後席乗員もクルマと一体になって走りの時間を共有
インテリアはGT-Rのスポーツマインドを受け継ぎながらも、4ドアセダンとしての快適性と上質さを兼ね備えた空間として設計されている。その仕立ては単なるGT-Rの延長ではなく、エクステリア同様「大人のためのGT-R」を意識した新たな世界観を提案している。
運転席まわりの基本デザインは2ドアGT-Rに準じ、装飾的な要素を排除し、計器・操作系統・視界の三要素を最適配置した機能美の塊と呼ぶにふさわしい構成となっている。また、センターコンソールのカーボン調パネルや金属調スイッチ類が精密機械のような雰囲気を醸し、操る喜びを造形で表現したGT-Rらしい思想が感じられる。

最大の特徴は後席に専用設計のバケットシートを採用している点だ。一般的なセダンに多いベンチタイプではなく、左右独立形状の深いシートクッションとサイドサポートによって、コーナリング時でも乗員の身体をしっかり支える。
乗車定員を5名ではなく4名としたのも、実用性より走りの本質を貫くGT-Rらしい特徴といえる。さらにこのリアシートはホールド性の追求だけでなく、座面角度や背もたれの傾斜を慎重に設定し、長距離走行でも疲れにくい快適性を確保している。
シート地には専用ファブリック素材を採用し、前席と調和したスポーティで落ち着きのある質感を演出。ドアトリムとの一体感あるデザインにより、後席全体が包み込まれるような安心感をもたらしている。
4ドア化に伴い、キャビン後方の構造も見直され、ボディ剛性を維持しながら足もと空間を十分に確保。遮音材の配置も工夫され、エンジン音やロードノイズが必要以上に侵入しないよう配慮されている。
ただしGT-Rは国産屈指のスポーツカーであるため、エンジンサウンドやターボの過給音がわずかに届くようチューニングされており、高性能車としての緊張感と快適性を適度に両立させている。
GT-Rという存在を改めて問い直して新たな解釈を提示
装備面でも抜かりはない。当時として先進的だったKENWOODサウンドクルージングシステムを採用し、高音質なサウンド体験と長距離ドライブの快適性を向上。リモートコントロールエントリーシステム、車速感応式オート集中ドアロック、UVカット断熱グリーンガラス、寒冷地仕様などを標準装備し、機能性・安全性ともに高い完成度を誇る。
こうした精密さと上質さを併せ持つインテリアと装備群は、GT-Rの性能をより多くのシーンで、同乗者とともに味わうためのものであり、単なるスポーツモデルを超えたプレミアムスポーツセダンとしての完成度を支えている。
パワートレインはGT-Rと同様のRB26DETT型エンジンを搭載し、アテーサE-TSによる四輪駆動システムを採用。専用チューニングのサスペンションやボディ補強によって、セダンでありながらGT-Rに匹敵する高い操縦安定性を実現している。

4ドアボディを持つGT-Rの登場は、1969(昭和44)年の初代「2000GT-R(PGC10型)」以来、約28年ぶりのことだった。その系譜を受け継ぐことになったGT-R オーテックバージョンは、往年のファンにとって待望の復活であり、登場当初から高い評価と注目を集めた。
当時の車両販売価格は498万5000円。生産台数は約400台に限られ、希少性を持ちながらも、4ドアでありながらGT-Rの走りをそのまま体感できる完成度の高さから多くの愛好家を魅了した。
しかし、このモデルが真に評価される理由は限定性にとどまらない。4ドアでありながらGT-Rの走行性能を余すことなく受け継ぎ、快適性と高性能を高次元で両立した完成度こそが本質である。
記念車でも派生モデルでもなく、GT-Rという存在そのものを改めて問い直し、高性能を知る大人のためのGT-Rという新たな解釈を提示した点にこそ、このモデルの真価がある。GT-R オーテックバージョンはGT-R史の中で異彩を放ちながらも確かな誇りを宿した、まさに究極の特別仕様車である。
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