよく回り、4000回転から上ではエンジン音も官能的だ。レクサスLCは電子制御10速ATを組み合わせていることもあり、パドルシフトを駆使しての変速が楽しい。

LC500では最高出力477ps、最大トルク55.1kgmを発揮。ライバルがダウンサイジング化していくなかで、5LV8エンジンを選んだ現在では貴重なモデルだ

「ターボということを忘れさせるレスポンス」
日産 VR30DDTT型 V型6気筒

 6気筒エンジンでは日産の『VR30DDTT型 V型6気筒DOHCターボ』に惹かれる。ボアとストローク、バンク角などはVQ30DE型エンジンと同じだが、電動の可変動弁システムやミラーボアコーティングブロックやエキゾーストマニホールド一体シリンダーヘッド、ツインターボなど、すべてが新設計だ。

【VR30DDTT型】V型6気筒、2997cc。シリンダー内径86.0mm×行程86.0mm、圧縮比 10.3

 ボア、ストロークともに86mmのスクエア設計だが、304ps/400N・m(40.8kgm)仕様でもパンチがあり、高回転まで気持ちよく回る。その気になれば7000回転まで軽やかに回り、レスポンスもシャープだ。4Lクラスの分厚いトルクも低回転から味わえる。ツインターボを採用しているから応答性がよく、タイムラグは小さく抑えていた。

 400Rはターボの過給圧を高め、405ps/475N・m(48.4kgm)を発生する。こちらも高回転を苦にしない。アクセルを踏み込むとタコメーターの針は一気に上昇し、豪快な加速を見せつける。応答レスポンスは鋭く、ビートの効いたエンジン音も魅力的だ。回すほどに音色が変わり、甲高いサウンドを奏でる。

400Rでは、5000rpmに達するあたりから強烈な加速感を発揮し、トップエンドまで吹け上がる

 パドルシフトを使っての走りが楽しいエンジンだ。が、驚くほどフレキシブルで、低回転から厚みのあるトルクを発生する実力の高さも持ち合わせている。クルージング時は静かだ。4気筒エンジンには真似のできないスムースさも魅力と感じる。

「最新が最良、熟成で切れ味アップ」
スバル FA20型水平対向4気筒

 デビューしたときは今一歩の魅力だね、と言われたスバルの『FA20型水平対向4気筒DOHCエンジン』も、改良に次ぐ改良によってポテンシャルを高めた。このエンジンもスクエア設計だが、最新のFA20型エンジンはレッドゾーンが7500回転まで引き上げられている。トヨタ「86」とスバル「BRZ」のFA20型は自然吸気ならではのダイレクトなパワーフィールだ。切れ味鋭い加速を楽しめる。

【FA20型】水平対向4気筒、1998cc。シリンダー内径86.0mm×行程86.0mm、圧縮比 12.5(NA)、10.6(ターボ)。初期型は3000~4000rpmにトルクの谷間があると言われていた

 ターボ装着の「WRX S4」も気持ちいい回転フィールだ。こちらは湧き出すような豊かなトルク感を味わえる。CVTだから、ちょっと物足りなさを感じるが、パドルを使っての走りはそれなりに楽しい。エンジンサウンドは今一歩の印象で、今後の熟成に期待だ。燃費は今一歩だが、操る楽しさがあり、ドライバーの期待に応えてくれるエンジンだ。

「ディーゼルのイメージを壊した異端児」
マツダ SH-VPTR型 直列4気筒ディーゼル

 異色のパワーユニットとしてはマツダの『SH-VPTR型直列4気筒ディーゼル』が挙げられる。これは『スカイアクティブD 2.2』と呼ばれているディーゼルで、2ステージのツインスクロールターボを組み合わせた。最高出力は175psだが、最大トルクは4Lのガソリンエンジンを超える420N・m(42.8kgm)だ。しかも2000回転で、4Lクラスの力強いトルクを発生するのだから速い。最新のSH-VPTR型エンジンは圧縮比を14.4に高め、急速多段燃焼も採用し、さらにフィーリングをよくするとともに煤の発生を抑えている。

【SH-VPTR型】直列4気筒、2188cc。シリンダー内径86.0mm×行程94.2mm、圧縮比 14.0。アテンザ(GJ系)、アクセラ(BM系)に搭載されていた
搭載されていた先代アクセラ。このエンジンの評価は、自動車ファンからも非常に高い。現行型ではマツダ6(旧アテンザ)が搭載

 アクセルを踏み込むと軽やかに4500回転まで回り、1000回転台から厚みのあるトルクが湧き出す。レスポンスが鋭く、パンチのある加速は大きな魅力だ。街中をゆっくり走ったときに扱いやすいのも美点に挙げられる。6速ATに加え、待望の6速MT車も加わった。よりローギアードな設定だから、レスポンスはいいし、加速も冴えている。遮音対策を徹底していることもあり、クルージング時は静粛性も高い。

「フラットトルクで軽やかに回る」
スズキ K12C型直列4気筒

 スズキの『K12C型 直列4気筒DOHCエンジン』も秀作だ。フレキシブルに排気量を変えられるモジュールコンセプトのエンジンで、4気筒はスイフトやイグニス、ソリオなどに積んでいる。1気筒あたり2本の燃料噴射装置を備えた「デュアルジェットエンジン」が有名になったが、熱効率は世界トップレベルだ。自然吸気エンジンのほか、マイルドハイブリッドやハイブリッドも設定し、排気量違いの1.4Lターボや1L3気筒ターボもある。

【K12C型】直列4気筒、2188cc。シリンダー内径73.0mm×行程74.2mm、圧縮比 12.5

 コスト重視のベーシックエンジンだが、低回転からフラットなトルクを発生し、街中から高速道路までストレスのない走りを見せる良質なエンジンだ。高回転のパンチは今一歩にとどまるが、これは致し方ないところ。その分、実用燃費はいい。モーターとバッテリーを追加したハイブリッド車もいい仕上がりだ。発進時にはトルクが上乗せされ、軽やかに加速する。アイドリングストップも洗練度が高いなど、もっと評価されてもいいエンジンだ。

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